手関節用装具とコックアップ・スプリントの適応と固定

手関節用装具とコックアップ・スプリント

手関節用装具の臨床要点
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適応を先に決める

疼痛・炎症の安静固定、ギプス固定除去後の保護、橈骨遠位端骨折の不全骨折、手根管症候群の夜間痛など「目的」で装具を選びます。

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固定肢位で効果が変わる

手関節の固定角度や、母指・MP関節を含めるかで、疼痛軽減と作業性、神経・腱への負荷が変化します。

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装着指導が治療成績を左右

夜間のみか日中もか、皮膚トラブルのセルフチェック、しびれ増悪時の対応まで説明して、漫然装着を避けます。

手関節用装具の適応とコックアップ・スプリント

 

手関節用装具の中でも、コックアップ・スプリントは「手関節を固定して安静を確保する」ことに強みがあり、手関節の疼痛・炎症時の安静固定に用いられます。

臨床でよく遭遇する適応として、ギプス固定除去後間もない橈骨遠位端骨折の手関節保護、橈骨遠位端骨折の不全骨折に対する安静固定が挙げられます。

また、手根管症候群では夜間痛の軽減を目的に、過度な掌屈・背屈を抑える形で使用されることがあります。

この「適応(目的)」が曖昧なまま装着すると、固定が過剰になり拘縮や筋力低下を招いたり、逆に固定不足で疼痛が持続したりと、装具の価値が下がります。

医療従事者向けに整理すると、適応は次のように「病態×ゴール」で言語化すると運用が安定します。

  • 疼痛・炎症:手関節の安静固定(短期集中で鎮痛と炎症沈静を狙う)。
  • 外傷後:ギプス除去後の保護、または不全骨折の保護(再受傷の回避と段階的復帰)。
  • 神経症状:手根管症候群の夜間痛軽減(睡眠中の肢位による神経圧迫を避ける)。

    参考)https://ar-ex.jp/disease/disease-1051/

ここで重要なのは、「どの構造物を休ませたいのか」を明確にすることです。例えば腱鞘炎や関節炎であれば“炎症のある部位にストレスをかける関節運動を止める”こと、手根管症候群なら“手根管内圧が上がりやすい肢位を回避する”ことが狙いになります。

手関節用装具の固定とギプス固定除去後

ギプス固定除去後は、骨癒合が進んでいても軟部組織(関節包、靭帯、筋腱)の耐性が戻っていないことが多く、コックアップ・スプリントで「守りながら動かす」期間を作るのが現実的です。

手関節を固定する装具は、痛みが強い動作や不意の衝撃から手関節を保護する一方で、長時間・長期間の連続使用は可動域制限や巧緻性低下につながり得ます(装具は治す道具というより、回復を阻害しない範囲で負荷を調整する道具)。

そのため、ギプス固定除去後の運用では「装具を外す時間」をリハ介入の中に設計しておくと、患者の理解と遵守が上がります。

実務では、次のような確認項目をカルテテンプレ化すると、装具の“出しっぱなし”を防げます。

  • 装着目的:保護(再受傷予防)か、疼痛軽減か、夜間対策か。
  • 装着時間:常時なのか、作業時のみか、夜間のみか。​
  • 解除条件:疼痛VAS、腫脹、圧痛、握力・つまみ力、日常動作(更衣・書字)など、何が改善したら段階的に短縮するか。

意外に見落とされやすいポイントとして、ギプス除去直後は皮膚の乾燥や角質肥厚、感覚過敏があり、装具の縁の当たりが小さな刺激でも苦痛になりやすいことがあります。

装具のパッド調整や、皮膚チェック(発赤が30分以上残るか、びらんがないか)を“最初の1週間は毎日”など具体化すると、トラブルを早期に潰せます。

手関節用装具の疼痛・炎症と安静固定

手関節の疼痛・炎症に対する安静固定は、症状を落ち着かせるための王道ですが、「固定すればするほど良い」ではありません。

コックアップ・スプリントは手関節を固定して安静を作れる一方、固定が過度だと関節のこわばり(特に背屈・掌屈だけでなく橈屈・尺屈の“逃げ”も減る)や、手指の巧緻運動低下が起きやすくなります。

したがって疼痛・炎症期の装具療法は、鎮痛(安静)と機能維持(必要最小限の運動)の綱引きを臨床側が設計する必要があります。

現場で使いやすい運用例(あくまで一般的な考え方)を挙げます。

  • 急性増悪(強い痛み・腫れ):短期間は装具装着時間を多めにし、疼痛が落ちたら「活動前後のみ」「家事のみ」へ段階的に移行する。
  • 慢性の疼痛(負荷で悪化):負荷が集中する作業(PC、育児、工具使用)に限定して装着し、非装着時のフォーム修正や作業分割をセットで指導する。​

また、同じ“手関節の痛み”でも、原因が関節由来か腱由来か、神経由来かで、装具の設計思想が変わります。

手根管症候群のようにしびれが関与するケースでは、装具で症状が悪化(しびれ増悪、夜間覚醒の増加)する場合があるため、患者が自分で中止・相談できる基準を事前に共有しておくと安全です。

手関節用装具の手根管症候群の夜間痛

手根管症候群では、装具療法(スプリント・サポーター)として、夜間や特定の作業時に手首を過度に曲げたり反らせたりしないよう固定する方法が紹介されています。

特に夜間に装着することで、睡眠中の神経圧迫を防いで明け方のしびれや痛みを軽減するのに有効とされます。

コックアップ・スプリントの適応の一つとしても、手根管症候群の夜間痛軽減が挙げられており、手関節固定をどう活かすかがポイントになります。

医療従事者としては、装具を処方・推奨する前に「どの指がしびれるか」「夜間・明け方優位か」「手関節肢位で変化するか」といった症状のパターンを取り、装具の目的が“夜間の肢位対策”であることを明確にすると説明が通ります。

また、夜間のみ装着としても、装具の締め付けが強いと逆に循環障害や正中神経周囲の圧迫感を訴えることがあるため、ベルクロの締め具合・指先の色調・冷感をセルフチェック項目に入れておくと実装しやすいです。

手根管症候群は装具だけで完結する治療ではなく、薬物療法や注射療法など他の選択肢も併記されることが多いので、装具は「症状コントロールの一手段」として位置づけると過度な期待を抑えられます。

手関節用装具の独自視点:手背屈装具と作業設計

“装具を着ける”介入は、実は「作業の設計」を同時に変えると効果が出やすく、これは検索上位の一般的な解説では薄くなりがちな視点です。

コックアップ・スプリントは手関節を固定して痛みを抑えられますが、その代償として前腕回内外や肩の代償運動が増え、別部位(肘外側、肩前方)に負担が移ることがあります。

そこで、装具のフィッティング確認と同じくらい「その人の一日の作業」を観察し、手関節の反復ストレスを減らす工夫(道具の柄を太くする、作業面の高さを変える、休憩をタイマーで強制する)をセットにすると、装具への依存を減らしやすくなります。

臨床で使える“作業設計チェック”の例です(患者説明にも転用しやすい形)。

  • PC作業:キーボード位置を下げ、手関節を反らし続けない高さに調整する(夜間痛がある人ほど日中の肢位が重要)。​
  • 家事:フライパンや鍋の持ち上げは両手化し、片手で手関節にトルクをかける動作を減らす。
  • 育児・介護:抱き上げ時に手関節ではなく前腕全体で支える持ち方へ誘導し、手関節の尺屈・背屈の複合ストレスを避ける。

さらに「意外な情報」として、近年は“柔らかいロボティクス”を用いた手関節ブレースの研究も進んでおり、従来の固定一辺倒ではなく、必要なときに補助力を出す発想が登場しています(臨床実装はこれからですが、装具の未来像としては示唆的です)。

参考)https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/frobt.2021.614623/pdf

こうした流れを知っておくと、患者が「ずっと固定しないと悪化するのでは」と不安を語ったときに、「固定」と「支援」は別概念で、段階的に“支援量を減らす”方向へ持っていける説明がしやすくなります。


手の治療専門サイトのスプリント紹介(コックアップ・スプリントの適応がまとまっている):https://www.hand-orth.com/equipment/splint.html
酒井医療の各種スプリント解説(手関節を固定するサーカムカックアップ・スプリントの適応がまとまっている):https://www.sakaimed.co.jp/knowledge/hand-therapy/splint/splint02/
ソフトロボティクス手関節ブレース研究(固定ではなく補助を行う新しい発想の参考):https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/frobt.2021.614623/pdf

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