胸膜炎 治療 ガイドライン 肺炎 胸水

胸膜炎 治療 ガイドライン

胸膜炎 治療 ガイドライン:臨床で外さない要点
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まず「原因分類」で治療が決まる

胸膜炎は感染症・悪性腫瘍・結核など背景が多彩で、抗菌薬だけでは不十分なケースがある。

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胸水評価は「穿刺で確定」する

画像で胸水があれば、適応を見極めて胸腔穿刺→pH/糖/培養などで複雑性や膿胸を見抜く。

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ドレナージと外科のタイミングが転帰を左右

膿胸ではドレナージ不十分のまま抗菌薬だけで粘ると遷延化しやすく、早期介入が重要。

胸膜炎の原因と診断:胸水・肺炎・結核の鑑別

 

胸膜炎は「胸膜に炎症が起き、胸水(浸出液)が胸腔内に貯留して胸痛や呼吸困難を来す状態」で、原因は感染症や悪性腫瘍が代表です。

日本では、癌性胸膜炎と結核性胸膜炎が多く、全体の60〜70%を占めるとされ、地域性(疫学)を意識した鑑別が必要になります。

臨床の入り口では「胸痛+発熱=感染症寄り」「呼吸困難優位=悪性腫瘍寄り」という症状パターンがヒントになりますが、確定は胸水や胸膜の検体で行います。

胸水が確認されたら、胸腔穿刺で得た検体を、細胞診(悪性)、塗抹/培養(細菌)、結核の評価(施設の検査系に応じて)へつなげ、治療の方向性を早期に固定するのが安全です。

「意外に見落としやすい」点として、肺炎随伴性胸水(parapneumonic pleural effusion)は肺炎の一部所見として流されやすい一方、時間経過で複雑性胸水〜膿胸へ連続的に進展しうる病態です。

参考)胸水 – 05. 肺疾患 – MSDマニュアル プロフェッシ…

そのため、画像上の胸水が「少量だから」と安心せず、臨床経過(抗菌薬開始後の熱型、炎症反応、呼吸状態)と合わせて、穿刺すべき胸水なのかを見極める必要があります。

胸膜炎の検査:胸水pH・グルコースとドレナージ適応

感染性(肺炎随伴性胸水〜膿胸)の領域では、胸水pHとグルコースが「ドレナージの必要性」を判断する強い材料になります。

MSDマニュアル(プロフェッショナル版)では、肺炎随伴性胸水/膿胸で予後不良因子として「pH<7.20、グルコース<60mg/dL、グラム染色または培養陽性、小房形成(loculation)」を挙げ、胸腔穿刺または胸腔ドレナージで排出すべきとしています。

臨床実務では、胸水pHの測定手技がブレると判断もブレるため、採取後の取り扱い(血液ガス的な扱いをする等)は施設内で標準化しておくと事故が減ります(検体エラーで「pHが高く見える」など)。

参考)http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-140804-nerima.pdf

また、超音波で隔壁(多房化)を示唆する所見があれば、単純穿刺だけで済ませず、ドレーンの留置位置・本数や、早期外科相談まで含めた設計が重要です。

鑑別の観点では、pH<7.20は「感染性=膿胸が多い」一方で、膠原病関連胸膜炎や結核性胸膜炎でも低pHを示し得るため、胸水全体の文脈(細胞分画、ADA、画像、全身所見)で読み解く必要があります。

参考)https://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/disease/index.cgi?c=disease-2amp;pk=33amp;sp=1

この“例外の存在”を知っているだけで、「pH低い=即ドレーン一択」と短絡しにくくなり、過剰侵襲と治療遅延の両方を避けやすくなります。

胸膜炎の治療:抗菌薬・ドレナージ・外科の順序

胸膜炎治療の中心は原因治療で、感染症なら原因病原体に有効な抗菌薬、悪性腫瘍なら有効な抗がん剤を基本に、胸水量が多ければ排液を併用します。

感染性胸膜炎(肺炎随伴性胸水〜膿胸)で重要なのは、「抗菌薬だけで治す」発想に固執せず、胸腔内の感染巣(膿・隔壁)を“物理的に減らす”戦略を早期からセットで考えることです。

外科領域のエビデンス整理として、日本呼吸器外科学会の「膿胸治療ガイドライン」では、急性膿胸に対して掻爬術(剥皮術を含む)を行うよう強く推奨しています(推奨の強さ:強い推奨、エビデンスの強さ:中)。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/f8ef71bb13349c1e2cbdb7f92c99b77dc0656bc9

同ガイドラインは、急性膿胸の分類としてAmerican Thoracic Societyの病理学的分類(滲出性期・線維素膿性期・器質化期)を採用しており、病期の進行を前提に「どの段階で外科を入れるか」が転帰に響く構造になっています。

一方で、線維素溶解剤の胸腔内投与(いわゆる胸腔内線溶療法)は、同ガイドラインでは「推奨度決定不能で保留」とされ、国内では適応外使用の扱いである点も臨床的に大切です(施設内倫理審査委員会の承認などの論点が生じる)。

つまり「ドレナージ不十分→次は何を上乗せするか」の局面で、薬剤で粘るのか、外科介入へ踏み切るのかは、エビデンスだけでなく制度面・施設体制も含めた判断になります。

胸膜炎のガイドライン実装:膿胸・胸腔鏡・タイムライン

膿胸治療ガイドラインの序文では、国内の膿胸手術数が漸増傾向で、高齢化や肺炎、免疫抑制療法患者の増加などが背景要因として挙げられています。

この現実は、現場で「高齢・フレイル・併存疾患あり」の膿胸患者に頻繁に遭遇することを意味し、単純な教科書的フローよりも“タイムライン管理”が重要になります。

具体的には、抗菌薬開始後も発熱が遷延、CRPが高止まり、胸水が増える、エコーで隔壁が見える、呼吸状態が改善しない――このような局面で「いつ再評価して、いつ胸部外科へ相談するか」をあらかじめ合意しておくと、治療が遅れにくくなります。

ガイドライン本文では、ドレナージ単独よりも胸腔鏡下手術(VATS)を含む外科介入が成績を改善しうるデータが引用されており、早期介入が推奨される文脈が明確です。

また、同ガイドラインでは「発症からおおむね3か月以内を急性、以降を慢性」とする日本結核病学会の考え方にも触れつつ、海外文献との“用語のズレ”を説明しています。

このズレは、論文検索や紹介時に誤解を生みやすいポイントで、カンファレンス資料では「acute/chronic=期間なのか病理病期なのか」を明示すると、チーム内の意思決定が揃いやすくなります。

胸膜炎の独自視点:癌性胸膜炎と胸膜癒着術の落とし穴

癌性胸膜炎では、胸水を抜くだけでは再貯留を繰り返すことがあり、状況に応じて胸膜癒着術を行う場合があります。

ただし、胸膜癒着術は「胸水をゼロにする魔法」ではなく、肺の再膨張が得られない状況(いわゆるnon-expandable lungが疑われる状況など)では満足な結果が得にくいことが臨床上の落とし穴になります(実際には胸膜圧や画像・内視鏡所見、呼吸困難の機序も含めて評価が必要)。

もう一つの“意外な実務論点”は、感染性胸水と悪性胸水が同時に疑われるケースです(例:腫瘍性病変がある患者の肺炎合併)。

この場合、抗菌薬の最適化と胸水コントロールを優先しつつ、細胞診や胸膜生検のタイミングを逃さないよう、検体提出の段取りを最初の穿刺時点で設計しておくと再穿刺を減らせます。

権威性のある日本語の参考リンク(胸膜炎の原因分類・症状・診断・治療の全体像)。

一般社団法人 日本呼吸器学会:胸膜炎(原因、症状、診断、治療の概説)

権威性のある日本語の参考リンク(膿胸治療のCQ、推奨、エビデンス、手術・線溶療法の位置づけ)。

日本呼吸器外科学会:膿胸治療ガイドライン(PDF)

必要に応じて引用できる関連論文(ガイドライン内で重要根拠として扱われる胸腔内療法)。

Rahman NM, et al. Intrapleural use of tissue plasminogen activator and DNase in pleural infection. N Engl J Med. 2011

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