閉塞性尿路障害による腎後性AKI
閉塞性尿路障害による腎後性AKIの水腎症と診断
閉塞性尿路障害による腎後性AKIは、「腎臓自体の障害」ではなく尿の通り道が詰まって腎盂内圧が上がり、結果としてGFRが低下する“可逆性が高い”AKIである一方、見逃すと回復不能に移行しうる点が怖いところです。
AKIの初期評価では、原因が腎前性・腎性・腎後性のいずれでも起こり得るため、「まず腎後性(尿路閉塞)を画像で除外する」発想が実務上とても重要です。
水腎症の確認は腹部超音波が第一選択になりやすく、必要に応じて単純CTで閉塞部位や原因(結石・腫瘍・狭窄)を追います。
典型的には両側性水腎症で腎後性腎不全(腎後性AKI)を疑いやすい一方、片側性でも「単腎」「もともと反対側が機能していない」「高度の下部尿路閉塞で両側に圧がかかる」などでは腎機能が悪化し得るので、画像所見と臨床の整合性を常に確認します。
また、検査室での“ありがちな落とし穴”として、尿量のみでAKIを判断する場合は尿路閉塞のような可逆的乏尿を除外してから基準を当てる、という考え方がガイドラインで明記されています。
参考:AKIの診断基準(KDIGO)と、AKI診療で「尿路閉塞(腎後性)」を画像で評価して閉塞解除を行う位置づけ
日本腎臓学会「AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016」PDF
閉塞性尿路障害による腎後性AKIの原因と悪性腫瘍
原因は大きく「上部尿路閉塞(尿管〜腎盂)」と「下部尿路閉塞(膀胱出口〜尿道)」に分けて整理すると、紹介や対応の優先度が付けやすくなります。
上部尿路閉塞の代表は尿路結石、悪性腫瘍、放射線治療後の炎症性狭窄などで、がん患者ではオンコロジーエマージェンシーとして“閉塞解除によりQOLと予後が改善し得る”と位置づけられています。
泌尿器科以外の悪性腫瘍(婦人科・消化器系など)でも後腹膜への播種やリンパ節転移、骨盤内での圧迫により尿管が閉塞し得るため、「腎臓ではなく骨盤〜後腹膜の問題」として捉える視点が重要です。
下部尿路閉塞では前立腺肥大症や神経因性膀胱などが原因となり、残尿増加がヒントになります。
残尿量は導尿で評価できるだけでなく、膀胱超音波で推定できるため、夜間救急でも“まず膀胱を見る”という一手が診断と治療を同時に進めます。
参考:腎後性腎不全の原因(上部/下部、悪性腫瘍の関与)と、残尿評価や水腎症の読み方
閉塞性尿路障害による腎後性AKIの超音波とCT
腎後性を疑ったら、超音波で水腎症の有無を確認し、必要に応じてCTで閉塞部位・原因を同定する、という流れが基本になります。
血液検査でBUN/Cr上昇があっても、腎前性・腎性・腎後性が混在する症例(例:進行がんで両側水腎症+脱水)もあるため、「画像で水腎症がある=すべて腎後性」と短絡せず、循環血液量や感染所見も同時に評価します。
下部尿路閉塞が疑われる場合は、腎臓だけでなく膀胱を超音波で見て、残尿の多さを根拠に“まず膀胱から尿流を確保する”ことが治療の近道になります。
乏尿の場面では、導尿や尿道カテーテル留置が「診断」かつ「治療」になる代表例で、腎後性AKIの最短ルートです。
一方で、尿管結石や悪性腫瘍による尿管閉塞では、尿道カテーテルだけでは改善しないため、画像で閉塞レベルを見極め、泌尿器科的ドレナージ(ステント/腎瘻)へつなげます。
閉塞性尿路障害による腎後性AKIの治療と尿管ステントと腎ろう
治療の原則は「閉塞解除」で、閉塞機転の解除が最も迅速に腎機能改善へつながる、という点は多くの解説で一貫しています。
下部尿路閉塞なら自己導尿や尿道カテーテル留置で改善することが多く、残尿が多い症例ではまず膀胱ドレナージを優先します。
上部尿路閉塞(特に悪性腫瘍などで長期化が予測される場合)では、尿管ステント留置か腎ろう造設のいずれかで尿流を確保するのが基本です。
尿管ステントは体内留置でボディーイメージを損ねにくい一方、狭窄が強い場合などで挿入不成功があり、閉塞判定が腎ろうより難しい、ステント刺激症状や感染が課題になり得ます。
腎ろうは尿流確保が安定しやすく閉塞判定もしやすい反面、体外カテーテルと蓄尿バッグが必要でQOLが下がり得ること、出血や感染、自己抜去などの管理リスクがあるため、患者背景(せん妄リスク、在宅か、余命見込み)も含めて選択します。
さらに、予後が極めて短い場合に「尿路閉塞解除を行わず対症療法で経過を見る」という選択肢も文献上触れられており、医療者側の独断ではなく患者・家族との相談と合意形成が前提になります。
閉塞性尿路障害による腎後性AKIの閉塞解除後利尿(独自視点)
閉塞解除後に“急に良くなるから安心”と判断すると危険で、解除後利尿(post-obstructive diuresis)とそれに伴う循環血液量低下・電解質異常が臨床の落とし穴になります。
閉塞解除後は大量利尿で脱水が進行し得るため、尿量トレンドを見ながら補液を含む水・電解質管理をきめ細かく行う必要があり、塩分・水分の過剰投与が利尿を長引かせ得る点も注意事項として指摘されています。
医療安全の観点では、解除後24〜48時間は「尿量(時間ごと)」「体重」「血圧/脈拍」「Na/K/Cr」をセットで監視し、利尿が強い場合は補液速度のプロトコル(例:直近尿量の一定割合を補う等)をチームで共有すると、属人的な判断ミスを減らせます(提案)。
また、閉塞解除後にCrが下がり始めても、感染(閉塞性腎盂腎炎)や薬剤投与量調整、再閉塞(ステント閉塞など)で再び悪化することがあるため、画像・症状・尿路デバイスの機能確認を“腎機能改善と並行”して行う姿勢が重要です。
参考:AKIでの水・電解質管理、閉塞解除後の利尿が長引く可能性など、閉塞解除後の注意点
MSDマニュアル(医療従事者向け)急性腎障害(AKI)

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