尿酸塩腎症と高尿酸血症
尿酸塩腎症の原因と腫瘍崩壊症候群
尿酸塩腎症のうち、臨床で最も「急性に」遭遇しやすいのが、化学療法や放射線療法などを契機とする腫瘍崩壊症候群(TLS)に関連した急性尿酸性腎症です。
TLSでは、急激な細胞崩壊で核酸代謝産物が一気に尿酸へ流れ、短時間で高尿酸血症が成立し、尿細管内で尿酸塩結晶が析出しやすくなります。
特にリンパ腫・白血病など血液腫瘍の治療後に多いことが整理されており、「がん治療後の急性腎障害」の鑑別に尿酸塩腎症を常に入れておく価値があります。
またTLS対策は「腎臓を守る」というより、治療そのものの継続可否に直結するため、腫瘍内科・腎臓内科・薬剤部の連携プロトコル化が有用です。
(参考:TLSの予防・補液、アロプリノール、尿アルカリ化、ラスブリカーゼの位置づけ)
TLSの予防と治療の要点がまとまっています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000013qef-att/2r98520000013r8d.pdf
尿酸塩腎症の診断と検査と腎機能
尿酸塩腎症を疑う軸は「急な腎機能悪化」と「高尿酸血症の背景(TLS、脱水、薬剤など)」の整合性で、まずは病歴で時間軸を押さえることが重要です。
一方で慢性側(痛風腎)では、高尿酸血症が持続すると腎髄質を中心に炎症(間質性腎炎)を起こし得る、という説明が臨床情報として提示されています。
高尿酸血症そのものは「産生過剰型」と「排泄低下型」に大別され、腎臓からの排泄低下が関与している場合は、尿酸値と腎機能の相互悪化に陥りやすい点を意識します。
また尿酸塩が腎臓髄質にたまると腎機能障害を起こし、痛風腎と呼ばれる、という整理は患者説明にも使いやすい概念です。
実務上は「尿酸値」「クレアチニン/eGFR」「尿量」「電解質(TLSならK・P・Ca)」を同時に追い、腫瘍治療のタイミングと合わせて評価するのが安全です。
尿酸塩腎症の治療と薬と補液
急性尿酸性腎症(TLSなど)の予防では、補液で尿量を確保することが基本に置かれており、MSDマニュアルでは尿量を2.5L/日超に維持する目的で生理食塩水輸液を行う、という記載があります。
薬物では、TLSの高尿酸血症に対してアロプリノールを予防的に投与すること、さらにアロプリノール投与に伴うキサンチン腎症予防のためにも水分負荷が必須、という注意点が示されています。
ラスブリカーゼは尿酸を酸化してアラントインにする尿酸分解酵素薬で、TLS予防などで使用されることが明記されています。
現場の落とし穴は、「尿酸を作らせない(生成抑制)」と「すでにある尿酸を下げる(分解)」で即効性が異なる点で、PMDA資料でもTLSの高尿酸血症にアロプリノール等が用いられるが“既に産生された尿酸を低下させることは”別問題、という趣旨が述べられています。
(参考:尿酸降下薬・腎障害の位置づけ、推奨の方向性)
腎障害を有する高尿酸血症患者への尿酸降下薬について推奨が整理されています。
https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00476_supplementary.pdf
尿酸塩腎症と痛風腎と尿路結石
高尿酸血症が長期化すると尿酸が結晶化し、関節だけでなく腎臓や尿路にも影響し得る、という全身合併症の捉え方が重要です。
尿酸塩が腎髄質にたまると腎機能障害を起こし痛風腎と呼ぶこと、さらに尿酸塩を中心とする尿路結石ができやすくなることが特徴として挙げられています。
臨床では「痛風発作がない=腎は安全」と誤解されやすいため、健診で高尿酸血症を指摘された段階から、腎機能・尿検査・結石歴をセットで問診する運用が有効です。
尿酸が水に溶けにくく、過剰になると尿酸塩として存在しやすい、という性質の説明は患者理解を助け、服薬継続(尿酸降下薬の中断防止)にもつながります。
(参考:痛風と腎臓(痛風腎)の説明、腎で何が起きるか)
痛風腎の病態の流れが読みやすく整理されています。
尿酸塩腎症の独自視点:高尿酸血症とCKDガイドライン
尿酸塩腎症を「急性(TLS)だけの話」と捉えると見落としが出やすく、CKD診療では高尿酸血症が併存したときの尿酸管理が別枠で議論されています。
日本腎臓学会CKDガイドラインの資料では、高尿酸血症を有するCKD患者で尿酸低下療法は腎機能悪化を抑制する可能性があり「行うことを考慮してもよい」とされ、生活習慣の改善指導も含めて整理されています。
また日本臨床内科医会の資料では、CKDを伴う高尿酸血症で血清尿酸値が8.0mg/dLを超える場合に生活指導の上で薬物治療を考慮する、という本邦ガイドラインの推奨が紹介されています。
この視点が“独自”になり得る理由は、腎保護を目的とした尿酸管理が、痛風発作の有無と独立して議論される点で、医療者間でもゴール設定(何をもって介入するか)がズレやすいからです。
日常診療の工夫としては、①CKDのステージ、②尿路結石の有無、③使用薬(利尿薬など)、④脱水リスク、⑤がん治療予定の有無、をチェックリスト化すると、尿酸塩腎症(急性・慢性双方)の危険因子を短時間で拾いやすくなります。