上腕骨外側上顆炎 治し方
上腕骨外側上顆炎の原因と病態:短橈側手根伸筋の起始部
上腕骨外側上顆炎は、物をつかんで持ち上げる、タオルをしぼるなどの動作で、肘外側〜前腕に痛みが出るのが典型で、安静時痛が目立たないケースも多いです。
病態は十分に解明されていないものの、主に短橈側手根伸筋(ECRB)の起始部が肘外側で障害されて生じると考えられ、長橈側手根伸筋や総指伸筋も関連筋として整理できます。
患者説明では「テニス肘」という俗称に引っ張られず、職業性・家事動作・PC作業・工具作業など反復負荷でも起こりうる“上肢の過用”としてフレーミングすると、生活指導につながりやすくなります(スポーツ歴がない患者ほど納得感が重要です)。
また、症状の訴えが「肘」でも、実際には“手関節伸展+把持”の組み合わせで増悪することが多いため、評価は肘局所の圧痛だけでなく、痛みを再現する日常動作(ペットボトルを開ける、フライパンを持つ、マウスを長時間操作する等)を具体化しておくと介入の優先順位が明確になります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1725102/
鑑別としては、頚椎由来の放散痛、橈骨神経浅枝や後骨間神経近傍の絞扼、肘関節内病変なども念頭に置き、疼痛パターンが典型から外れる場合は「外側上顆炎だけに固定しない」姿勢が安全です。
上腕骨外側上顆炎の診断:ThomsenテストとChairテスト
診断は外来で行える疼痛誘発テストが基本で、Thomsenテスト、Chairテスト、中指伸展テストが一般に用いられます。
いずれの検査も、肘外側から前腕にかけて痛みが誘発されるかを確認し、症状の再現性を軸に臨床診断します。
医療従事者としては、テストの陽性/陰性だけで終えず、「どの角度・どの負荷で・どんな痛みが出るか」を言語化して、運動療法の負荷設定(痛み許容域)に直結させるのがポイントです。
現場では「炎症だから安静」という先入観が強い患者もいるため、検査で痛みが出る動作パターンを一緒に確認し、“完全な不使用”ではなく“痛みを暴発させない使い方”へ誘導すると治療同盟が作りやすくなります。
とくにChairテストは患者にとって直感的で、「この動きが当面の調整対象」という合意形成に使いやすい一方、疼痛が強い急性期には過負荷になり得るため、痛みの強さに応じて再現試験の強度を落とす配慮が必要です。
上腕骨外側上顆炎のストレッチ:前腕伸筋群の伸張運動
保存療法では、手首や指のストレッチをこまめに行うことがまず挙げられています。
理学療法領域でも、前腕伸筋群の伸張運動(ストレッチング)を扱うクリニカルクエスチョンが設定されており、臨床で重要な介入要素として整理されています。
ストレッチは「痛みをゼロにする儀式」ではなく、腱付着部へ加わる牽引ストレスを減らし、日常で不可避な負荷(把持・伸展)に耐える“余裕”を作る目的で説明すると、継続率が上がります。
実施のコツは、肘伸展位で前腕回内・手関節屈曲方向へ誘導して伸筋群を狙うこと、そして呼吸を止めずに一定時間保持することです(やり過ぎて痛みを増悪させない範囲で)。
患者がセルフで行う場合は、回数や保持時間を厳密に押し付けるよりも、「家事やPC作業の前後」「痛みが増えた日の夜」など生活動線に組み込ませた方が、実装として成功しやすいです。
“意外に見落とされる点”として、指の伸展筋(総指伸筋)も関連しうるため、手指の使い過ぎ(スマホの長時間操作、強いピンチ動作)を併せて調整しないと、肘局所だけのストレッチでは改善が頭打ちになることがあります。
上腕骨外側上顆炎の筋力増強運動:手関節伸筋群の負荷設計
肘関節機能障害の理学療法ガイドラインでは、上腕骨外側上顆炎患者に対する手関節伸筋群の筋力増強運動を扱うクリニカルクエスチョンが提示されています。
外側上顆炎は過用で起こる一方、臨床的には“適切に設計された負荷”が回復を後押しする局面があり、ストレッチ単独では再発予防まで届きにくい点を強調すると運動療法の意義が伝わります。
エキセントリック運動を含む運動療法は外側上顆炎で議論・研究が多く、プログラムでは「痛みの許容範囲内で」「徐々に負荷を上げる」設計が重要とされます(詳細は論文を参照)。
論文(運動プログラムの記載がある研究)を患者説明に使うときは、「このやり方が絶対」という言い方ではなく、“腱の回復は時間がかかるが、段階的運動は有望な選択肢”という温度感で共有すると、途中離脱や不安を減らせます。pmc.ncbi.nlm.nih+1
臨床での負荷設定の目安としては、翌日に痛みが大きく増悪しないこと、握力や日常動作が悪化しないことをチェックし、増悪するなら「回数を減らす・負荷を下げる・頻度を落とす」いずれかで調整します。
“意外な盲点”は、手関節伸筋群を鍛えるつもりが、肩甲帯の不安定さや体幹の崩れで前腕に過剰負担が集中しているケースで、作業姿勢(キーボード高さ、肘の支持、マウス形状)まで落とし込んだ方が、運動療法が素直に効くことがあります。
参考(エキセントリック運動の考え方とプログラムの記載):https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1725102/
参考(エキセントリック運動の有効性に関するシステマティックレビュー):https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8432114/
上腕骨外側上顆炎の保存療法:テニス肘バンドとステロイド注射
保存療法として、日本整形外科学会の一般向け解説では、ストレッチ、作業やスポーツの負荷軽減、湿布や外用薬、局所麻酔薬とステロイド注射、テニス肘用バンドの装着が挙げられています。
ここで重要なのは、これらを“並列の治し方”として羅列しないことで、患者の生活背景(休めない仕事、育児、介護、競技継続)に合わせて「何を主軸にして、何を補助にするか」を設計します。
たとえばテニス肘用バンドは、痛みを起こす張力を“局所からずらす”補助として使い、同時にストレッチと筋力増強運動へつなぐ橋渡しにすると、装具依存を防ぎやすいです。
ステロイド注射は、短期的な疼痛軽減に役立つ場面がある一方で、長期的な転帰を保証するものとして説明すると期待値が過剰になります。lion-seikei+1
そのため説明では、「痛みで睡眠や仕事が破綻している」「リハビリの導入が困難」など、“機能回復の入口を作る目的”で検討する位置づけが安全です。lion-seikei+1
保存療法が無効な場合に手術療法が選択肢になり得る点も、早い段階で触れておくと(脅しではなく道筋として)、難治例での不信感を減らせます。
参考(疾患概念・検査・保存療法の整理に有用):https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/lateral_epicondylitis.html
参考(理学療法で扱うCQ一覧:ストレッチ、筋力増強運動、装具、患者教育などの論点整理に有用):https://www.jspt.or.jp/guideline/2nd/elbow/20201216_17.html
上腕骨外側上顆炎の治し方:医療従事者の独自視点「痛みの自己増幅」を断つ
検索上位ではストレッチや装具の解説が中心になりがちですが、臨床で“治りづらさ”を作るのは「痛い→守る→使わない→余計に痛い」という自己増幅のループです。
安静時痛が少ないことが多い疾患だからこそ、「使うと痛い=使ってはいけない」と誤学習しやすく、疼痛回避が過剰になると作業効率が落ちてさらに前腕に力が入り、結果として局所負担が上がることがあります。
そこで患者教育は、痛みの強さを0/10に固定するのではなく、「許容できる痛みの範囲で動かしてよい」「翌日に悪化しない範囲に調整する」という運用ルールを与える方が現実的です。
具体的な説明例として、次のように“行動指針”へ翻訳すると現場で使えます。
・✅やってよい:痛みが軽い範囲でのストレッチ、軽負荷の筋力増強運動、肘を伸ばしての軽い把持(短時間)pmc.ncbi.nlm.nih+1
・⚠️調整する:タオルを強く絞る、重い鍋を片手で持つ、強い握り込みでの反復作業(道具の工夫や両手化を提案)
・🛑中止して受診:安静でも強い痛みが続く、しびれが前景に出る、急な筋力低下や夜間痛が強い(別病態も疑う)
さらに“あまり語られない介入”として、職場環境の微調整(マウスを軽いものにする、前腕支持を作る、キーボード角度を変える、握り径を太くするなど)は、ストレッチや運動療法の効果を底上げしやすいです。
医療従事者側が「セルフケアの実行率」を最大KPIに置き、患者が続けられる最小セット(ストレッチ1種+筋力増強運動1種+生活調整1個)から始めると、3か月後の満足度が上がりやすい臨床感があります。pmc.ncbi.nlm.nih+1

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