溶連菌感染後急性糸球体腎炎 小児
溶連菌感染後急性糸球体腎炎 小児 潜伏期と症状(血尿・浮腫・高血圧)
溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)は、主にA群β溶連菌による上気道感染などの「感染後」に、潜伏期を経て急性腎炎症候群として発症する病態です。典型像として、血尿・蛋白尿、尿量減少、顔面/眼瞼や下腿の浮腫、高血圧が前面に出ます。東京女子医科大学の解説でも、感染後に潜伏期を経て血尿・蛋白尿、浮腫、高血圧で発症する点がまとめられています。
小児では「尿の色が濃い」「コーラ色(赤褐色)」のような肉眼的血尿が気づきの契機になり得ますが、見た目がはっきりしない顕微鏡的血尿(潜血)から拾い上げられるケースもあります。さらに浮腫は、ネフローゼ症候群のような高度な全身浮腫ではなく、朝の眼瞼浮腫など比較的軽度から始まることがあり、保護者が「顔が腫れぼったい」と表現することもあります。高血圧は自覚症状に乏しい一方、頭痛・嘔気などで初めて評価される場合があるため、外来でも血圧測定をルーチン化しておくと見逃しが減ります。jmedj+1
臨床で注意したいのは、「先行感染がはっきりしない」または「感染症状がすでに軽快している」ことがあり得る点です。先行感染が目立たなくても、補体低下や抗体価上昇などが揃うとPSAGNとして説明がつくことがあります。加えて、浮腫・高血圧が前面に出ると心不全リスク評価も必要になり、重症例では入院管理が安全です。jstage.jst+1
溶連菌感染後急性糸球体腎炎 小児 尿検査と血液検査(補体C3・ASO)
検査の起点は尿検査で、強い血尿と蛋白尿を確認し、可能なら赤血球円柱など「糸球体由来」を示唆する所見も評価します。東京女子医科大学は、尿所見として血尿・蛋白尿を示し、時に腎機能障害が強く急性腎不全に至ることがある点を挙げています。
血液検査で重要なのは補体で、PSAGNでは補体(CH50、C3、C4)の低下が特徴とされます。実臨床では「C3低下が合うか」「回復していくか」が経過観察の軸になり、C3低値が長引く場合は別疾患(例:膜性増殖性糸球体腎炎など)を再検討する姿勢が必要です。補体低下の特徴や、必要に応じて腎生検で病勢把握をする場合がある点は、東京女子医科大学の記載が整理に役立ちます。
先行溶連菌感染の「証拠」を押さえる検査として、ASO(Anti-Streptolysin O)やASK(Anti-streptokinase)などの抗体価上昇が挙げられます。東京女子医科大学はASO、ASKなどの抗体価上昇を溶連菌感染を示す所見として記載しています。ここでのコツは、抗体価は「現時点で陽性か」だけでなく、臨床状況により解釈が変わる点で、疑いが強ければペア血清や経時変化も考えます。
溶連菌感染後急性糸球体腎炎 小児 治療(塩分制限・利尿薬・降圧薬)と入院判断
治療の基本は対症療法で、病態の中心であるNa・水分貯留(体液過剰)と高血圧を安全にコントロールすることです。東京女子医科大学は、尿量減少・浮腫・高血圧がある場合に、安静、塩分・水分制限、利尿薬・降圧薬の投与を行うため入院治療が必要になると述べています。
入院を強く検討したいのは、血圧が高い(頭痛や嘔吐など症状を伴う)、乏尿が目立つ、浮腫が進行する、腎機能(Cr上昇など)の悪化が疑われる、呼吸苦やラ音など体液過剰の所見がある、といった場面です。PSAGNは多くが予後良好ですが、急性期は「循環器合併症(体液過剰による心不全など)」がリスクになり得るため、外来で引っ張り過ぎない判断が重要です。hospital.city+1
抗菌薬については「腎炎そのものを確実に予防できるわけではない」とされる一方、先行感染(咽頭炎など)が活動性なら感染治療の位置づけで行います。つまり、腎炎の治療=抗菌薬、ではなく、腎炎の治療は体液・血圧管理が柱である点をチームで共有しておくと説明がぶれにくくなります。jmedj+1
溶連菌感染後急性糸球体腎炎 小児 予後とフォロー(補体回復・血尿遷延)
PSAGNは全体として予後良好で、感染の軽快とともに尿所見や腎機能が回復することが多いとされます。東京女子医科大学も「比較的予後はよい」が、尿所見異常が遷延し腎機能障害が残ることがある、と注意点を挙げています。
フォローで特に使いやすい指標が補体で、C3が低下していた症例では回復(正常化)を確認することが、鑑別の見直しにもつながります。小児科外来の解説では、C3が通常1〜2か月で正常化するはずで、低値が持続する場合は他疾患を疑う、という実務的な目安が示されています。補体が戻らないときは、病型がPSAGNの範囲に収まっているか(例えばIgA腎症、ループス腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎など)を再点検し、必要なら腎専門へ相談します。jmedj+1
もう一つ「意外に長引く」所見として、顕微鏡的血尿(潜血)の遷延があります。外来向け情報では、顕微鏡的血尿が1〜2年持続することがあるとされ、保護者の不安が強くなりやすいポイントです。ここは「腎機能と血圧が保たれているか」「蛋白尿が増えていないか」を軸に説明し、必要な検査だけを計画的に続けると通院負担を減らせます。
参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_13887
溶連菌感染後急性糸球体腎炎 小児 独自視点:溶連菌感染後の尿検査運用(見逃し回避と過剰検査の境界)
臨床現場で悩ましいのは「溶連菌感染症のあと、全員に尿検査が必要か」という運用設計です。日本医事新報社の医師向け記事では、溶連菌感染後急性糸球体腎炎の合併が2%未満とされ、感染から1〜4週間後に尿検査を行う施設が多い、という実態が紹介されています。つまり、頻度は高くない一方、一定期間後に拾い上げる運用が一般的であることが示唆されます。
ここでの現実的な落としどころは、「全例スクリーニング」か「症状がある子だけ」かを二択にせず、リスクで層別化して検査の濃淡を付けることです。例えば、明らかな浮腫、尿色変化、乏尿、頭痛(高血圧疑い)がある場合は迅速に尿検査+血圧測定を行い、必要に応じて補体や腎機能を追加します。逆に無症状であっても、学校検尿が近い時期や、家族が尿色変化に気づきにくい年齢(就学前)などは、地域の実情に合わせて1回の尿検査を組み込むほうが安全な場合があります。jmedj+1
また、PSAGNは「感染の治療をしていても起こり得る」ため、保護者説明では“抗菌薬を飲んだから腎炎は起きない”という誤解を避け、「この期間は尿の色、むくみ、頭痛に注意しよう」という観察ポイントを具体化して伝えると受診遅れを減らせます。運用が定まると、医療者側も“いつまでフォローするか”が明確になり、C3回復や尿所見改善の確認を節目に終診判断がしやすくなります。
日本語で病態・検査所見(補体低下、ASO/ASK上昇、humpなど病理)を体系的に確認できる。
急性糸球体腎炎(東京女子医科大学:症状・検査所見・治療・予後の要点)
溶連菌感染後の尿検査実施タイミングや実臨床の運用実態(合併頻度、1〜4週での検査など)を把握できる。