インジゴカルミン散布と内視鏡検査
インジゴカルミン散布の色素内視鏡とコントラスト法
インジゴカルミン散布は「染色して細胞を染め分ける」手法ではなく、粘膜表面の微細な凹凸に色素がたまることで、輪郭を線画のように浮かび上がらせる発想が中心です。
そのため、白色光で「なんとなく気になる」部位を見つけた後に散布すると、病変の境界や広がりが読みやすくなり、EMR/ESDなどの切除範囲の決定にも役立つ、という位置づけになります。
一方で、色素内視鏡は万能ではなく、散布の量・角度・洗浄の有無で見え方がブレるので、まず「どこを、何のために強調したいか」をチーム内で共有しておくと再現性が上がります。
インジゴカルミン散布で強調されやすいポイント(典型例)
・陥凹の辺縁:色素が溜まりやすく、境界が立ちます。
参考)https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=7694
・隆起周囲:周辺の浅い凹凸が縁取りされ、拡がりが追いやすくなります。
・正常と異常の“差”:模様の規則性の違いが可視化されます。
インジゴカルミン散布の濃度と希釈と0.4%運用
医療用医薬品としてのインジゴカルミン注は「1アンプル5mL中に20mg(0.4W/V%)」の製剤であることが、添付文書上の基本情報です。
内視鏡領域では、この0.4%をそのまま使うより、観察目的に合わせて2~5倍程度に希釈して散布してよい、という運用例が公的資料にも記載されています(例:0.4%インジゴカルミンを2~5倍に希釈)。
「濃ければ見える」と単純化すると失敗しやすく、濃すぎると粘膜が一面青くなって“境界の情報量”が落ちることもあるため、洗浄→薄く全体→必要部位に追加、の順で組み立てると説明が通りやすいです。
現場で起きやすい“濃度まわり”の落とし穴
・希釈倍率が部署で固定化していて、部位(胃/大腸)や観察距離の違いが反映されない。
参考)https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/cmsfiles/contents/0000363/363734/siryou3.pdf
・散布前の洗浄不足で、粘液に色素が吸着して「病変ではない青」を作ってしまう。
・追加散布のたびに色が濃くなり、最後は“青いだけ”になってしまう(境界の読み取りが逆に難化)。
インジゴカルミン散布のスプレーカテーテル手技とムラ
インジゴカルミン散布は、鉗子口からスプレーカテーテルを通して霧状に噴霧し、狙った範囲へ均一に行き渡らせるのが基本の手技です。
ムラの主因は「距離・角度・送液量のブレ」と「粘液/胆汁/泡の残り」で、散布の上手さというより、前処置(洗浄、泡除去)と“散布前の環境づくり”の比重が大きいです。
医療従事者向けには、白色光観察→軽い散布→再観察→必要なら追加、という“往復”を前提にすると、散布を一発勝負にしない文化が作れます。
ムラ対策の実務ポイント(入れ子なし)
・散布前に洗浄し、粘液と泡を減らして「色が溜まるべき凹凸」を露出させる。
・病変に近づきすぎず、霧が広がる距離を確保して面で乗せる。
・濃淡は「追加散布」で作り、最初から濃くしない(境界情報の飽和を防ぐ)。
・観察後に洗い流せる前提で運用し、再検・再散布の余地を残す。
参考)色素内視鏡(インジゴカルミン) (胃と腸 56巻5号)
インジゴカルミン散布の禁忌とショックと安全管理
インジゴカルミン注は、添付文書上「ショック(頻度不明)」が重大な副作用として明記されており、注入から検査終了まで安静・十分な観察を行うことが重要な基本的注意に挙げられています。
また、過敏症の既往(本剤成分への過敏症)は禁忌に該当し、アレルギー素因のある患者では慎重投与として扱われます。
医療安全の観点では「散布だから局所で安全」と思い込みやすい点が落とし穴で、同一患者が別目的(腎機能検査、センチネルリンパ節、内視鏡関連など)で接触する可能性もあるため、薬剤歴・アレルギー歴を“行為ベース”ではなく“成分ベース”で確認する習慣が効きます。
インジゴカルミン注の添付文書で押さえるべき要点
・成分:1アンプル5mL中20mg(0.4W/V%)。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00067983.pdf
・重要な基本的注意:ショックの可能性、観察の徹底。
・禁忌:成分過敏症の既往。
・慎重投与:アレルギー素因、高血圧、高齢者などで注意事項あり。
参考:添付文書(禁忌・重大な副作用・用法用量がまとまっている)
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00067983.pdf
インジゴカルミン散布の独自視点とチーム説明と教育
インジゴカルミン散布は、医師の“観察のための色素”という理解に寄りがちですが、実際には看護師・技師が関与する工程(洗浄、送液準備、器具準備、記録)が見え方を左右し、チーム手技としての再現性が診断能に直結します。
そこで独自視点としておすすめなのが、「散布の出来」を“青く染まったか”ではなく、「境界が言語化できる画像が取れたか」で評価することです。
たとえば、上司のチェックで問われやすいのは「この散布で何が変わったのか(病変の縁、陥凹、拡がり)」という説明責任なので、検査記録に“散布前後の所見差”を短文テンプレで残すだけでも、教育効果と監査耐性が上がります。
記録テンプレ例(そのまま運用しやすい短文化)
・散布目的:境界不明瞭のため、凹凸強調目的でIC散布。
・散布後所見:陥凹辺縁に色素貯留を認め、範囲同定が容易になった。
・次アクション:追加観察/生検/治療範囲検討、のどれに繋がったかを一言で。
現場で使える一問一答(教育用)
・Q:なぜ「染まる」ではなく「溜まる」が重要?
A:インジゴカルミンは凹みに入り込み輪郭を強調し、正常と病変の境目を読みやすくするからです。
・Q:散布前に最優先でやることは?
A:洗浄して粘液や泡を減らし、色素が“形”を描ける条件を整えることです。
・Q:安全面で必ず頭に置くことは?
A:ショック等の重大な副作用があり、観察を十分に行う必要がある点です。