肉芽腫性胃炎と鑑別
肉芽腫性胃炎の頻度と原因の全体像
肉芽腫性病変を胃の生検や切除標本で認める頻度は非常に低く、報告では0.27~0.35%程度とされています。
この「まれさ」が、遭遇時に鑑別の手順が崩れやすい最大の理由で、肉芽腫を見た瞬間に単一疾患へ短絡しない姿勢が重要です。
上部消化管で肉芽腫が見つかる原因は大別して、結核・梅毒・真菌などの感染、Crohn病やサルコイドーシス、血管炎などの全身性疾患、腫瘍に伴うサルコイド反応、異物反応、そして特発性に整理できます。
臨床では「肉芽腫性胃炎」とラベルを貼る前に、この分類をチェックリストとして使い、どこまで除外できたかを記録に残すと、後医にも伝わりやすくなります。
肉芽腫性胃炎の内視鏡所見と生検の考え方
胃サルコイドーシス(=肉芽腫性病変の代表的鑑別の一つ)に限っても、内視鏡所見は多発潰瘍・びらん、スキルス様の粘膜肥厚・硬化、結節性隆起性病変など多彩で、非特異的とされています。
所見の違いは肉芽腫の存在する深さにより生じ得る、という整理は、同じ患者でも「見え方」が変わることの説明に役立ちます。
また、肉芽腫性病変は経時的に形態変化を示すことがあるため、単回の内視鏡像で安心せず、病変の活動性(潰瘍形成、狭窄兆候、出血)と、周囲粘膜の腫瘍性変化のサインを分けて観察する必要があります。
生検は「1回・1か所」で終わらせない前提が現実的で、肉芽腫が疑われる領域は複数箇所から採取し、必要に応じて追加検査(染色、培養、PCRなど)へつなげる設計が安全です。
肉芽腫性胃炎の病理と鑑別:乾酪壊死と境界
病理学的には非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めることがありますが、結核やCrohn病、梅毒なども鑑別に挙がるため、所見を「型」で読み分ける意識が求められます。
サルコイドーシスの鑑別点として、乾酪壊死の有無に加え、類上皮細胞とLanghans細胞からなる結節が比較的大きさがそろい、癒合せず孤立しやすいことが挙げられています。
一方でCrohn病では境界不明瞭な小型の肉芽腫が特徴的とされ、梅毒では炎症細胞浸潤や血管炎を伴う散在性壊死が鑑別点になり得ます。
ここで重要なのは、病理所見だけで確定させないことです。感染症が原因なら起因菌の同定が確定診断に直結するため、Ziehl-Neelsen染色やGrocott染色などの追加評価、臨床検査(IGRA、梅毒血清反応など)と整合させて詰めていきます。
肉芽腫性胃炎とサルコイドーシス:PAB抗体の示唆
サルコイドーシスは他の全身性疾患や感染症などの肉芽腫性疾患を除外することが必須、と整理されています。
胃に限局したサルコイドーシス(胃限局性サルコイドーシス)は疾患概念が確立していない面があり、特発性肉芽腫性胃炎とともに「除外診断」で扱われ得るという曖昧さが臨床上の悩みどころです。
この領域で臨床的に面白い(=見落としが減る)ポイントとして、Propionibacterium acnes(P. acnes)がサルコイドーシスの病因の一つとして認識され、PAB抗体を用いた免疫染色で多くのサルコイドーシス症例の肉芽腫内にP. acnesが検出される、という報告があります。
さらに、サルコイド反応(腫瘍に伴う反応性肉芽腫)ではPAB抗体が陰性となることがある、という報告も引用されており、「サルコイドーシス」か「サルコイド反応」かで臨床的意味が変わる場面の補助線になります。
肉芽腫性胃炎の独自視点:フォローで「胃癌の併存」を外す設計
肉芽腫性病変の内視鏡像は多彩で、経時的に形態変化を示すことがあるとされ、まれではあるものの胃癌の併存にも留意すべき、と症例報告ベースで注意喚起されています。
実際に、胃限局性サルコイドーシスの経過観察中に、肉芽腫性病変近傍から早期胃癌が見つかり内視鏡治療(ESD)に至った報告があり、「肉芽腫=良性炎症」で思考停止すると取り返しがつかないことがあります。
現場の運用としては、①初回は“原因除外”を完了させる、②症状が乏しくても一定期間で再検を検討する、③再検時は肉芽腫そのものだけでなく近傍の平坦な発赤や陥凹など腫瘍性変化の芽も拾う、という3点をセットにすると安全です。
特にESDなど治療介入が想定される場合、粘膜下層の線維化で手技難渋が起こり得る点も報告されているため、病変の“背景”として肉芽腫性炎症を意識しておくと、内視鏡治療戦略の立案にも役立ちます。
消化管サルコイドーシスの内視鏡像と鑑別の考え方。
参考)消化管疾患における肉芽腫の病理学的特徴と鑑別診断 (胃と腸 …
肉芽腫性病変が経時変化し、胃癌併存にも注意が必要な症例経過(検査・染色・除外診断の実例)。
J-STAGE「胃限局性サルコイドーシスの経過観察中に早期胃癌を合併した1例」
参考)https://www.jssog.com/wp/wp-content/themes/jssog/images/system/guidance/2-5-6.pdf