内視鏡用局注針でESDとヒアルロン酸

内視鏡用局注針とESD

この記事でわかること
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局注針の選択軸

針長・ゲージ・鋭針/鈍針・送液性を、ESDの局注目的(膨隆形成と維持)から逆算して整理します。

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局注液の使い分け

ヒアルロン酸ナトリウム溶液と生理食塩液の使い分け、添加(エピネフリン、インジゴカルミン)の考え方を解説します。

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意外に効く独自視点

「局注針そのもの」だけでなく、準備・確認・運用(導通確認、突出長調整、押し引きの癖、漏れ対策)が手技の再現性を左右する点を深掘りします。

内視鏡用局注針で局注マネジメントの基本

内視鏡治療、とくにESDにおいて局注は「最初の一手」であり、ここで適切な膨隆(クッション)を作れるかどうかが、その後の粘膜切開・粘膜下層への潜り込み・剝離の進みやすさに直結します。

局注で膨隆形状や膨隆の高さを意図してデザインするには、穿刺した針先が「粘膜下層のどの深さにいるか」「筋層に届いていないか」をイメージし続ける必要があり、これは局注針の選択と操作性に強く依存します。

言い換えると、局注針は“刺せれば何でもよいディスポ”ではなく、手技の再現性を支えるコントロールデバイスとして扱った方が失敗が減ります。

現場でありがちなつまずきは、局注量の不足よりも「狙った層に入っていない」「針穴が粘膜側へ抜けて漏れる」「粘稠性の高い局注液で送液抵抗が上がり、注入圧が上がって操作が雑になる」など、操作条件のズレから起こります。

参考)より安全・確実なESDを実現するための局注マネジメント – …

この“ズレ”は、病変の部位(胃体部大彎側、穹窿部、前庭部など)や臓器(大腸の粘膜の薄さ)によって顕在化しやすさが変わるため、同じ局注針でも「いつも通り」が通用しないのが難点です。

そのため、術者個人の感覚だけに寄せず、チームで共通言語化できる観点(針長、針先形状、ゲージ、送液性、漏れやすさ)を先に揃えておくのが安全です。

参考:ESDにおける局注の重要性、ヒアルロン酸ナトリウム溶液・生理食塩液の使い分け、局注針選択(針長・鋭針/鈍針・ゲージ)

より安全・確実なESDを実現するための局注マネジメント

内視鏡用局注針で針長と針先形状(鋭針・鈍針)

局注針選択の要となるのが針長で、例えば「4mmを使用している」施設の考え方として、穿刺後に意図せず針先が抜けにくいことや、穿刺深さの調整がしやすいことが挙げられています。

ただし重要なのは「何mmが正解」よりも、選んだ針長で針先が今どこにあるかの感覚を術者が把握できているか、という点です。

針長の“長い・短い”は、穿刺の安全域(筋層へ届かない)と、確実な粘膜下層到達(浅すぎて粘膜内に留まらない)の両方に影響するため、病変部位と臓器壁の厚さを前提に決めるのが現実的です。

針先形状は、一般に鋭針の方が刺さりやすい一方で、鋭針は鈍針に比べて針の断面積が大きく、液漏れが多いというデメリットが示されています。

特に大腸のように粘膜が薄い臓器では、針先を手前に戻す操作の途中で針穴が粘膜表面から抜けてしまい、局注液が漏れることが起こり得るとされています。

そのため大腸では、鈍針でも高い穿刺性を備えた局注針が有用という考え方があり、最近はランセット型などの加工で鈍針の穿刺性が高められている、という流れも押さえておくと選定がブレにくくなります。

実務上のコツとしては、針先形状を「刺さり」だけで選ばず、「漏れにくさ」「戻し操作の余裕」「刺した後に膨隆を保持できるか」で評価することです。

局注針の評価を“刺さった瞬間”だけで終わらせると、実際のESDで必要な「膨隆の維持」「視野確保」「フラップ形成のしやすさ」といった後半の難所で差が出ます。

この視点はレビュー記事やカタログのスペック表からは抜けやすいので、手技動画レビュー時に「戻し→追加注入→漏れ」の場面を意識して観察すると、適した針先形状が見えやすくなります。

内視鏡用局注針で25Gと送液性(ヒアルロン酸)

粘稠性の高いヒアルロン酸ナトリウム溶液(HA溶液)をスムーズに局注するには、局注針の送液性が重要であり、近年は針の内腔を広くして送液性を向上させる設計が進んでいるとされています。

ゲージ選択では、細めの25Gを選ぶと穿刺孔からの局注液の漏れを抑えて膨隆を維持でき、同時に送液抵抗が少ないスムーズな局注手技にメリットがある、という臨床的な整理が提示されています。

「細い=抵抗が増えるのでは?」という直感と逆に感じる部分がポイントで、実際には針内腔設計(内腔を広くする工夫)とセットで評価する必要がある、という読み替えが現場では役立ちます。

また、ESDの文脈では「病変周囲の粘膜下層に局注して病巣を挙上させ、その後に切開・剝離を進める」という手技の骨格がガイドライン解説でも述べられており、局注が前提動作として位置づけられています。

参考)JSCCR

この“前提動作”に、送液性が合っていない局注針を当てると、注入圧が上がって微調整(浅く入れる/深く入れる、少量ずつ追加、針先位置の修正)が乱れやすく、結果的に安全域のコントロールが難しくなります。

局注液の粘度、術野の状況、針の内腔設計、シリンジ操作の癖が合わさってトラブルになるため、「HA溶液を使う日」ほど、局注針の送液性と漏れにくさを優先して選ぶのが合理的です。

臨床でのチェック項目としては、次のように“手元の感触”を言語化しておくと、若手の指導や物品選定会議で説明が通りやすくなります。

  • 注入開始時に力が必要すぎないか(送液抵抗の過大が疑われる)。​
  • 針先がわずかに戻っただけで漏れ始めないか(針穴位置と粘膜の薄さ、針先形状のミスマッチ)。​
  • 追加局注で膨隆を“再設計”できる余裕があるか(針長とコントロール性)。​

内視鏡用局注針でヒアルロン酸と生理食塩液

局注液は一律ではなく、食道と大腸ではHA溶液原液に少量のエピネフリンとインジゴカルミンを添加したものを全例で使用している、という運用例が示されています。

一方で胃では、部位や症例によって生理食塩液とHA溶液を使い分ける、とされており、例えば胃体部大彎側や穹窿部、線維化の強い症例では、膨隆を維持する目的で粘稠性の高いHA溶液原液が必要になる場面があると説明されています。

逆に前庭部など隆起が維持されやすい部位では生理食塩液の局注でも切開・剝離が進められ、むしろHA溶液を使うとフラップ側に局注液が残って厚く膨らみ、視野を妨げる可能性があるという指摘が重要です。

この「HA溶液=常に優秀」という思い込みを外すと、局注針の選び方も変わります。

例えば、生理食塩液中心で“抜けていく”局注を狙うなら、過度に漏れを恐れず刺入・追加注入のテンポを取りやすい針長を選びやすくなりますし、HA溶液中心で“維持”を狙うなら、漏れにくさ(穿刺孔を大きくしすぎない、戻し操作で穴が抜けない)と送液性の両立がより重要になります。

この判断は「術前に決め打ち」ではなく、病変の部位・線維化・術野の見え方で切り替えると整合しやすく、局注針の在庫(複数タイプを置く意味)も説明しやすくなります。

実装面では、薬液のレシピ(例:HA溶液にエピネフリン・インジゴカルミンを添加)を施設で標準化している場合、局注針の送液性・漏れやすさ・針長の“合う範囲”も同時に標準化しておくと、術者間のばらつきが減ります。

特に、粘膜下層へ均一に入る感覚を作る段階の術者ほど「局注針と局注液の組み合わせ」から学習する方が上達が速く、手技の安全域を作りやすい点は教育上の盲点になりがちです。

結果として、局注針は単品で評価するより、局注液と臓器特性を含めた“セット”で決めるべき、という結論に落ち着きます。

内視鏡用局注針で突出長と導通確認(独自視点)

検索上位では「針長・ゲージ・局注液」までで話が止まりがちですが、実際のトラブルは“準備と確認”の抜けで起こることが少なくありません。

例えば、添付文書レベルで、使用前にチューブを伸ばした状態で端子を押し込み内針が適切な長さで突出することを確認する、空のシリンジで空気を注入して導通を確認する、といった具体的手順が明記されています。

さらに、内針突出長をネジで調整でき、1回転で1mm変わる、という“操作上の定量情報”まで書かれており、ここを読んでいるかどうかで安全余裕が変わります。

この「1回転=1mm」は、意外に臨床で効く知識です。

参考)https://www.top-tokyo.co.jp/app/uploads/2022/06/4X0750-1.pdf

たとえば、粘膜の薄い部位で“いつもより浅め”にしたいとき、感覚的に「少し短く」ではなく、「1回転短く」のように再現可能な調整に落とし込めます。

この再現性は、術者交代があるチーム医療や、物品を複数スタッフが準備する現場ほど価値が高いはずです。

また、添付文書には「再使用禁止」「再滅菌禁止」「造影剤等の高圧注入を行わない」といった注意も明確です。

高圧注入を避ける注意は、粘稠性の高い局注液を扱う場面で“押し込みすぎ”が起こりやすいことの裏返しでもあり、手技の設計として「押して入れる」より「針先位置を整えてから入れる」発想へ戻す合図になります。

局注針の不具合例として、液漏れ、針先形状の変形、針管の曲がり、突出異常(折り曲げ・引き延ばし等)なども挙げられているため、単に「刺す道具」ではなく「壊れ得る機械部品」として扱い、ゆっくり操作・直線的な挿入抜去・折れ曲がり回避を徹底するのが現実的です。

現場で使える運用チェック(独自視点の提案)は次の通りです。

  • 🧪 セットアップ時に「導通確認」「突出長確認」を声出しで標準化する(確認の省略が最大の事故要因になりやすい)。​
  • 🧷 突出長を“感覚”でなく「何回転」「何mm」と記録し、部位別の推奨を施設内で蓄積する(経験知が共有財産になる)。​
  • 💧 HA溶液の日は送液抵抗が上がる前提で、針先位置の微調整を優先し、無理に押し込まない(高圧注入回避の具体策)。​

参考:局注針の使用前確認、導通確認、突出長調整(1回転=1mm)、高圧注入回避、単回使用の注意

鏡視下用局注針 添付文書(例)