膝関節用装具と変形性膝関節症治療の実際

膝関節用装具と変形性膝関節症

膝関節用装具の要点
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装具の基本的な役割

膝関節用装具は、膝の安定化・免荷・アライメント矯正・疼痛軽減を目的として処方され、手術前後や保存療法の一環として位置づけられます。

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変形性膝関節症での位置づけ

変形性膝関節症では、膝関節用装具は運動療法・体重管理と並ぶ保存療法の一つとしてガイドラインに明記され、痛みの軽減や歩行能力の改善に寄与します。

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臨床での選択の難しさ

一方で、膝関節用装具には硬性・軟性・短下肢装具型・足底板併用型など多くのバリエーションがあり、障害像や活動レベルに応じた使い分けが求められます。

膝関節用装具の種類と適応疾患の整理

 

膝関節用装具は大きく、膝周囲を包むソフトサポーター、支柱を備えたヒンジ付きサポーター(軟性装具)、金属フレームを用いる硬性膝装具、短下肢装具(AFO型)として膝関節を間接的に制御するタイプなどに分けられます。

それぞれの構造と固定力の違いにより、靱帯損傷、半月板損傷、膝蓋骨不安定性、変形性膝関節症脳卒中後の膝折れなど、適応疾患と使用タイミングが変わります。

代表的な膝関節用装具のカテゴリーと適応は以下のとおりです。

  • ソフトサポーター
  • ヒンジ付きサポーター(支柱付き軟性装具)
    • アルミ製ステーやオフセットジョイントを備え、側方動揺性や軽度~中等度の不安定性をコントロールします。kyo-spo+1​
    • 前十字靱帯・内側側副靱帯損傷などの保存療法、術後リハビリ初期から中期に使用されることが多いです。pmc.ncbi.nlm.nih+1​
  • 硬性膝関節用装具
    • 大腿と下腿を金属フレームで連結し、高い固定力で膝全体の靱帯に対応しつつ、アライメント矯正や免荷を行います。arfit+1​
    • 変形性膝関節症(特に内側型)の荷重線コントロールや高度な不安定性に対し、アンローダー型装具が選択されます。fuelcells+1​
  • 短下肢装具型(AFO型)膝関節用装具
    • Agilium Freestepのような膝OA用短下肢装具は、足部から床反力ベクトルを操作することで膝内側コンパートメントの荷重を減らすユニークな設計です。semanticscholar+1​
    • 膝関節自体を大きく覆わないため、通気性や装着感に優れ、高齢者でも受容されやすいと報告されています。ottobock+1​
  • 膝蓋骨周囲をターゲットとした装具
    • パテラスタビライザーや膝蓋靱帯圧迫帯は、膝蓋骨亜脱臼、不安定性、オスグッド病などに用いられます。kyo-spo+1​
    • 膝蓋骨アライメントを動的に誘導するパテラプロなどは、屈曲伸展に伴う膝蓋骨軌跡を調整し、前膝部痛を軽減します。

      参考)装具 : 股関節 / 膝関節

    臨床では、一つの膝関節用装具で複数の目的を同時に果たそうとするよりも、優先すべき治療目標(疼痛軽減か、アライメント矯正か、歩行安定性か)を明確にして選択することが重要です。pmc.ncbi.nlm.nih+1​

    膝関節用装具と免荷機構・アライメント矯正のメカニズム

    変形性膝関節症用の膝関節用装具では、「免荷(off-loading)」と「アライメント矯正」がキーワードになります。

    内側型変形性膝関節症では、膝内反変形に伴い内側コンパートメントへの荷重が増え、歩行時の膝外反モーメント(膝外反モーメントとして測定されることもある膝内外反モーメント)が痛みや進行と関連するとされます。

    OA Fantasyなどの変形性膝関節症用装具は、膝関節の外側に支柱を配置し、バンドやパッドで三点支持を作ることで内側関節裂隙の荷重を減らすよう設計されています。jstage.jst+1​

    三点支持構造は、近位・遠位・対側に力点を配置することで、膝関節に外反方向のモーメントを与え、荷重線をより外側へ移動させる働きを持ちます。semanticscholar+1​

    近年報告された新しいパテラテンションベアリング型ブレースでは、荷重を脛骨から膝蓋腱経由で逃がすオフローディング機構を搭載し、荷重量を定量的に評価できるように工夫されています。

    参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11336054/

    このような設計により、脛骨への荷重負担を段階的に変化させ、骨折後や軟骨損傷後の荷重制限を客観的に管理しうる可能性が示されています。

    また、床反力を利用したSLB膝装具では、足部の位置やシェルの形状を工夫することで、立脚期の床反力ベクトルを膝関節前方に通し、膝過伸展や膝折れを制御するよう設計されています。

    参考)https://www.semanticscholar.org/paper/17190695b82ddf04a6e867d8243a60891084012a

    床反力制御型AFOや短下肢装具と組み合わせることで、膝関節用装具単体では得られない立脚期の安定性を補完できる点は、臨床であまり知られていないポイントです。lowbackpain+1​

    膝関節用装具と変形性膝関節症ガイドライン・リハビリテーション

    日本整形外科学会の変形性膝関節症診療ガイドラインでは、運動療法・体重管理・患者教育を中心とした保存療法が強く推奨され、装具療法は特定の患者に対して痛み軽減や歩行改善が期待できる補助的治療として位置づけられています。

    外側楔型足底板や膝関節用装具により膝への負担を調整し、関節の安定性を高めることで、鎮痛薬の使用量を減らせる可能性も指摘されています。

    リハビリテーションの観点からは、膝関節用装具の処方後に以下の点を系統的に評価することが勧められます。

    • 疼痛評価
      • VASやNRSを用いて歩行時・起立時の疼痛を装具装着前後で比較します。pmc.ncbi.nlm.nih+1​
    • 歩行機能評価
      • 10m歩行、TUGテスト、6分間歩行などで、歩行速度や歩行距離の変化を見ることで、装具による運動耐容能の改善を評価します。lowbackpain+1​
    • 関節可動域と筋力
      • 硬性膝関節用装具では過度な固定による筋萎縮や可動域制限を避けるため、可動域制御ヒンジを活用し、必要最小限の制限にとどめることが重要です。arfit+1​
    • バランス・転倒リスク
      • 高齢者では装具重量やかさばりによる転倒リスク増大を避けるため、短下肢装具型や軽量素材の装具を検討し、歩行環境評価も並行して行います。pmc.ncbi.nlm.nih+1​

      膝OA患者向けに開発されたカスタムヒンジ付き膝関節用装具の研究では、膝外反モーメントを抑制しつつ、遊脚期の膝屈曲角度を確保できる設計が報告されており、歩容改善と疼痛軽減の両立が可能であることが示されています。

      参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4361511/

      このように、装具を単なる固定具としてではなく、「荷重線とモーメントをデザインするリハビリツール」と捉える視点を共有することで、理学療法士作業療法士と義肢装具士、医師との連携がスムーズになります。semanticscholar+1​

      膝関節用装具のフィッティングとトラブルシューティング

      膝関節用装具は、適応が正しくてもフィッティングが不十分であれば、疼痛増悪や皮膚トラブル、使用中断につながります。

      特に三点支持型の変形性膝関節症用装具や短下肢装具型の膝OA装具では、パッド位置やストラップテンションの微調整が装具効果に直結します。

      臨床で押さえておきたいフィッティングのポイントは次の通りです。

      • 関節軸合わせ
        • 膝継手の軸と解剖学的膝関節軸のずれは、皮膚トラブルや装具ずれの原因となるため、膝蓋骨中心や大腿骨内外顆をランドマークに確認します。semanticscholar+1​
      • パッド・ストラップの圧分布
        • 局所的な圧迫を避けるため、広い面積で圧力を分散させ、特に腓骨頭や膝蓋骨周囲には過度な圧がかからないよう調整します。pmc.ncbi.nlm.nih+1​
      • 皮膚管理
        • 高齢者や糖尿病患者では、装具と皮膚の間に薄いスリーブを挟むことで摩擦を減らし、発赤・水疱・褥瘡のリスクを低減させます。pmc.ncbi.nlm.nih+1​
      • 日常生活動作での試行
        • 歩行だけでなく、椅子からの立ち座り、階段昇降、トイレ動作など、患者の日常生活で頻度の高い動作を一緒に確認し、ストラップの締め具合やロック機構を最適化します。fuelcells+1​

        意外なポイントとして、短下肢装具型の膝関節用装具では、靴との組み合わせが装具効果に大きく影響します。

        ヒール高やソール剛性が変わると床反力ベクトルの方向が変化し、結果として膝OA装具の免荷効果が変動するため、評価時と同じ種類の靴を日常でも使うよう指導することが重要です。semanticscholar+1​

        膝関節用装具の未来:センサー内蔵・短下肢装具型の新展開

        近年、装具全般の領域では、圧力センサーや荷重センサーを組み込んだ「スマート装具」の開発が進んでおり、脊柱側弯症用装具ではFBGセンサー内蔵ニットウェアにより装着圧の分布をリアルタイムでモニタリングする試みが報告されています。

        膝関節用装具でも、同様の技術を応用することで、三点支持の圧力バランスや免荷量を客観的に可視化し、フィッティングの質を標準化できる可能性があります。

        また、Agilium Freestepのような膝OA用短下肢装具は、「膝を直接覆わずに膝関節を治療する」という発想の転換を示しており、膝関節用装具の概念を拡張しています。semanticscholar+1​

        高齢者では、体幹保持やバランス能力の低下により、従来の膝装具では着脱や装着継続が難しいケースも多く、足部から膝への床反力をコントロールする発想は、装着コンプライアンスを高める一つの解決策となり得ます。pmc.ncbi.nlm.nih+1​

        さらに、カスタムメイドのヒンジ付き膝関節用装具では、3Dモーションキャプチャや有限要素解析を用いて、患者個々の歩行パターンと関節荷重に合わせたデザインを行う研究も報告されています。pmc.ncbi.nlm.nih+1​

        将来的には、歩数計や加速度センサーを統合した膝関節用装具が、日常生活での使用時間や活動量データを医療者にフィードバックし、遠隔モニタリングとリハビリテーションプログラムの個別最適化に貢献することが期待されます。mdpi+1​

        変形性膝関節症用装具“OA Fantasy”が膝関節キネマティクスに及ぼす効果に関する研究では、免荷型膝関節用装具により膝屈曲角度や関節モーメントの変化が認められたと報告されています。semanticscholar+1​

        変形性膝関節症用装具“OA Fantasy”の膝関節キネマティクスへの影響に関する論文(日本理学療法士協会学術大会抄録)

        膝OA患者に対するカスタムメイドヒンジ付き膝関節用装具の効果を検討した研究では、従来のヒンジ付き装具と比較して膝外反モーメントの減少と歩行時疼痛の改善が示されています。


        カスタムメイドヒンジ付き膝関節用装具の歩行解析研究(英文・オープンアクセス)

        日本語で変形性膝関節症における装具療法と運動療法の位置づけを整理した解説では、装具があくまで運動療法や生活指導と組み合わせて用いられるべきことが強調されています。semanticscholar+1​

        変形性膝関節症患者向け診療ガイドラインのわかりやすい解説記事(保存療法・装具療法の位置づけの参考)

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