成人発症スティル病と診断基準と鑑別診断

成人発症スティル病と診断基準

成人発症スティル病 診断基準の要点
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基本は山口基準+除外診断

「大項目2つ以上+合計5項目以上」かつ感染症・悪性腫瘍・膠原病を除外して判断します。

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検査はフェリチンだけで決めない

フェリチン高値は強いヒントですが非特異的です。糖鎖フェリチンや経時変化、他疾患の除外が重要です。

⚠️

重症合併症を見逃さない

血球貪食症候群(MAS/HPS)やDICは致命的になり得ます。疑い段階から並行して評価します。

成人発症スティル病 診断基準:山口基準の大項目と小項目

 

成人発症スティル病(AOSD)は、不明熱で紹介される代表疾患の一つで、分類(classifications)として最も広く参照されるのが山口基準です。山口基準は「大項目2項目以上を含み、合計5項目以上」該当し、さらに除外項目(感染症・悪性腫瘍膠原病など)を除外してDefiniteとする枠組みです。難病情報センターの記載でも、DefiniteはA(大項目)2つ以上+A・B合計5つ以上+C(除外)を除外、と明確に整理されています。

【山口基準:大項目(Major)】

  • 39℃以上の発熱が1週間以上続く
  • 関節症状(関節痛/関節炎)が2週間以上続く
  • 定型的な皮膚発疹(いわゆるサーモンピンク疹など)
  • 80%以上の好中球増加を伴う白血球増多(白血球増多+好中球優位)

    (臨床現場では「高い弛張熱」「発熱時に出没する皮疹」「好中球優位の炎症」をセットで捉えると、鑑別の方向性が早く定まります。)

【山口基準:小項目(Minor)】

重要なのは、山口基準は「診断の確定」そのものというより、臨床研究や症例集積にも耐える“分類基準”として設計されている点です。したがって早期例では、典型像が揃うまで時間を要し、最初の外来や救急では基準を満たし切らないことも珍しくありません。東大病院の解説でも、悪性腫瘍や感染症の慎重な除外診断が重要で、山口基準が内外で最も広く引用されると説明されています。

成人発症スティル病 診断基準:除外項目と鑑別診断の実務

山口基準の運用で実際に難しいのは「除外項目」をどう現場で担保するかです。難病情報センターでは除外項目として、感染症(敗血症、伝染性単核球症など)、悪性腫瘍(悪性リンパ腫など)、膠原病(結節性多発動脈炎、悪性関節リウマチなど)を挙げています。ここを形式的に済ませると、あとで診断のひっくり返しが起きます。

実務での除外診断は、次の「3系統」を短期間で同時並行に評価するのがコツです。

  • 感染症:血液培養、尿培養、胸腹部画像、必要に応じてウイルス検査(EBV等)、心内膜炎を疑う場合の心エコー。
  • 悪性腫瘍:悪性リンパ腫を意識した造影CT/PET適応、リンパ節腫大があれば生検の敷居を下げる。東大病院解説でも、リンパ節所見は鑑別(菊池病、SLE、リンパ腫など)に有用となり得ると記載されています。
  • 膠原病・血管炎:自己抗体(ANA、RFは山口基準の小項目に含まれる)、補体、尿所見、皮疹の性状、臓器障害の分布で再評価。

意外な落とし穴として、AOSDでは心膜炎・胸膜炎などの漿膜炎が一定頻度でみられます。東大病院解説では心膜炎・胸膜炎・一過性肺浸潤影が30〜40%程度とされ、感染症(肺炎、結核など)に引っ張られて抗菌薬が長期化し、診断が遅れるきっかけになります。抗菌薬でCRPが下がらない「理由」を、薬剤耐性ではなく“疾患カテゴリ違い”として早めに疑う視点が重要です。

成人発症スティル病 診断基準:フェリチンと糖鎖フェリチンの読み方

成人発症スティル病の検査で最も有名なのはフェリチン高値です。ただしフェリチンは炎症・肝障害・悪性腫瘍・HPS/MASなど多くで上がるため、「フェリチン高値=AOSD」にはなりません。東大病院の解説では、フェリチン上昇のカットオフとして「正常上限の5倍以上」が一案として触れられ、さらに3,000ng/mL以上(時に数万以上)なら感染症や悪性腫瘍よりAOSDを疑う、と臨床の目安が説明されています。

ここで、医療者が押さえておくと差がつくのが「糖鎖フェリチン(glycosylated ferritin)」です。東大病院解説では、AOSDでは糖鎖フェリチンの割合が20%未満となる、と明記され、その理由として細胞崩壊により非糖鎖フェリチン割合が増加する機序が説明されています。大阪大学の疾患解説ページでも、Fautrelらの分類基準(2002年)の大項目として「糖鎖フェリチン低下(20%以下)」が含まれることが示されています。

ただし糖鎖フェリチンにも注意点があります。近年のレビューでは、糖鎖フェリチン低下はAOSD以外(例:重症感染症やHLHなど)でも起こりうるため、単独での決定打にはできないと議論されています。つまり、糖鎖フェリチンは「鑑別を一気に狭める」道具であって、「鑑別を終わらせる」道具ではありません。フェリチン値そのものは経時変化が大きいので、初診の単発値より、数日単位での推移(解熱と連動して下がるか、治療でどう反応するか)を合わせて読む方が安全です。

成人発症スティル病 診断基準:血球貪食症候群(MAS/HPS)と重症度

成人発症スティル病で最も怖いのは、診断がつく前後に重症合併症へ移行することです。東大病院解説では、血球貪食症候群(HPS)/MASは、発熱・汎血球減少・肝障害・DIC・フェリチン著増(5,000ng/mL以上)などを特徴とする重篤病態として整理され、AOSDでは通常「白血球増加・血小板増多」が特徴的だが、発熱が続くのに白血球・血小板が“正常”のときはHPS発症の可能性、と臨床的な警告が書かれています。

難病情報センターには、成人発症スチル病の重症度スコアも掲載され、DICと血球貪食症候群は各2点、漿膜炎や好中球比率増加(85%以上)、フェリチン高値(3,000ng/mL以上)などが各1点として加点し、合計で重症度(軽症/中等症/重症)を判定する枠組みが示されています。診断基準(山口基準)と重症度スコアは目的が異なるため、臨床では「AOSDらしい」かどうかの議論と並行して、「今この患者はICU的に危ない」かどうかを同時に評価する必要があります。

現場の実装としては、次の“早見チェック”が有用です。

  • 🔥 高熱が続くのに血球が増えない(むしろ減る)
  • 🩸 Dダイマー上昇、PT延長、フィブリノゲン低下などDIC様
  • 🧪 フェリチンが短期間で跳ね上がる(数千〜万)
  • 🧫 感染症が証明できないのに状態が悪い(ショックに近い)

この状況では、AOSDの診断が確実でなくても、MAS/HPSを疑って骨髄検査を検討する、凝固系を頻回に追う、臓器障害を先に止める、といった“優先順位の入れ替え”が重要です。東大病院解説でも骨髄の貪食像は感度が高くないことが記載されており、陰性=否定ではない点も押さえどころです。

成人発症スティル病 診断基準:検索上位に少ない独自視点(皮疹の非典型と検体戦略)

検索上位の解説は「サーモンピンク疹」「発熱時に出没」「掻痒なし」といった典型像に寄りがちですが、現場では“非典型”が診断を遅らせます。東大病院解説では、皮疹は発熱と一致して出現する即時消退紅斑性皮疹だけでなく、「出現消退をしない持続性の紅斑」も特徴的で、後者では表皮角化細胞壊死などの特徴所見があり皮膚生検が推奨される、と踏み込んで説明されています。ここは意外と見落とされがちで、「皮疹が典型的に出没しない」ことを理由にAOSDが候補から外れてしまうことがあります。

この点を“検体戦略”として言い換えると、AOSD疑いでは次の工夫が実務的です。

  • 📸 皮疹が出た瞬間に写真記録(発熱時に出るなら病棟でタイミングを合わせる)
  • 🧴 掻痒がある/線状の紅斑が続くなど、典型像から外れるほど皮膚科コンサルト+生検を検討
  • 🧪 フェリチンは単発でなく、症状(発熱・皮疹・関節症状)と同じ時間軸で追跡
  • 🧫 抗菌薬開始後でも培養採取は継続し、感染症除外の証拠を積み上げる(あとから診断を支えるのは“陰性の積み重ね”)

さらに、東大病院解説ではIL-18が比較的AOSDに特異的で診断的価値が高く、数万pg/mLのオーダーまで上昇し得る、とされています。IL-18は施設によって測定体制が異なる一方、測れる環境なら「不明熱+高炎症+フェリチン高値」の段階で、鑑別の優先順位を変える強い材料になります(ただし保険適用や測定可否は施設事情に依存します)。

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診断基準の一次情報(権威性が高い日本語リンク、該当表の参照に有用)。

除外項目を含む山口基準(大項目・小項目)とDefiniteの考え方:https://www.nanbyou.or.jp/entry/282
診断と検査(フェリチン、糖鎖フェリチン、IL-18、MAS/HPSの注意点)の臨床的解説:https://ryumachi.umin.jp/clinical_case/AOSD.html
Fautrel基準(糖鎖フェリチン≤20%を含む分類基準の一覧がまとまる):http://www.imed3.med.osaka-u.ac.jp/disease/d-immu05-2.html

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