手指スプリント
手指スプリントの適応と目的(固定・支持/保護・予防/矯正)
手指スプリントは「どの組織を、どの方向に、どの程度、どれくらいの時間」コントロールするかを医療側が設計する介入で、同じ“指の装具”でも狙いが違えば形状も装着指示も変わります。
代表的な目的は、炎症や損傷部の安静を狙う固定・支持、異常感覚や変形進行を抑える保護・予防、拘縮に低負荷で長時間ストレスを与える矯正(静的・漸次静的・動的)などに整理できます。
臨床で見落としやすいのは「矯正は万能ではない」点で、関節内病変が強いケースでは矯正力が関節症性変化を悪化させ得るため、適用と負荷設定を慎重にする必要があります。
- そのスプリントは「痛み軽減」か「変形予防」か「可動域拡大」か、1つに言語化できるか。
参考)http://arxiv.org/pdf/2312.13770.pdf
- 固定が必要な関節と、動かして拘縮予防したい関節が混在していないか(例:骨折固定中のIPは運動可、など)。
- 装着時間は「常時」か「夜間のみ」か「活動時のみ」か、理由込みで説明できるか。
手指スプリントの代表例(スタックスプリント/サーカムフィンガー・スプリント/スワンネック・スプリント)
手指スプリントは疾患別に定番があり、例えばスタックスプリントは槌指(マレット指)でDIP関節伸展不全を伸展位保持する目的で用い、連続装着の目安が「通常8週間」と解説されています。
PIP関節の疼痛・炎症、捻挫や不安定性の安静固定にはサーカムフィンガー・スプリントが挙げられ、PIP関節は任意角度で固定できる一方、屈曲固定は最大でも30°程度までが望ましいとされています。
スワンネック変形にはスワンネック・スプリントが用いられ、PIP過伸展を抑制し、PIP 0°の伸展制限を目指す場合は作製時に30°屈曲位で作るという具体的目安が提示されています。
現場で役立つ“型選び”のコツ
- DIPの背側腫脹が強くスタックスが痛い場合、別形状(シェル・スプリントなど)を検討するという考え方が紹介されています。
- 「固定しすぎ」は拘縮や機能障害につながるため、目的関節以外の自由度(MPを殺さない、など)を設計段階で確認します。
- 既製品か熱可塑性材カスタムかは、変形の程度・皮膚状態・装着時間・患者の作業内容で変わります(“きれいに装着できるか”は治療成績に直結)。
手指スプリントのマレット指:固定期間と患者指導(連続装着)
マレット指の保存療法は、DIP関節を伸展位で不動化するスプリントが基本で、一般向け情報でも「通常6〜8週間、24時間装着」が必要とされる説明が見られます。
手指スプリントの治療成績を左右するのは、医学的には単純でも運用が難しい「連続性」で、清拭や装具交換の“一瞬の屈曲”が治療期間延長につながり得るため、患者が失敗しない手順設計が重要です。
臨床では、装着継続を妨げる要因として皮膚の浸軟や不快感が問題になりやすく、快適性と皮膚管理は単なるQOLではなくアドヒアランス確保の中核課題になります。
指導で入れておくと強い要点
- 「外していい時間」ではなく、「曲げてはいけない動作」を具体化(入浴、着替え、スマホ操作、寝返りなど)。
参考)マレットフィンガー|固定の期間とコツ – 横須賀市|鍼灸整骨…
- 皮膚チェックの観察項目を固定化(発赤が戻るまでの時間、白色化、しびれ、痛み)。
参考)【2024年版】脳卒中・片麻痺患者向け手装具/スプリントの使…
- DIP以外(PIP/MP)を動かしてよいか、運動の許可範囲を明示し拘縮を予防する。
手指スプリントのスワンネック変形:PIP過伸展抑制とリング型
スワンネック変形では、PIP過伸展を制限しつつ機能(把持や巧緻動作)を残す発想が重要で、リング型スプリントはPIP過伸展を抑えDIP屈曲を補助する目的で一般的に用いられると説明されています。
一方で、同じ“過伸展抑制”でも、固定角度の設定や装着タイミング(活動時中心か、夜間中心か)で狙いが変わるため、痛み・不安定性・変形の可逆性(矯正可能か)を評価して選択します。
作製面では、PIP 0°の伸展制限を目指すなら作製時は30°屈曲位で、という具体的な作製目安が提示されており、経験が浅い段階の“基準点”として有用です。
見落としやすい臨床ポイント
- PIPを止めてもDIPの使い方が変わるため、日常動作(つまみ、ペン、ボタン)での試着評価が必要です。
参考)スワンネック変形にはどのような装具を使いますか? |スワンネ…
- 皮膚トラブルはリング周囲に集中しやすく、サイズ・当たり・浮腫変動を見越した再評価を組み込みます。
- “変形が強いほど強く止める”は逆効果のことがあり、目的(痛み・支持・変形予防・機能)を再確認します。
手指スプリントの独自視点:3Dプリントのカスタムと装着不耐の回避(意外な落とし穴)
近年は、指スプリントを3Dプリントで個別最適化する報告があり、マレット指で「安価・有効・快適」な代替になり得るという趣旨の論文も公開されています。
意外な落とし穴は「形が合っても、皮膚がもたない」ことで、既製品よりフィットしていても通気性・湿潤・エッジ形状・清掃性が悪いと浸軟や疼痛が出て中断につながり、結果として治療失敗を招きます。
スプリント療法の原理として“全面接触の原理(局所圧を避ける)”が重要とされており、3Dプリントでも同様に、局所圧を作らない面設計とエッジ処理、装着下の皮膚観察ルールが不可欠です。
導入時の現実的な提案
- まずは従来の熱可塑性材で「治療目標と装着計画」を固め、3Dプリントは“継続できない症例の打開策”として使う。pmc.ncbi.nlm.nih+1
- 清拭・乾燥のしやすさを要件化(患者が毎日回せる運用に落とす)。
- スプリントが原因の皮膚障害リスク(圧迫・潰瘍)を説明し、毎回の皮膚確認を標準手順にする。
権威性のある日本語の参考リンク(各種スプリントの適応と作製目安:スタックス、サーカムフィンガー、スワンネック等)
権威性のある日本語の参考リンク(スプリント療法の目的分類と原理:3点固定・全面接触・素材選択など、設計思考の基礎)

論文(装着不耐の論点:皮膚合併症や快適性がアドヒアランスに影響し、3Dプリント・カスタムが選択肢になり得る)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8062141/

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