上部消化管内視鏡 検査 前処置 鎮静 偶発症

上部消化管内視鏡 検査

上部消化管内視鏡 検査の要点
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前処置は「観察の質」を左右

絶食・薬剤・消泡/粘液除去の工夫で、盲点になりやすい微小病変の見落としリスクを減らす。

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鎮静は「快適さ」と「安全」を両立

ミダゾラム等で苦痛を下げつつ、呼吸抑制・誤嚥などの偶発症を想定した監視と退出基準を整える。

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偶発症はゼロではない

検査自体の頻度は低いが、出血・穿孔・誤嚥・低酸素など「起きたときに致命的」な事象を前提に説明と準備を行う。

上部消化管内視鏡 検査 前処置 絶食 水

 

上部消化管内視鏡 検査の前処置は、「胃内を空に近づける」ことと「観察しやすい粘膜環境を作る」ことの二本立てです。日本消化器内視鏡学会の一般向け解説では、通常は前日の夕食以降は絶食とし、前日21時以降の食事を控える運用が示されています(施設運用差はあります)。また検査当日は水以外(牛乳・ジュース・お茶等)を控え、水のみは可とされています。検査当日に降圧薬などの内服をどうするかは一律ではなく、事前に主治医へ相談するよう明記されています。

医療従事者向けに押さえておきたいのは、「前処置の遵守」は単にルールの問題ではなく、誤嚥リスクと検査品質の両方に直結する点です。胃内容が残ると観察視野が悪くなるだけでなく、鎮静や咽頭麻酔の影響下では誤嚥の条件がそろいやすくなります。現場では、患者が“水”と思って飲んでいるものが、実は糖分入り飲料や乳製品だった、という齟齬も起きます(「透明ならOK」と誤解される)。そのため問診では「水以外は不可」を具体例つきで再確認し、最終飲食時刻を必ず時刻で記録すると、説明の再現性が上がります。

参考)3.1)上部消化管内視鏡検査(食道・胃・十二指腸内視鏡)と治…

さらに見落とされがちなのが、前処置は検査直前の禁飲食だけで完結しない点です。脂っこい食事・過度の飲酒などは胃排出や粘液量に影響し、当日の泡や粘液の多さとして返ってきます。施設の説明文でも、検査前は過度の飲酒や油分の多い食事を控える案内が見られます。外来での指導が難しい場合でも、「前日夕食は消化のよいもの」「アルコールは控える」を定型文として渡すだけで、当日の前処置薬量や吸引回数が減り、結果として検査時間短縮にもつながります。

参考)内視鏡検査前・検査後のお食事について|横浜市の横浜わたなべ内…

上部消化管内視鏡 検査 ガスコン プロナーゼ 重曹

上部消化管内視鏡 検査では、粘液や泡が多いと微小病変が“白い膜”や“気泡”に隠れてしまうため、消泡・粘液溶解は観察能に直結します。日本消化器内視鏡学会の解説でも、経口内視鏡では検査前にガスコン(消泡剤)やプロナーゼ(胃内粘液溶解除去剤)を内服する流れが具体的に示されています。これは「胃をきれいにしてから観察する」という考え方が、一般向け説明にも組み込まれていることを意味します。

現場の“効き”に関して、意外と知られていないのがプロナーゼの至適条件です。医療者向けの解説では、プロナーゼは至適pHがあり、重曹(炭酸水素ナトリウム)を併用して効果を発揮させる運用が紹介されています。また、ジメチコン(消泡剤)とプロナーゼ・重曹を混合し、検査の約10分前に内服する例が示されています。施設によって濃度や量は異なりますが、「なぜ重曹を入れるのか」をスタッフが理解していると、欠品時の代替や調整の判断がブレにくくなります。

参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_12819

介助の観点では、前処置薬の飲ませ方も質に影響します。例えば「一気飲みがつらい」「むせやすい」患者では、少量ずつでも確実に内服できるよう声かけと体位調整が必要です。嚥下が怪しい患者に無理をさせると、前処置の段階で咳込みが強まり、その後の咽頭麻酔・挿入時の負荷を上げてしまいます。受付後待機中にガスコンを飲ませ、必要に応じてプロナーゼや重曹を混合する運用例もあり、外来動線の設計次第で「前処置の実施率」を上げられます。

参考)上部消化管内視鏡検査② —検査の流れと患者介助のポイント—

参考:前処置(プロナーゼ・ジメチコン・重曹)の配合例と考え方がまとまっている

https://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse545.pdf

上部消化管内視鏡 検査 鎮静 ミダゾラム プロポフォール

上部消化管内視鏡 検査の鎮静は、患者の苦痛軽減だけでなく、体動の抑制による手技安定(結果として偶発症リスクの低下)にも関係します。一方で鎮静は「呼吸抑制・低酸素・誤嚥」などのリスクを上げうるため、薬剤特性と監視体制が不可分です。消化器内視鏡領域の鎮静に関する文献では、ミダゾラムの用量や、無呼吸・呼吸抑制などの副作用が具体的に挙げられています。医療者は“眠らせる”より先に、“呼吸を守る”設計になっているかを点検する必要があります。

プロポフォールについては、消化器内視鏡診療で用いられる代表薬剤として特徴理解が重要であること、また検査後の運転等の制限に関する議論(健常人の低用量単独投与なら制限時間短縮の提案など)が紹介されています。これらは施設の説明文に直結しやすいポイントで、「鎮静後は当日運転不可」という一般的原則の背景に、“覚醒の速度には薬剤差がある”という事実があります。ただし運用を変えるには施設の方針・法的リスク・監査対応も絡むため、個人判断での緩和は避け、院内の同意文書・帰宅基準とセットで整備することが大切です。

参考)消化器内視鏡診療における安心で安全な鎮静・鎮痛法

もう一段、現場目線の落とし穴として「鎮静=完全に無反応」ではない点があります。ミダゾラムは健忘効果が期待される一方、刺激で体動が出ることがあり、追加投与の判断が必要になる場面があります(ただし追加は呼吸抑制のリスクも同時に上がる)。したがって、鎮静を“薬の量”で管理するより、「呼吸状態」「反応」「検査進行」をチームで同じ尺度で見て、段階的に対応する方が事故を減らします。鎮静レベルの共有が不十分だと、検査者は「もう少し深く」、介助者は「呼吸が浅い」と別方向に引っ張り合い、結果として危険側に寄ることがあるため、観察項目(呼吸数・SpO2・反応など)を声に出して共有する運用が有効です。

参考)消化器内視鏡治療における鎮静法について

参考:内視鏡鎮静の考え方・薬剤特性(ミダゾラム等)を整理するのに有用

消化器内視鏡治療における鎮静法について

上部消化管内視鏡 検査 偶発症 出血 穿孔 誤嚥

上部消化管内視鏡 検査は日常的に行われる一方、偶発症はゼロではありません。説明書(同意書)例では、主な偶発症として出血、粘膜裂創、穿孔、誤嚥、呼吸抑制、低酸素血症、心肺停止、ショックなどが列挙され、検査自体での発生頻度0.0069%、死亡率0.00012%といった具体的数値も提示されています。医療者側は「頻度が低い」事実と、「起きた場合の重さ」を同時に扱う必要があります。

安全管理の観点で役立つのは、偶発症を“検査の途中で起きるもの”に限定しないことです。例えば誤嚥リスクは鎮静下だけでなく、咽頭麻酔後の嚥下反射低下、検査後の飲食再開が早い、といった周辺プロセスでも増えます。検査後の食事については、鎮静剤使用や生検の有無で配慮が必要だとする案内が複数施設で見られ、少なくとも直後は控える運用が示されています。したがって、退室時の指導(飲食開始のタイミング、熱い飲食を避ける等)も偶発症対策の一部として標準化する価値があります。

参考)胃カメラ(上部消化管内視鏡)検査前後の食事|しらと内科外科ク…

さらに“意外な現場論点”として、偶発症は医療安全だけでなく医療者の心理的負荷にも影響します。頻度が低い事象ほど、起きた瞬間に手順が曖昧になりやすいからです。偶発症の備えとしては、①SpO2低下時の初動(体位、気道確保、酸素、吸引)、②穿孔・出血疑い時の連絡系統、③鎮静拮抗薬や救急カートの配置確認、を「検査室の見える場所」に掲示し、誰でも同じ順序で動けるようにするのが実務的です。偶発症の種類が広いこと自体は教科書的ですが、現場で効くのは“手順の単純化”であり、これは教育コストを下げつつ再現性を上げます。

参考)https://www.ips2010.jp/accidents.html

参考:検査・治療に伴う偶発症(出血・穿孔など)の概観を把握するのに有用

内視鏡検査・治療中の偶発症(出血・消化管穿孔・急性膵炎)
ポリペクトミーやEMR、ESDなどの腫瘍切除に関連した偶発症は0.583%に発生しています。そのなかでも、ESDは偶発症の発生率が3.131%と極めて高く、臓器別では食道、大腸、胃の順に高率となっています。

上部消化管内視鏡 検査 咽頭麻酔 リドカイン(独自視点)

上部消化管内視鏡 検査の安全性で、検索上位では「鎮静」ほど前面に出にくいのが咽頭麻酔(局所麻酔)のリスク管理です。上部消化管内視鏡では経口・経鼻いずれでも局所麻酔薬を用いるのが一般的で、リドカイン(キシロカイン)ではアレルギー反応や中毒症などの副作用が起こり得ることが指摘されています。つまり、鎮静をしていなくても“麻酔関連の偶発症”は設計上ゼロになりません。

実務で効く工夫は「総量の上限をチームで意識する」ことです。安全管理資料ではリドカインの過剰使用による中毒を防ぐため200mg以内に留める必要がある旨が示されており、別資料でも1スプレーの含有量から25回(200mg)を超えないよう注意する記載があります。忙しい場面ほど追加噴霧が“なんとなく”増えやすいため、スプレー回数を声出しでカウントする、記録欄を作る、鼻腔麻酔と咽頭麻酔を別枠で管理するなど、単純な仕組みで事故を予防できます。

参考)https://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse545.pdf

もう一つの独自視点は、咽頭麻酔は「患者の訴えの質」に影響する点です。過度の麻酔は検査後の違和感(しびれ感・誤嚥への不安)を増やし、外来クレームにつながることがあります。一方で麻酔が不十分だと咽頭反射が強く出て検査が荒れ、結果的に粘膜損傷や嘔吐につながることがあります。したがって、麻酔は“効かせる/効かせない”ではなく、「必要最小限を、上限を守って、患者ごとに調整する」という運用が、医療安全と患者満足の両方に効きます。

参考)https://www.jgets.jp/kiji00313/3_13_11_6095de3014f622a634524f0c.pdf


Dr.平澤の上部消化管内視鏡診断セミナー 下巻〜がんを見逃さないための観察と病変拾い上げのコツ