乾燥性角結膜炎ドライアイ
乾燥性角結膜炎ドライアイの定義と診断基準(BUT)
乾燥性角結膜炎(keratoconjunctivitis sicca)は、従来「涙液減少=乾く病態」を強く想起させる名称ですが、現在のドライアイは「涙液層の安定性低下」を中心に据えた概念へ移行しています。
https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/dryeye_guideline.pdf
日本の2016年版の診断基準では、①眼不快感や視機能異常などの自覚症状、②BUT(涙液層破壊時間)5秒以下を両方満たす場合にドライアイと確定します。
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重要なのは、角結膜上皮障害(染色スコア)やSchirmer試験低値が「必須条件」ではなくなった点です。
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この変更は「軽症が増えた」という単純な話ではありません。BUT短縮のみでも、角結膜上皮障害を伴う例と同様に強い自覚症状・視機能異常を呈しうることが背景にあり、従来“疑い”で止まっていた層の取りこぼしを減らす狙いがあります。
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医療者向けには、問診での「乾く」だけでなく、霧視(見え方が不安定)、羞明、眼疲労、痛み、異物感、流涙など幅広い訴えを“ドライアイの症状群”として拾う姿勢が重要になります。
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乾燥性角結膜炎ドライアイの検査(角結膜上皮障害)
臨床では、BUT測定に加えて、角結膜上皮障害の評価(フルオレセイン染色など)を組み合わせることで、重症度・治療反応性・鑑別の質が上がります。
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ガイドライン上も、ドライアイの診療は問診→一般検査→細隙灯での他覚所見→涙液検査や角結膜上皮の検査を補助的に用いる流れで整理されています。
ただし、現場でありがちな落とし穴は「所見が軽いから軽症」と決め打ちしてしまうことです。BUT短縮型のように上皮障害が目立たないのに苦痛が強い群があり、視機能(特に“見え方の質”)低下を強く訴える場合があります。
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また、乾燥性角結膜炎という言葉に引っ張られて涙液量(Schirmer)だけを重視すると、涙液量が保たれた蒸発亢進・水濡れ性低下・摩擦関連の病態を見逃しやすくなります。
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乾燥性角結膜炎ドライアイの治療(ヒアルロン酸)
点眼治療の土台として、人工涙液点眼は「実施することを提案」、ヒアルロン酸点眼は「実施することを推奨」と整理されています。
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ここでの実務的ポイントは、ヒアルロン酸を“単なる保湿”ではなく、角膜障害・症状の改善を狙う基本薬として位置づけ、治療反応を見ながら次の手札(分泌促進、粘膜保護、涙点閉鎖など)を上乗せすることです。
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加えて、点眼内容だけでなく“点眼の害”も管理対象です。ガイドラインでは塩化ベンザルコニウム無添加点眼が症状・所見の改善を促す場合があるとして治療選択肢に挙げています。
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患者背景(緑内障点眼の長期使用、アレルギー点眼の多剤併用、CL装用など)があると、眼表面負荷が積み上がり、乾燥性角結膜炎ドライアイが治りにくい構図になり得るため、処方整理(ミニマム処方、剤形変更、防腐剤回避)も治療の一部として説明すると納得度が上がります。
乾燥性角結膜炎ドライアイの治療(ジクアホソルナトリウム)
ジクアホソルナトリウム点眼は、従来治療(人工涙液・ヒアルロン酸)と比べて自覚症状や上皮障害の改善が示され、治療の選択肢として推奨されています。
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乾燥性角結膜炎ドライアイの“量”だけでなく“質(安定性)”の問題が前面に出た現在、ジクアホソルナトリウムのように涙液層の安定化に寄与しうる薬剤を早期から検討できるのは、日本の診療の強みです。
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処方設計のコツは、「乾燥感が主訴か」「見え方が不安定か」「夕方増悪か」「VDTで悪化か」「コンタクト装用で破綻するか」など、患者の生活シーンで症状が破綻する瞬間を具体的に聞き取り、涙液層の不安定を疑う状況でジクアホソルナトリウムを位置づけることです。
また、点眼のみで押し切らず、VDT作業・喫煙など生活因子が危険因子になりうる点もガイドラインで触れられているため、環境介入(加湿、休憩、瞬目の意識化、コンタクトの運用見直し)を“治療成分”として指導すると再診時の改善率が上がりやすいです。
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乾燥性角結膜炎ドライアイの独自視点(摩擦亢進)
乾燥性角結膜炎ドライアイの説明が「乾く→傷つく」で止まると、異物感や痛み、開瞼困難など“乾燥感ではない”主訴の説明が難しくなります。
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ガイドラインの病態生理の総説では、開瞼中の涙液層不安定だけでなく、瞬目時の「摩擦亢進」という別の悪循環を導入することで、異物感などの症状を説明できると整理されています。
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臨床的に“意外と効く”のは、患者説明に摩擦の概念を入れることです。例えば「目が乾く=水分が足りない」だけでなく、「まばたきのたびに表面がこすれて刺激が増幅する」経路を提示すると、点眼継続や生活調整の動機づけが強くなります。
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さらに、摩擦亢進の視点は、ドライアイ関連疾患(例:Lid-wiper epitheliopathy、上輪部角結膜炎、糸状角膜炎、結膜弛緩症など)を“別物”として放置せず、同じフレームで評価・治療強化へつなげる導線になります。
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実装例として、以下のように診療メモ化するとチームで共有しやすくなります。
・症状が強いのに上皮障害が軽い:BUT短縮型、涙液層不安定、摩擦要因を疑う。
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・異物感、瞬目痛、開瞼困難が前景:摩擦亢進関連(LWE等)を想定し、点眼追加だけでなく眼表面負荷(防腐剤、点眼乱用、CL、乾燥環境)を同時に減らす。
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・重症例や背景疾患が疑わしい:Sjögren症候群など全身評価も視野に入れ、治療を段階的に強化する。
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臨床の根拠として参照しやすい日本語一次資料(診断・治療推奨、リスク因子、用語解説がまとまっている)。
推奨(ヒアルロン酸、ジクアホソルナトリウム、レバミピド、涙点プラグ、防腐剤無添加など)と病態生理(涙液層不安定、摩擦亢進、BUT短縮型の位置づけ)が詳しい。
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