血液透析用カテーテルキット感染予防
血液透析用カテーテルキット構成品と使用目的
血液透析用カテーテルキットは、単に「カテーテル本体」だけでなく、留置操作を安全に完結させるための複数の滅菌物品で構成されます。代表例として、PMDAに掲載されている透析用キットでは、カテーテル本体(アウター/インナー)、ガイドワイヤ、ダイレータ、穿刺針、オブチュレータ、固定具、穴あきドレープ、スカルペル等がセット化されています。これらは“揃っていること”自体が安全性に直結し、現場での代替品混用を減らす効果があります。
構成品の役割は大きく3つに分けて理解すると運用が安定します。
- 留置を成立させる:穿刺針→ガイドワイヤ→ダイレータ→カテーテル挿入という流れで、血管への侵襲を最小化しつつ確実に留置する。
- 透析を成立させる:脱血側・送血側の識別(色分け)や、回路接続の確実化により、再循環や血液漏れを防ぐ。
- 維持を成立させる:ヘパリンロック、オブチュレータ、固定具、ドレッシングで「閉塞」と「感染」を同時に抑える。
意外に見落とされやすいのが、キットや添付文書に書かれた“材質と相性”です。あるキットでは、アルコール系消毒剤を連結チューブの接合部に接触させない、また有機溶剤との接触を避けるなど、強度低下や脱落リスクに直結する警告が明記されています。消毒=アルコール、という思い込みで全体に噴霧・浸潤させると、感染より前に「破損・漏れ」という別の重大事故を誘発し得るため、材質適合を最初に確認する運用が重要です。
血液透析用カテーテルキット留置手技と確認ポイント
留置は施設の手順書に従うのが大前提ですが、添付文書レベルで共通する“事故が起きやすい局面”を押さえると、チームの注意配分が明確になります。典型的には、(1)ガイドワイヤ操作、(2)カテーテル位置確認、(3)固定、の3点です。
第一に、ガイドワイヤ操作は「抵抗=中止」が原則です。添付文書では、挿入・抜去時に異常な抵抗があれば操作を中止して画像下で原因確認、無理な牽引による破断・遺残を避ける、と繰り返し警告されています。忙しい現場ほど“少し強めに引けば戻る”という癖が出やすいので、抵抗を感じた瞬間に声かけして操作を止める文化(ストップルール)を決めておくと事故率が下がります。
第二に、留置後の位置確認は必須です。添付文書では、留置後にX線撮影下で目的部位に正しく留置されていることを確認する、と明記されています。位置がずれると血流不良だけでなく、不整脈や心タンポナーデなど重篤化に繋がるため、確認を「儀式」にせず、血液流量・静脈圧・再循環の兆候まで含めてセットで評価します。
第三に、固定は“抜去事故”と“閉塞”の分岐点です。添付文書には、固定具を左右1箇所のみで固定しない、フィクスチャーを確実にはめ込む、縫合糸でシャフトや枝管を直接縛らない、など具体的な注意が並びます。固定不良は自己抜去や自然抜去につながり、逆に締めすぎは脱血異常・キンク・インナーカテーテル挿入不能を招きます。固定の評価は、開始時だけでなく、体位変換・更衣・移乗後にも確認する運用が現実的です。
血液透析用カテーテルキット感染予防と標準的透析操作
透析用カテーテルは他のバスキュラーアクセスより感染リスクが高く、感染予防は「出口部の消毒」だけで完結しません。日本透析医会のガイドラインでは、透析用カテーテル(非カフ型・カフ型)による透析操作として、PPE装着、材質に適合した消毒薬の使用、充塡液の吸引による閉塞確認、返血後の接続部消毒とヘパリン充塡、出口部のドレッシング管理、閉鎖式プラグの提案など、操作の流れとして整理されています。
現場実務で“効く”のは、感染経路を2つに分ける見方です。
- 出口部(皮膚側):発赤、腫脹、疼痛、排膿、浸出液の有無を毎回観察し、必要時に医師へ早期相談。ドレッシングは密封性を意識しつつ、皮膚状態(かぶれ等)にも配慮する。
- 接続部(回路側):開始時・終了時のアクセスで開放状態を作りやすい。ガイドラインでは閉鎖式プラグの使用が提案され、接続部表面を“ごしごしこする(scrub)”という概念も紹介されています。
意外に盲点になるのが「スタッフ2人体制」の意味です。ガイドラインではカテーテル透析操作は患者側と装置側の2人で行うことが望ましい、と整理されています。人員配置の理想論に見えますが、実は感染対策と医療安全(血液汚染、接続ミス、クランプミス、抜去、返血トラブル)を同時に下げるための構造的な対策です。どうしても1人で行う局面がある場合は、清潔・不潔のゾーン分け(装置に触る手と接続部に触る手)を作業手順に落とし込むことが重要になります。
出口部と接続部に加えて、施設全体の基本として、手指衛生とPPEは最重要です。ガイドラインは、穿刺・止血・カテーテルアクセスなど侵襲的手技の前後に手指衛生、マスク、アイガード、エプロン/ガウン、手袋の適切使用を強く推奨しており、透析室という集団医療の環境で標準予防策を徹底する意義が説明されています。
参考リンク(透析用カテーテル操作・感染予防の標準手順、PPEや手指衛生の推奨度、閉鎖式プラグ提案など)
日本透析医会:透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン(六訂版)
血液透析用カテーテルキット閉塞・血栓・再循環と対処
感染と並ぶ“日常トラブル”が、脱血不良・送血不良(血流不良)です。添付文書では、血流不足の原因として、血管の狭窄・湾曲部への留置、側孔の血管壁密着、先端部のフィブリンシース形成などが挙げられ、必要に応じて先端位置の調整、フラッシュ操作、交換も選択肢として示されています。さらに、カテーテル内に逆流した血液の凝固塊や血栓形成に注意する、と明確に書かれています。
血流不良時に「すぐ押す・強く引く」対応は危険で、次の順で評価すると判断がぶれにくくなります。
- まず確認:クランプ、接続、キンク、固定部の屈曲、体位(肩・頸部の回旋や座位で変化することがある)。
- 次に機械的原因:先端位置(画像)、側孔の吸い付き、カテーテル向き。
- それでも改善しない:血栓・フィブリンシースを疑う。
あまり知られていないが現場で差が出るのが「ヘパリンロックの作法」です。添付文書では、クランプした状態で注入しない、閉塞したカテーテルに無理に注入しない(逆圧でアダプタ脱落の可能性)、ヘパリン注入直後に枝管をクランプする、クランプは使用まで開けない(陰圧で血液が吸い込まれ血栓形成につながる)、など“なぜその手順が必要か”まで説明されています。手順を守る目的が明文化されていると、忙しい場面でも省略されにくくなります。
また、ガイドライン側では、開始時に充塡液を吸引して閉塞の有無を確認することを標準としており、血液塊の有無を確認してから回路接続する流れが記載されています。閉塞は感染と同じく「小さい異常の見逃し」が重大事に発展するため、吸引時の抵抗感や返血時の違和感を記録して次回に引き継ぐだけでも、入れ替え判断が早くなります。
血液透析用カテーテルキット独自視点:消毒薬と材質適合
検索上位では「感染予防=消毒手技」に焦点が当たりがちですが、実務では“消毒薬の選び方そのもの”が安全性を左右します。ガイドラインでも、カテーテルの皮膚出口部消毒や回路接続時に使用する消毒薬は、カテーテルの材質に適合した消毒薬を用いることを推奨しています。つまり、消毒薬は強ければ良いのではなく、「そのデバイスに使ってよいもの」を選ぶ必要があります。
さらに添付文書では、アルコール系消毒剤を連結チューブ接合部に接触させない、アルコール含有薬剤の投与で強度低下の恐れがあるため状態観察と早めの交換を検討する、有機溶剤接触で形状変化や亀裂が起こり得る、など“感染とは別軸の危険”が具体的に列挙されています。現場でありがちな事故として、消毒を徹底するつもりでアルコールを多用し、結果的に接合部の劣化→漏れ→緊急交換、という流れが起こり得ます。これは感染対策の熱心さが裏目に出る典型例なので、施設のカテーテル種類ごとに「使ってよい消毒薬」「避ける薬剤」「禁忌の接触部位」を一覧化しておくと再現性が高まります。
もう一つの独自ポイントは「MR検査など周辺検査との整合」です。あるキットの添付文書では、固定具(フィクスチャー)がステンレス鋼製でMR安全性評価を実施していない旨、MR検査時に外すことが可能である旨が記載されています。透析患者は他科検査も多く、固定具の扱いが抜去リスクや再固定の質に影響するため、放射線部門との連携手順(誰が外し、誰が再固定を確認するか)まで決めておくと、感染とは別の医療安全が底上げされます。
参考リンク(キット構成、留置手順、X線確認、ヘパリンロック、材質とアルコール等への注意、合併症一覧など)
PMDA:ブラッドアクセス LCV-UK カテーテルキット 添付文書

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