GIF-H190N 経鼻 内視鏡
GIF-H190N 経鼻 ハイビジョン 仕様と適応の整理
GIF-H190Nは「EVIS EXERA III 上部消化管汎用ビデオスコープ」として、上部消化管だけでなく咽喉・鼻腔の観察、さらに口腔の観察(診断・撮影)までを目的に設計された機器です。経鼻用途が強調されがちですが、添付文書上は“観察領域が広い”ことをまず押さえると、院内の運用設計(どの診療科・検査枠で使うか)が整理しやすくなります。
仕様は、現場の「通る/通らない」「処置がやりやすい/無理が出る」を左右します。添付文書に記載の主な数値として、先端部外径Φ5.4mm、軟性管外径Φ5.8mm、挿入部最大径Φ6.75mm、有効長1100mm、チャンネル径(公称)Φ2.2mm(最小Φ2.15mm)、視野角140°、直視0°、湾曲は4方向(UP 210°、DOWN 90°、RIGHT/LEFT 100°)です。これらは「経鼻での患者負担軽減」だけでなく、吸引・生検・軽微な処置の“限界”や、湾曲をかけた際の処置具追従性にも影響します。
また、発売時のリリースでは、経鼻内視鏡として初めてハイビジョン画質に対応し、新イメージセンサーと撮像光学系で“遠景まで高精細”を目指した点、さらに照明光学系の刷新で中遠景の明るさ向上、挿入部の硬さ見直しで苦痛軽減に寄与する点が特長として挙げられています。経鼻は「細い=暗い・粗い」という先入観が残りやすい領域なので、画質と明るさの改善をチーム内で共有すると、観察精度を前提にした運用(例えば“経鼻でも所見を取りに行く”意思決定)がしやすくなります。
一方で禁忌・禁止や注意点も“経鼻ゆえ”のものが明確です。添付文書では、患者の鼻腔形状や受容性は様々であり、すべての患者に経鼻的に使用できるわけではないため、経鼻可能性を確認し挿入部寸法も勘案することが示されています。ここを軽視すると、鼻腔損傷だけでなく「引き抜けなくなる」という最悪の事態(抜去困難)に直結します。
参考リンク(製品の基本仕様・禁忌/注意・再処理・点検の根拠)
GIF-H190N 送気 送水 吸引 ボタン運用と観察のコツ
GIF-H190Nの使用方法として、添付文書では送水タンクを送水管と加圧管へ接続し、操作部に送気・送水ボタンと吸引ボタンを取り付け、必要に応じて送気・送水ボタンの代わりに送ガス・送水ボタンを取り付ける手順が明記されています。ここは「準備の段階で迷いやすい」ポイントで、特に複数のスコープをローテーション運用している施設では、ボタン種別の取り違いがトラブルの起点になります。
観察中のレンズ汚染への対応も、手順と“やり方の幅”が記載されています。対物レンズに粘液等が付着して観察困難になった場合、送気・送水ボタン(または送ガス・送水ボタン)を押し込んで送水しレンズ洗浄を行う、必要に応じて粘膜に付着した血液を洗い流すなどの目的でシリンジにて鉗子栓から送水する、さらに必要に応じて送気や吸引を行う――という流れです。単純に「送水を押す」だけでなく、状況に応じて“鉗子栓からの送水”も選択肢として明確化されている点が、現場の判断材料になります。
ただし、経鼻運用では“送水の扱い”が経口と同じ発想だと事故につながります。添付文書の「経鼻で使用する場合」の注意として、鼻腔内での送水は行わないことが明記されています。つまり「挿入経路が鼻腔の状態のまま送水で押し流す」という運用は避けるべきで、レンズ洗浄のつもりが患者苦痛・誤嚥リスク・局所刺激の増大につながり得ます。
また、安全上の注意として、固形物や粘度の高いものを吸引しないこと(詰まりや、吸引ボタンに引っ掛かって吸引が止まらなくなるおそれ)も記載されています。経鼻は吸引が弱いと感じやすい場面があり、吸引圧を上げて補いたくなりますが、添付文書には吸引圧を必要以上に高くしないこと、鉗子栓からの体液飛散・感染リスク、粘膜への密着吸引による出血リスクなども並記されています。吸引の強化よりも、前処置・体位・唾液管理・観察のテンポ設計(止めて吸うのではなく“先読みして吸う”)のほうが、結果的に安全域を広げるケースが多いです。
現場で役立つチェックリスト(入れ子なし)
- 送水タンクの接続(送水管・加圧管)を指差し確認する。
- ボタン種別(送気・送水/送ガス・送水)を症例条件(高周波処置の有無など)と合わせて確認する。
- レンズ汚染時は「送水で洗う」前に、鼻腔内送水禁止の状況になっていないかを一呼吸で確認する。
- 鉗子栓からシリンジ送水する際は、飛散防止(ガーゼ当て等)を必ずセットで行う。
GIF-H190N NBI RDI 通常光 使い分けと落とし穴
添付文書の作動原理には、ビデオシステムセンター(光源・プロセッサ装置)が通常観察用、NBI(狭帯域光観察)用、RDI(赤色狭帯域光観察)用の3種類の光を出力すること、そして光源装置の場合は通常観察用とNBI用の2種類の光を出力することが記載されています。ここから逆算すると、施設のシステム構成によって「RDIが使える/使えない」が決まり、GIF-H190N単体の話では完結しません(購入・更新検討の論点にもなります)。
重要なのは、NBI(およびRDI)を“万能の診断モード”として扱わないことです。添付文書には、NBI観察およびRDI観察だけでなく、通常光観察を含めて総合的に観察すること、NBI/RDIで得られる情報は参考情報であり診断の妥当性を保証するものではない、という注意が明記されています。現場でありがちな誤りは、所見が出にくいときに「NBIにすれば見えるはず」と思い込み、通常光での全体観察(色調変化、陥凹、ひだ集中、蠕動との関係など)を飛ばしてしまうことです。
さらに“意外と見落とされる運用上の罠”として、口腔内をNBI/RDI観察する場合は部屋の照明を暗くするなど外光を遮断することが求められています。上部内視鏡の流れで咽喉・口腔をさっと見たい場面ほど、室内照明の影響を受けやすく、NBIで暗く見えて「病変がない」と誤認する可能性が出ます。NBIを活かすには、光学モード切替だけでなく“環境光”まで含めて条件を整える必要があります。
また、照明に関する安全面の注意も、観察モードとセットで理解しておくべきです。添付文書では、照明は必要最小限度の明るさで使用し先端部を長時間粘膜に接近させないこと、光量を上げると先端部温度が41℃を超えて50℃に達することがあり熱傷のおそれがあること、さらにビデオシステムセンターの電源が入っていないと自動調光が機能せず光量が最大設定になることが記載されています。つまり「暗いから光量を上げる」は短絡的で、まず自動調光が正常に働く条件(電源状態、接続状態)を整えることが安全第一の近道です。
GIF-H190N 経鼻 リスク管理 抜去困難 出血 やけど
経鼻内視鏡は患者負担が軽い一方で、特有のリスクが“軽く見られやすい”という別の危うさがあります。添付文書には、経鼻的に挿入すると鼻腔内の炎症で鼻腔が狭くなり引き抜きにくくなるおそれがあること、引き抜きにくい場合は無理に引き抜かないこと、鼻腔内の出血を起こすおそれがあり対応態勢を整えておくこと、引き抜く際に鼻腔内を観察し出血がないことを確認すること、出血がない場合も患者に鼻を強くかませないこと(出血の誘発)など、かなり具体的に書かれています。
そして、最も強いインパクトがあるのが「引き抜けなくなった場合」の対処です。添付文書には、経鼻的に挿入し引き抜けなくなった場合、先端を口から引き出して軟性管をニッパー等で切断し、切断部が体腔・鼻腔を傷つけないことを確認したうえで愛護的に引き抜く、ニッパー等をあらかじめ用意しておくこと、という記載があります。これは頻度が高い事象ではない一方、起きた瞬間に「準備していない施設」は対応が遅れやすく、結果として患者安全・施設リスクの双方に直結します。
また、空気/不燃性ガスの過注入による空気/ガス塞栓症リスクは警告として明記されています。特に出血症例、粘膜切除術、粘膜下層剥離術、高周波焼灼治療などでは送気/送ガス状態を適切に管理することが求められます。経鼻スコープでも処置を行う場面がある以上、「細径=安全」という先入観は危険で、送気・送ガス管理はむしろ丁寧に行う必要があります。
“意外な盲点”になりやすいのは、潤滑剤と薬剤の取り扱いです。添付文書では、オリーブオイルやワセリン等の石油系潤滑剤を使用しないこと(被覆材の膨らみ・劣化)、アルコール含有スプレー式咽頭麻酔薬を直接スコープに噴霧しないこと(挿入部外表面がはがれるおそれ)と明記されています。これらは感染や出血ではなく“機器破損→画質低下→安全性低下”のルートで効いてくるため、薬剤・物品の運用ルール(どこに何を置くか、誰が噴霧するか)として落とし込むのが有効です。
現場で共有したいリスク対策(絵文字あり)
- 🩸 経鼻挿入後は「出血ゼロでも強く鼻をかませない」を説明してから退室誘導する。
- 🧰 抜去困難に備え、ニッパー等の所在を“検査室内の定位置”で統一する(新人でも迷わない配置)。
- 🔥 先端部温度上昇の注意を、光量調整とセットで教育する(「暗い→上げる」ではなく条件確認から)。
- 🧴 潤滑剤・麻酔薬の“禁止事項”を物品棚のラベルで可視化し、ヒヤリハットを未然に止める。
GIF-H190N 洗浄 消毒 滅菌 点検(独自視点:故障予防の設計)
再処理は感染対策として当然ですが、GIF-H190Nでは「故障予防」「画質維持」「検査品質の平準化」という観点でも、運用設計の差が出やすい領域です。添付文書では、内視鏡のすべての管路は使用の有無に関わらず毎症例後に必ず洗浄・消毒(または滅菌)を行うこと、手順と条件は取扱説明書に従うことが明記されています。また、当社指定の洗浄消毒装置を使用する場合は専用洗浄チューブと組み合わせること、使用できる薬剤は取扱説明書記載のものに限ることなど、再処理の“組み合わせ”を固定する思想が読み取れます。
ここでの独自視点は、「再処理・点検を“個人技”にしない」ことです。添付文書には、使用前点検および定期点検(6か月または100症例に一度)を取扱説明書に従って実施し、必要に応じて修理またはオーバーホールを行うことが示されています。さらに、挿入部の引っ掛かり確認(手で滑らせる)、画像の曇り、挿入部を順次曲げた際の軟らかさ不連続、白線指標の変色、操作部のがたつき・異音、動作時の画像ノイズ、先端部のキズやレンズ周辺の欠け・すきまなど、点検項目がかなり具体的です。これらをチェックリスト化して“誰が見ても同じ粒度”にしておくと、属人化による見落としを減らせます。
さらに、添付文書の注意として「スコープコネクター部は電気接点を含め十分に乾燥した状態で光源装置に接続する」「電気接点がぬれていたり汚れたままだと誤作動・故障のおそれ」という記載があります。ここは忙しい現場ほど省略されがちですが、画像トラブル(暗い、ノイズ、フリーズ)を“本体故障”と誤認して修理依頼を乱発する前に、乾燥と接点清潔の手順を標準化するだけで改善するケースがあります。つまり、再処理品質は感染だけでなく、稼働率とコストにも直結します。
また、耐用期間は製造出荷後(納品後)6年(自己認証データ)と記載されています。6年は“使える目安”であって、点検・オーバーホールの実施、扱い方、再処理の適正さで実質寿命はぶれます。裏返すと、日々の再処理と点検が「画質・操作感・安全性」を守り、結果として検査の診断能と患者体験のばらつきを小さくします。
現場で回る再処理・点検の型(表)
| 場面 | やること | 狙い |
|---|---|---|
| 毎症例後 | 全管路を含め洗浄・消毒(または滅菌)を必ず実施 | 感染リスク低減+閉塞・汚れ残りによる機能低下の予防 |
| 接続前 | スコープコネクター部(電気接点含む)を十分乾燥・清潔確認 | 誤作動・故障・画像異常の予防 |
| 定期点検 | 6か月または100症例ごとに点検し、必要なら修理/オーバーホール | 突発故障の回避、検査品質の平準化 |
参考リンク(経鼻ハイビジョン対応・明るさ向上・挿入性の背景)
https://www.olympus.co.jp/news/2017/contents/nr00620/nr00620_00002.pdf