血液透析装置 定期点検項目
血液透析装置 定期点検項目と日常点検の違い(始業時点検・使用中点検・終業時点検)
血液透析装置の点検は、大きく「日常点検」と「定期点検」に分けて設計すると運用が安定します。日本臨床工学技士会の「血液浄化業務指針」では、透析用監視装置・個人用透析装置について、始業時点検・使用中点検・終業時点検の例が整理され、さらに定期点検の注意事項と点検項目例が示されています。
日常点検は、臨床の開始・運転・終了の“その日その回”の安全を守る点検です。例えば始業時点検では、前回の洗浄・消毒工程が正常に終了していること、消毒や酸洗浄の薬液が残留していないことの確認、透析液濃度が処方どおりであることの確認などが挙げられています。
一方の定期点検は、日常点検では見つけにくい「劣化」「ズレ」「設計どおりの安全余裕の低下」を、標準器や手順で“意図的に再現して評価”する点検です。血液浄化業務指針では、定期点検は装置の操作・保守点検に関する技術を十分に習得した者(またはその指導)で実施し、終了後は動作確認を行い、不適合なら使用しない、適合でも始業時点検は必ず行う、といった基本原則が示されています。
現場で混乱しやすいのが「日常点検で毎回見ているから、定期点検は軽くてよい」という誤解です。日常点検は“異常の兆候を拾う”のが中心で、定期点検は“規格・基準からの逸脱がないことを証明する”のが中心です。例えば、日常点検で圧表示が“いつもと違う気がする”を拾い、定期点検で圧力センサのゼロ・スパンを標準圧力計で確認して調整する、という役割分担が理想です。
また、点検計画書と点検記録の整備は、属人化を減らす最大の武器です。血液浄化業務指針には、定期点検計画書や報告書の例が掲載され、頻度(3か月、6か月、1年など)で管理する考え方が示されています。
血液透析装置 定期点検項目の圧力センサ系・除水制御系・透析液濃度関連(濃度電極・温度計)
定期点検項目の中核は、表示値が治療条件に直結する「センサ」と、そのセンサを使って制御する「制御系」です。血液浄化業務指針の定期点検項目例では、圧力センサ系、除水制御系、透析液濃度関連、血液ポンプ・シリンジポンプ、補液ポンプ系など、機能ブロックごとに点検観点が整理されています。
圧力センサ系では、圧力モニタラインの血液などによる汚染の有無を確認し、大気開放状態でのゼロ確認に加え、標準圧力計を用いて陽圧・陰圧を負荷して指示値確認を行い、規格外なら調整する、とされています。ここで重要なのは「ゼロが合っている=大丈夫」ではなく、スパン(感度)側のズレも実害になり得る点です。TMPや透析液圧の“見かけの安定”は、センサ感度の低下でも起こりえます。
除水制御系は、患者安全と治療品質に直結します。血液浄化業務指針では、除水関連各種バルブ調整と動作確認、除水関連機構の各種調整と動作確認が示されており、「動くか」だけでなく「指示した量・タイミングで動くか」が焦点になります。
透析液濃度関連では、透析液濃度関連の各種バルブ調整・動作確認、原液ポンプの調整・動作確認、濃度電極の調整・動作確認が例示されています。濃度表示が正しいことは当然として、意外に落とし穴になるのが“表示と実濃度のズレが警報閾値に近づく”状態です。しきい値近傍では、温度変化や原液粘度の変化でふらつきが増え、警報頻回→スタッフのアラーム疲れ、という二次的リスクが起こり得ます。
温度計・温度制御は、患者の体感だけでなく透析液の物性やセンサ応答にも影響します。血液浄化業務指針の定期点検項目例には、透析液温度制御の確認、濃度計・温度計の確認が含まれています。点検では、表示温度の一致だけでなく、ヒータ制御の追従、異常時の警報・停止の挙動まで確認して“安全側に倒れる”ことを確認するのが実務的です。
血液透析装置 定期点検項目のポンプ・電磁弁・漏電ブレーカ・バックアップバッテリ(警報・スタッフコール)
透析装置は“止まらないこと”が価値の機器である一方、止めるべきときには確実に止まる必要があります。その両立を支えるのが、ポンプ・電磁弁・電源系・警報系です。血液浄化業務指針の定期点検項目例では、血液ポンプ・シリンジポンプの流量(注入量)調整と動作確認、各種警報やスタッフコール発報確認、バックアップバッテリ機能、システム日時の正確性まで含めた確認が示されています。
ポンプ系は、単に「回る」だけでは不十分で、表示と実流量(実注入量)の誤差が問題になります。指針には、血液ポンプ・シリンジポンプの調整と動作確認が挙げられており、流量のズレが疑われる場合は、点検で原因(チューブ摩耗、圧閉度、ローラの偏摩耗、センサずれ等)を切り分ける設計が求められます。
電磁弁や各種バルブは、透析液・補液・排液の流路を作る“隠れた要”です。指針の定期点検項目例には、電磁弁の分解点検(透析液供給装置側の例)や、透析用監視装置側でも各種バルブ調整・動作確認が含まれています。分解点検は施設の方針やメーカー保守契約に左右されますが、少なくとも固着・遅延・リークの兆候を拾う観察ポイント(異音、温度上昇、動作時間、液漏れ)を点検票に明文化すると、経験の浅い担当でも質が揃います。
電気安全は“異常が起きない限り見落とされがち”ですが、最終的に患者とスタッフを守ります。血液浄化業務指針には、透析液供給装置の定期点検例として漏電ブレーカの動作確認が挙げられ、透析用監視装置・個人用透析装置でも電源周りの注意(電装部品脱着時は主電源を切る等)が明記されています。
バックアップバッテリは、停電や瞬低時の“持ちこたえ”を担い、患者避難や緊急離脱の時間を稼ぎます。指針の定期点検項目例では、バックアップバッテリの機能確認や、警報・スタッフコールの発報確認が含まれています。点検の際は、バッテリ単体の状態だけでなく「バッテリ駆動へ切り替わったことをスタッフが認知できる表示・警報が出るか」という運用面の確認までセットにすると、実災害時のギャップが減ります。
血液透析装置 定期点検項目と透析液供給装置・水処理装置(RO装置・残留塩素・ETRF)連携
血液透析装置(監視装置)だけを完璧に点検しても、上流の水処理装置や透析液供給装置が不安定なら、安全な透析は成立しません。血液浄化業務指針では、水処理装置、多人数用透析液供給装置、透析用監視装置(個人用透析装置)を一体の“血液浄化関連装置の機器管理”として整理し、日常点検と定期点検の枠組みを示しています。
水処理装置の日常点検例として、RO装置では供給液温度、ポンプ圧力、RO水供給圧力、電導度計による水質確認、透過水量・排水量、配管液漏れ、紫外線殺菌灯などが挙げられています。活性炭濾過装置では残留塩素の確認が明記され、軟水化装置では硬度指示薬(EBT)での軟水化確認などが示されています。つまり、定期点検を語る前提として、日々の点検項目が“水質と機械状態の両輪”になっていることが重要です。
透析液供給装置の定期点検例では、1週間毎の透析液フィルタ目詰まり確認、1か月毎の装置本体・配管の汚れや破損、ポンプ・チューブ、漏電ブレーカ、3か月毎の濃度計・温度計・電源電圧、6か月毎の配管点検やセンサ動作確認、電磁弁の分解点検、1年毎の消耗部品交換が例示されています。監視装置側の定期点検と、供給装置側の定期点検が噛み合っていないと、トラブルが“装置のせいか、供給のせいか”で迷走します。
ETRF(エンドトキシン除去フィルタ)についても、指針の透析用監視装置・個人用透析装置の定期点検項目例に「ETRFの使用時間と状態」が含まれています。ここが意外に“盲点”になりやすい理由は、フィルタは見た目がきれいでも性能が落ちることがあり、しかも異常が起きた時に臨床影響が大きいからです。使用時間の管理を「装置ログ」「手書き台帳」「消耗品バーコード」など、施設に合う方法で冗長化しておくと、交換漏れの確率を下げられます。
参考リンク(透析装置だけでなく、水処理・供給・監視装置まで含めた日常点検/定期点検項目の例、点検計画書・点検報告書のひな形が載っています)
https://www.ja-ces.or.jp/01jacet/shiryou/pdf/gyoumubetsu_gyoumushishin03.pdf
血液透析装置 定期点検項目の独自視点:点検計画書の作り方と「アラーム疲れ」対策(記録・教育・監査)
検索上位の多くは「点検項目の羅列」に寄りがちですが、現場で効くのは“点検が続く仕組み”です。血液浄化業務指針は、定期点検計画書の作成例や、点検報告書の例を提示しており、計画→実施→記録→保存という運用設計を重視しています。
独自視点として、点検計画書を「故障予防のカレンダー」ではなく、「アラーム疲れ(alarm fatigue)を減らす道具」として設計すると、臨床の安全性が上がります。例えば、警報が多い装置は“センサや流路が微妙にズレている”ことがあり、現場は慣れで無音化・閾値拡大・一時回避に傾きがちです。しかし指針の定期点検項目例では、各種警報やスタッフコールの発報確認、圧力センサのゼロ・スパン確認、濃度電極の調整、漏血検出器の調整など、警報を“正しく鳴らす/鳴らさない”ためのメンテ項目が含まれています。ここを計画書で「警報関連は毎回ここまで確認する」と明文化すると、現場の心理的負担を減らしながら安全側に寄せられます。
もう一つ、あまり語られないのが「システムの日付や時間の正確性」です。血液浄化業務指針の定期点検項目例に、日付・時間の正確性が含まれているのは、ログや記録の“証拠能力”が落ちると、原因究明や監査対応で致命的になるからです。時計ズレは臨床に直結しないようでいて、インシデント分析でタイムラインが崩れ、再発防止の精度を下げます。
点検記録の作り方は、文章を長くするほど良いわけではなく、「再現性」が命です。厚労省の「生命維持管理装置等の研修および保守点検の指針」では、血液浄化装置を含む生命維持管理装置等について、保守点検の計画策定・実施と、記録に含めるべき事項(医療機器名、製造販売業者名、型式、点検年月日、点検概要、点検者名など)を整理しており、院内ルール化の根拠として使いやすい資料です。
参考)https://www.ja-ces.or.jp/01jacet/shiryou/pdf/gyoumubetsu_gyoumushishin03.pdf
参考リンク(血液浄化装置を含む生命維持管理装置の「研修」と「保守点検」の考え方、点検記録に入れるべき要素、チェックリスト例が載っています)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000898768.pdf
最後に、点検項目の運用で役立つ小技をまとめます(意味のない水増しではなく、実務の抜けを減らす工夫です)。
- ✅ 点検票は「装置ブロック別(圧力・除水・濃度・ポンプ・警報・電源)」に並べ、異常時に原因ブロックへ直行できる構造にする(指針の分類がそのまま使える)。
- 📎 定期点検の結果は「合否」だけでなく、標準器での確認を要する項目(ゼロ・スパン等)は数値欄を作り、調整前後を残す(説明責任が上がる)。
- 🧪 薬液残留確認は、始業時点検に埋め込むだけでなく、定期点検後の動作確認にも“同じ観点”を差し込む(点検後こそヒューマンエラーが混じる)。
- 🔁 ETRFや消耗部品は「使用時間」と「交換日」を二重管理し、どちらかが欠けても交換漏れが起きにくい運用にする(指針で状態・使用時間確認が示される)。
| 点検カテゴリ | 狙い | 具体例(抜粋) |
|---|---|---|
| 圧力センサ系 | 表示値の信頼性 | 圧力モニタライン汚染確認、標準圧力計で陽圧・陰圧を負荷して指示値確認、規格外なら調整。 |
| 除水制御系 | 除水の安全性 | 除水関連各種バルブ・機構の調整と動作確認。 |
| 透析液濃度関連 | 処方どおりの透析液 | 原液ポンプ調整、濃度電極調整、濃度関連バルブの動作確認。 |
| 警報・安全機構 | 止めるべき時に止まる | 各種警報、スタッフコール発報確認、温度制御確認。 |
| 電源・電気安全 | 感電・停電リスク低減 | 電装部品脱着前の主電源OFF、漏電ブレーカ動作確認(供給装置側の例)、バックアップバッテリ機能確認。 |
