びまん性増殖性糸球体腎炎とは補体免疫複合体腎炎

びまん性増殖性糸球体腎炎とは

この記事で押さえるポイント
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「びまん性増殖」の意味を病理から言語化

光顕・蛍光・電顕の“セット読み”で、同じ「増殖性」でも別疾患に分岐する理由を整理します。

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補体低下・C3沈着の臨床的インパクト

CH50/C3低下の“持続”が示唆する病態(補体系過剰活性化)を、検査戦略に落とし込みます。

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一次性/二次性の鑑別と治療の現実

感染症・免疫複合体疾患など二次性除外の要点と、ステロイドなど免疫抑制の位置づけを確認します。

びまん性増殖性糸球体腎炎とは:膜性増殖性糸球体腎炎と病理

医療現場で「びまん性増殖性糸球体腎炎」と呼ぶとき、実際には“光顕でびまん性(多くの糸球体に及ぶ)な増殖性変化を示す糸球体腎炎のパターン”を指しており、疾患名というより病理学的な見取り図として使われることが多いです。一次性膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)は、その代表的な枠組みとして、糸球体係蹄壁の肥厚(基底膜二重化)と分葉状の細胞増殖病変が特徴とされています。[][page:1]

ここで重要なのは、「びまん性」「増殖性」という言葉だけでは治療方針に直結しない点です。MPGNのように係蹄壁の変化(基底膜二重化)とメサンギウム間入が前景に出るパターンもあれば、急性腎炎様の管内増殖が強いパターン、半月体を伴うパターンなど、多彩な形で“びまん性増殖”が成立します。厚労省資料の病理分類でも、びまん型・分葉型・急性型など、同じMPGNの枠内でも形態の幅が示されています。[page:2]

臨床側がとるべき姿勢は、「びまん性増殖=特定治療」と短絡せず、①光顕のパターン(係蹄壁二重化や分葉化の有無)、②蛍光抗体法での沈着(免疫グロブリンかC3優位か)、③電顕での沈着部位(内皮下/基底膜内など)を、ひとまとまりの情報として扱うことです。これができると、同じ“びまん性増殖性”でも、免疫複合体主導か、補体調節異常主導か、といった病態の方向性が見えやすくなります。[page:1][page:2]

びまん性増殖性糸球体腎炎とは:補体CH50とC3低下

“びまん性増殖性糸球体腎炎”を疑う導線として、健診の血尿・蛋白尿から入るケースは少なくありませんが、MPGN文脈では補体低下(CH50、C3)が強い手がかりになります。難病情報センターでは、一次性MPGNで補体(CH50、C3)の低下が特徴的で、I型の約70%に認められるとされています。[page:1][page:2]

とくに実務上覚えておきたいのが、「急性腎炎様発症+低補体が8週以上持続」した場合に本症を強く疑う、という時間軸の情報です。溶連菌感染後糸球体腎炎などでも補体は低下し得ますが、回復のタイミングがずれると鑑別の優先順位が変わります。難病情報センターでも、8週以上の持続的低補体血症が強い疑い所見として明記されています。[page:1][page:2]

補体の“どれが下がるか”も整理しておくと、病理・免疫沈着所見と結びつけやすくなります。I型/III型では免疫グロブリン沈着に加えてC3沈着がみられ、免疫複合体が主要因と説明されています。[page:1][page:2]一方で、C3沈着優位で免疫グロブリン沈着を伴わない病態はC3腎症の概念と接続し、補体系(特に第2経路)調節異常という別のストーリーが立ち上がります。[page:1]

びまん性増殖性糸球体腎炎とは:免疫複合体とC3 nephritic factor

びまん性増殖性の背景病態を理解するうえで、免疫複合体と補体活性化の“結びつき方”が要点です。一次性MPGNでは、糸球体係蹄で補体系が過剰に活性化された炎症性疾患であり、I型/III型では免疫グロブリン沈着+C3沈着がみられ免疫複合体が主要因、と整理されています。[page:1][page:2]

さらに一段深いポイントとして、I型の一部ではC3転換酵素に対する自己抗体であるC3 nephritic factor(C3NeF)が関与し、補体系第2経路の持続活性化を伴う場合がある、とされています。[page:1][page:2]C3NeFは“見つかれば説明がつく魔法の検査”のように扱われがちですが、資料でも病態との関係には不明点が多い旨が明記されています。[page:1][page:2]

ここは医療従事者向けに強調しておくべきで、C3NeF陽性=一次性確定、という単純な読み替えは危険です。二次性(感染症や免疫複合体疾患)でも補体異常は絡み得るため、最終的には腎生検を含む病理・臨床の総合で「一次性/二次性」や「C3優位かどうか」を詰める必要があります。難病情報センターでも、一次性の確定には病理基準を満たし二次性を除外することが示されています。[page:1][page:2]

びまん性増殖性糸球体腎炎とは:二次性と鑑別

びまん性増殖性の像を見たとき、鑑別の最大の山は「一次性」か「二次性」かです。一次性MPGNは明らかな原因疾患がないもの、二次性は免疫複合体疾患や感染症などに続発するもの、と整理されています。[page:1][page:2]

厚労省・難病情報センターの記載では、二次性の原因疾患として、ループス腎炎や紫斑病性腎炎などの免疫複合体疾患、B型/C型肝炎ウイルス、パルボウイルスB19、細菌性心内膜炎、シャント腎炎などの感染症、クリオグロブリンなどの異常蛋白血症、悪性リンパ腫や白血病などの腫瘍、肝硬変などが挙げられています。[page:1][page:2]このリストは、単なる「鑑別の羅列」ではなく、問診・採血・画像・感染巣検索の設計図として使うと実務で効きます。

現場の落とし穴は、腎生検で“MPGNパターン”と言われた瞬間に免疫抑制へ走り、感染症や腫瘍などの二次性を後追いにしてしまうことです。資料上も、確定診断は病理基準に加えて二次性を除外する、と明確にされています。[page:1][page:2]特に感染性心内膜炎や慢性感染は、腎所見が前に出て全身所見が目立ちにくいことがあり、臨床的な警戒が必要になります。[page:2]

びまん性増殖性糸球体腎炎とは:治療と予後(独自視点:持続低補体を“治療反応”で追う)

一次性MPGNの治療は「根拠となる十分な臨床試験成績はない」とされ、確立治療が未整備である点を前提にプランを組む必要があります。難病情報センターでは、小児I型に対して経口ステロイド(プレドニン2mg/kg隔日開始、20mg隔日維持)や、ステロイドパルス+経口ステロイド2年間の治療で、約半数に尿所見の正常化と腎機能維持が報告されたとされています。[page:1][page:2]

予後についても厳しめの記載があり、無治療の場合10〜15年で50〜60%が末期腎不全に至り、自然寛解は10%未満とされています。[page:1][page:2]また、ネフローゼ症候群、腎機能低下、高血圧、半月体、病変分布が広範、尿細管間質病変の合併などが不良な腎機能と関連するとまとめられています。[page:1][page:2]

ここから一歩踏み込んだ“独自視点”として、臨床フォローで「尿蛋白やCrの改善」だけでなく、「持続的低補体血症の推移」を治療反応の文脈に組み込む発想が有用です。難病情報センターの重症度分類でも、免疫抑制治療を行っても寛解に至らない、あるいは持続的低補体血症を伴う患者が重症側として扱われており、補体が“病態の今”を反映する可能性が示唆されています。[page:1]このため、病勢評価を尿所見だけに固定せず、CH50/C3の時系列も同じ重要度でレビューする運用(たとえば外来で「尿蛋白/Cr」「Cr/eGFR」「CH50/C3」を同一シートで追う)にすると、再燃や治療不足のサインを拾いやすくなります。[page:1][page:2]

参考:一次性膜性増殖性糸球体腎炎の概要(症状・補体低下・治療・予後)

難病情報センター:一次性膜性増殖性糸球体腎炎(指定難病223)

参考:一次性膜性増殖性糸球体腎炎の病理・診断基準(坂口分類や重症度分類)

厚生労働省:223 一次性膜性増殖性糸球体腎炎(概要・診断基準)