幽門痙攣 赤ちゃん 嘔吐 診断 治療

幽門痙攣 赤ちゃん

幽門痙攣 赤ちゃん:臨床で迷う点を先に整理
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まず鑑別

「噴水状嘔吐=幽門狭窄」と決め打ちせず、幽門痙攣・胃食道逆流症・胆汁性嘔吐の外科疾患を同時に考える。

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検査の軸

腹部超音波検査で幽門の形態と通過を確認し、必要なら造影へ。脱水や電解質異常があれば先に輸液で是正。

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危険サイン

胆汁性(緑色)嘔吐、コーヒー残渣様、体重減少、尿量低下、ぐったりは「様子見」をやめて高次対応へ。

幽門痙攣 赤ちゃん 嘔吐:噴水状嘔吐と吐乳の見分け

赤ちゃんの嘔吐は「量が多い」「勢いが強い」だけで重症度を断定しにくく、授乳直後の吐乳(溢乳)から病的嘔吐まで連続しています。特に生後数週の時期は、肥厚性幽門狭窄症の典型的な発症時期(生後3週〜6週頃)と重なり、噴出性(噴水状)嘔吐があると診断が一気に幽門狭窄へ傾きやすい点が落とし穴です。

ここで「幽門痙攣」を臨床的に考える価値が出るのは、症状が強そうに見えても、全身状態が比較的保たれ、嘔吐が波のように増減するケースです。幽門狭窄症では進行すると体重減少や脱水が目立つことがあり、噴水状嘔吐が反復して哺乳後すぐに起こるという“型”がそろってきます。

参考)https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/402359.pdf

一方、家庭・外来での初期対応で重要なのは、吐物が「胆汁性(緑色)」かどうかを必ず確認することです。胆汁性嘔吐は十二指腸乳頭部より遠位の閉塞を強く疑い、外科疾患が多いという原則があるため、「幽門痙攣かも」で済ませない判断が必要になります。

参考)沖縄県立中部病院

幽門痙攣 赤ちゃん 診断:腹部超音波検査と鑑別

幽門周囲の評価は、まず腹部超音波検査が現場で最も現実的な軸になります。肥厚性幽門狭窄症では超音波検査で肥厚した幽門を確認できることが診断確定に有効とされ、触診でしこり(オリーブ様腫瘤)に触れることがある点も、身体所見のヒントです。

ただし、外来で遭遇する“グレー”は、症状は強いのに超音波で「典型的な肥厚」がはっきりしない、あるいは幽門が閉じたり開いたりして通過が観察できる場面です。ここで幽門痙攣が鑑別として浮上し、同じ超音波でも「形態(筋層肥厚)」だけでなく「時間をかけて通過を追う」姿勢が重要になります(短時間で終えると痙攣のタイミングを拾って“閉塞っぽく”見えることがあるため)。

参考)肥厚性幽門狭窄症 (ひこうせいゆうもんきょうさくしょう)とは…

さらに、嘔吐の鑑別として胃食道逆流症も頻度が高く、乳児では溢乳が珍しくない一方で、呼吸器症状(咳・喘鳴・肺炎・無呼吸発作など)や体重増加不良を伴う場合には病的逆流を疑うという整理が役立ちます。

参考)胃食道逆流症 – 一般社団法人日本小児外科学会

なお、1か月健診の文脈でも「嘔吐」から幽門狭窄症などを想起することが推奨されており、健診・外来・救急のどの接点でも、嘔吐の“質(胆汁性か、血性か)”と“経過(増悪か、軽快傾向か)”を押さえることが診断の近道です。

参考)(2)退院後から1か月児健康診査まで – 日本産…

幽門痙攣 赤ちゃん 治療:輸液、経過観察、紹介の線引き

赤ちゃんの嘔吐で最初に崩れやすいのは、原因そのものよりも脱水と循環動態です。肥厚性幽門狭窄症の標準的な流れとしても、入院後に点滴(輸液)で脱水を改善し、その後に幽門筋切開術へ進むことが一般的とされています。

また、幽門狭窄症が進行した場合の病態として、反復嘔吐による胃液喪失から電解質異常(低クロール・低カリウム性代謝性アルカローシス)が典型になり得る、という理解は“検査を出すタイミング”の判断材料になります。

参考)https://mol.medicalonline.jp/newbunken?GoodsID=aq9syoge%2F2019%2F005111%2F018amp;name=1134-1137j

幽門痙攣が疑わしい場合でも、「経過観察でよい」条件はかなり限定的に運用するのが安全です。少なくとも以下のいずれかがあれば、外来で完結させず、超音波再評価・短期フォロー・小児外科/上級施設への相談を組み込みます。

・胆汁性(緑色)の嘔吐(閉塞性疾患を優先)

参考)https://archive.okinawa.med.or.jp/old201402/activities/kaiho/kaiho_data/2007/200706/pdf/068.pdf


コーヒー残渣様など出血を疑う吐物

参考)肥厚性幽門狭窄症


・体重減少、尿量低下、明らかな脱水

参考)肥厚性幽門狭窄症 – 19. 小児科 – MSDマニュアル …

受診目安の啓発としては、「緑色」「コーヒーかす状」など吐物性状が危険サインになり得る点が一般向けにも整理されており、現場では保護者への説明に転用しやすい実務的な知識です。

参考)子どもの嘔吐・繰り返す吐き気への対応|くまがいこどもクリニッ…

幽門痙攣 赤ちゃん 独自視点:検査前処置と鎮痙の“落とし穴”

あまり表に出にくい論点として、消化管検査の場面で用いられる「鎮痙」という言葉が、家族の理解と医療者の意図でズレやすい点があります。たとえば抗コリン性の鎮痙薬(ブチルスコポラミンなど)は、消化管のX線・内視鏡検査の前処置として位置づけられ、成人では用法用量が確立しています。

しかし「幽門痙攣っぽいから鎮痙薬で様子を見る」という発想が先行すると、本来は鑑別すべき器質的閉塞(幽門狭窄や中腸軸捻転など)を遅らせる危険があります。特に胆汁性嘔吐が外科的疾患と関連しやすい原則を思い出すと、鎮痙の議論は“診断がついた後の話”として扱う方が安全です。

実務上のコツは、診療録や紹介状で「幽門痙攣疑い」という言葉を使うときに、同時に「胆汁性なし/あり」「体重変化」「尿量」「超音波で通過を確認できたか」「再診の期限」をセットで残すことです。これにより、次に診る医療者が「痙攣という曖昧語」だけで安心せず、危険なシナリオ(進行する閉塞、脱水、電解質異常)を追いやすくなります。

(肥厚性幽門狭窄症の症状・診断・治療の流れ:超音波検査、輸液、手術、退院目安がまとまっている)

獨協医科大学埼玉医療センター 小児外科:肥厚性幽門狭窄症

(胆汁性嘔吐が示す外科的緊急性:新生児期・乳幼児期の嘔吐の整理があり、紹介判断の根拠に使える)

沖縄県医師会:新生児期・乳幼児期の嘔吐(PDF)

(胃食道逆流症の症状と検査:嘔吐だけでなく呼吸器症状も含めた見方の整理に使える)

日本小児外科学会:胃食道逆流症