再発性多発軟骨炎と診断基準と検査と治療

再発性多発軟骨炎 診断基準

再発性多発軟骨炎 診断基準の要点
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診断は「基準+総合評価」

特異的な単独検査は乏しく、症状・炎症反応・画像・(必要時)病理を合わせて判断する。

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気道病変は予後規定因子

嗄声・喘鳴・咳などがあれば早期からCTや呼吸機能で評価し、不可逆化を避ける。

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独自視点:VEXASも視野

高齢男性・血球減少・炎症が強い場合は、再発性多発軟骨炎に「似る」病態の混在を疑い鑑別を拡げる。

再発性多発軟骨炎 診断基準 McAdam

 

再発性多発軟骨炎(RP)は、耳介・鼻・気道などの軟骨やプロテオグリカンに富む組織に再燃と寛解を繰り返す炎症が起こる希少疾患で、発症早期ほど診断が難しいことが多いです。特異的な血液検査がないため、診断は臨床症状と補助検査(血液・画像・病理)を組み合わせた「総合評価」になります(この考え方自体が重要で、基準は“確定診断の最終試験”というより、臨床現場での共通言語・整理ツールです)。

医療従事者が最初に押さえるべき古典的枠組みが、McAdamの診断基準です。代表的な6項目は、耳介軟骨炎(反復性で両側性が典型)、非びらん性の血清反応陰性の炎症性多発関節炎、鼻軟骨炎、眼の炎症、気道(喉頭・気管・気管支)軟骨炎、蝸牛/前庭障害(感音難聴・めまいなど)で、これらの組合せで評価します。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4198788/

臨床上の落とし穴は「耳介が典型的でない」「気道単独で始まる」など、基準の“絵に描いたような並び”にならないことです。たとえば気道病変は、初期は粘膜腫脹による狭窄、進行すると線維化・軟骨破壊から虚脱へ移り、感染反復や気道閉塞に直結します。jbji.copernicus+1​

再発性多発軟骨炎 診断基準 Damiani

McAdamを土台に、DamianiとLevineの基準は「病理」や「治療反応性」を取り込んで診断の幅を広げた枠組みとして理解すると実用的です。発症早期で症状が揃わない症例や、身体所見が非典型の症例で“拾い上げ”を助けることがあります。

日本の医療者向け情報として、慶應義塾大学病院KOMPASでも、McAdam基準と、それを基にしたDamiani基準が主に用いられる一方、発症早期は基準を満たさないことがある、と明確に注意喚起されています。つまり「基準を満たさない=否定」ではなく、経時的観察と全身検索が必要という前提で運用すべきです。

参考)https://jbji.copernicus.org/articles/8/29/2023/jbji-8-29-2023.pdf

また、厚労科研の「再発性多発軟骨炎 診断・治療ガイドライン(草稿)」でも、診断では厳密性よりスクリーニングの正確性を重視し、Damiani基準の使用が推奨されつつも、McAdam/Michetも含め“いずれの基準にも照会する”のが望ましいとされています。現場では、診断書作成や多職種連携で説明責任が求められるため、どの基準にどこまで合致したかをカルテ上で言語化しておくと、後々の診療の質が上がります。

再発性多発軟骨炎 診断基準 検査 画像

RPの検査は「特異的マーカーがない」ことを前提に組み立てます。炎症反応(CRP上昇、血沈亢進など)は参考になりますが決め手にはならず、CT・MRI・核医学検査・超音波・(必要時)組織などを組み合わせて総合的に評価する、とKOMPASでも整理されています。

気道病変の評価は特に重要です。厚労科研ガイドライン草稿では、潜在的進行を拾う目的で、診断時および経過中にスパイロメトリー/フローボリューム曲線を年1回程度行うことが推奨され、呼気時CTで虚脱を捉える意義(重症の気管気管支軟化症)も述べられています。

さらに、FDG-PET/CTは保険適用外になり得る点に留意しつつも、気道病変・他臓器合併症の診断的価値が高い可能性が示されており、症状が非典型で診断が難しいケースの“最後の一押し”として検討される場面があります。現実的には、呼吸器症状が喘息様で遷延する例、原因不明の炎症が続く例、局在がはっきりしない痛み・腫脹がある例で、画像戦略をどう組むかが診断速度を左右します。

現場で使いやすい「検査の視点(入れ子にしない箇条書き)」を示します。

・🩸血液:CRP/ESR、血球数(合併や治療副作用の把握)、肝腎機能(免疫抑制薬・生物学的製剤の安全管理)

・🫁呼吸:スパイロ、フローボリューム、胸部CT(可能なら吸気+呼気で虚脱評価)

・👂👃耳鼻科:耳介・鼻中隔の局所評価(変形や穿孔の有無)、聴力/前庭機能

・👁眼科:上強膜炎、強膜炎、角膜炎、ぶどう膜炎などの評価(視機能予後に直結)

・📌核医学:FDG-PET/CT(診断困難例や多臓器評価で選択肢)

これらは「診断基準の項目を埋める」だけでなく、重症度・予後因子(特に気道)を見極める意味があります。jbji.copernicus+1​

再発性多発軟骨炎 診断基準 生検

生検(病理)は“万能の確定打”ではありませんが、診断が揺れる症例では重要な支えになります。一方で、厚労科研ガイドライン草稿は、気道軟骨炎に対する生検は炎症誘発の危険があるため回避が望ましい、と明確に述べています(声門直下狭窄で気管切開が必要な状況では、その際の生検組織が有用になり得る、という現実的な整理もあります)。

耳介軟骨炎に関しては、気道ほどの危険性は強調されないものの、病態進展を考慮すると耳介生検が有益となる場合がある、と草稿は述べています。臨床では、鑑別に挙がる疾患(感染性軟骨炎、外傷、血管炎、自己炎症性疾患、悪性腫瘍随伴など)をどこまで除外したいかで、生検の価値が変わります。

また、耳介軟骨炎は症状の消長があり、観察タイミング次第で片側に見えたり対側へ移動したように見えたりする可能性も指摘されています。したがって「病変が活動性のタイミングで、侵襲を最小化しつつ、診断に必要な情報量を最大化する」設計が重要で、耳鼻科・皮膚科・病理との連携が診断精度に直結します。

再発性多発軟骨炎 診断基準 VEXAS

ここからは検索上位の一般的な“基準の解説”だけでは終わらない、臨床的に効く独自視点として、VEXAS症候群を必ず一度は想起する、という話です。厚労科研のガイドライン草稿には、VEXASが2020年に提唱された成人発症の重篤な自己炎症性疾患で、UBA1遺伝子の体細胞変異と関連し、半数程度で軟骨炎が合併し得ることが整理されています。

さらに重要なのは、VEXASでは“RPの診断基準を満たす患者が含まれ得る”点です。KOMPASでも、RPと診断された患者にVEXASが含まれている可能性があること、そして高齢男性で血球減少・皮疹・肺病変などを伴う場合に疑う、という実務的な示唆が書かれています。

臨床現場での具体的アクションとしては、次のような「気づきトリガー」を持つと見落としが減ります。

・🧓高齢男性で炎症が強いのに、耳介・鼻・気道の“典型セット”が揃わない

・🩸大球性貧血や血球減少、MDS合併が示唆される(既往や検査から疑う)

・🩹好中球性皮膚症様の皮疹、血栓傾向、肺浸潤などが目立つ

この場合、RPの診断基準に当てはめる作業と並行して、骨髄所見(空胞化)や遺伝子検査の可否を含め、血液内科と相談する導線を確保すると安全です。jbji.copernicus+1​

必要に応じて、原著も確認できます(VEXAS提唱論文)。

Somatic Mutations in UBA1 and Severe Adult-Onset Autoinflammatory Disease (N Engl J Med, 2020)

診断基準というテーマであっても、実臨床では「何を除外し、何を拾い上げ、どこを急ぐか」が本質です。RPは気道病変が生命予後に直結し得るため、診断基準のチェックと同じ重さで、気道評価(症状・CT・呼吸機能)を初期からプロトコル化することが、医療従事者向けの実装ポイントになります。jbji.copernicus+1​

権威性のある日本語の参考リンク(診断・検査の考え方、症状と合併症の全体像)。

慶應義塾大学病院KOMPAS:再発性多発軟骨炎(概要〜診断・検査、気道病変、VEXASの注意点)

権威性のある日本語の参考リンク(国内の診断・治療の整理、気道評価や生検の注意、検査フォローの推奨)。

厚労科研:再発性多発軟骨炎 診断・治療ガイドライン(2023.11.22 草稿)

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