化膿性関節炎 指 診断と治療と抗菌薬

化膿性関節炎 指

化膿性関節炎 指:臨床で最初に押さえる要点
⚠️

「小さな関節」でも緊急

手指の感染性関節炎は機能障害や切断に至ることがあり、時間依存で軟骨破壊が進むため初療が重要です。

🧪

穿刺・培養が診断の軸

関節液は細菌同定を最優先し、可能なら抗菌薬開始前に採取して培養陰性を減らします。

🧼

洗浄・デブリドマン+抗菌薬

小関節は貯留膿が少なくても関節内圧と毒素で破壊が進みうるため、外科的介入の閾値を低く考えます。

化膿性関節炎 指の症状と鑑別(痛風・偽痛風・蜂窩織炎)

 

化膿性関節炎は、強い疼痛、腫脹、発赤、熱感、可動域制限が典型で、発熱はあっても必須ではありません。特に手指では「腫れて動かすと激痛」「自動運動が著明に制限される」という訴えが目立ちやすく、見た目の腫れが軽くても関節内が進行していることがあります。手指の感染性関節炎は機能障害や切断に至る重篤疾患になり得る点を、初療時にチームで共有しておく必要があります。

鑑別で悩みやすいのは、痛風/偽痛風などの結晶誘発性関節炎リウマチなど炎症性関節炎、蜂窩織炎や皮下膿瘍、そして手指特有の感染(爪周囲炎、ひょう疽、深指屈筋腱の化膿性腱鞘炎)です。ガイドライン上も「臨床所見だけで除外・確定はできない」ため、疑った時点で関節液評価へ進むのが安全側です。結晶が検出されても感染を否定できない(結晶と感染の併存があり得る)点は、救急外来や当直帯で特に落とし穴になります。

意外に見逃されやすい状況として、明らかな外傷がないのに指の1関節だけが急激に腫れて痛むケースがあります。この場合でも、血行性感染(頻度は高くないがゼロではない)や周囲感染からの波及があり得るため、既往(糖尿病、免疫抑制、皮膚潰瘍)とあわせて「感染の可能性」を最後まで残します。手指では診断遅延が10日を超えると骨髄炎が増える、という臨床観察もあり、時間経過の聴取(発症日、増悪速度、抗菌薬先行の有無)は問診で最重要項目です。

化膿性関節炎 指の検査:穿刺・培養・血液検査と関節液所見

診断の中核は関節穿刺です。感染性関節炎(SANJO)ガイドラインでは、関節液は「白血球数」よりもまず「細菌学的同定」を最優先に提出することが推奨され、量が限られる小関節では特にこの優先順位が実務的です。加えて、敗血症が疑われる/発熱がある場合は血液培養も併せ、関節液・血液の両面から起炎菌に迫ります。

関節液の細胞数は参考になりますが、閾値だけで判断しない姿勢が重要です。ガイドラインでは滑液白血球数が5万/µL超で示唆的とされる一方、2万5千/µL未満でも除外はできないと整理されています。さらに免疫抑制患者では典型的な細胞反応が出にくく、手指の小関節では採取量の問題もあって「数値が低い=安心」とはなりません。臨床上は、穿刺で膿性/混濁が確認できる、グラム染色で菌体が見える、強い疼痛と機能障害が揃う、といった所見の組み合わせで意思決定します。

ここで“意外な”実務ポイントとして、抗菌薬先行投与は培養陽性率を下げます。化膿性関節炎の起因菌同定は抗菌薬開始前の血液培養と関節穿刺培養が推奨され、術前投与によって培養検出率が下がったという報告もあり、可能なら採取→投与の順番を徹底したいところです。もちろん、敗血症やショックが疑われる場合はこの限りではなく、ガイドラインでも“sepsisなら速やかに抗菌薬”が優先されます。

化膿性関節炎 指の画像:X線・超音波・MRIの使い分け

画像は「確定」よりも「合併病変の把握」と「穿刺支援」の役割が大きいと捉えると運用しやすくなります。感染性関節炎ガイドラインでは、単純X線は骨折・変形性関節症・骨髄炎など既存病変のスクリーニングや経過比較の基準として有用とされ、超音波/CT/MRIは関節液貯留や周囲膿瘍の検出に役立つとされています。手指の小関節では、超音波で関節液貯留を確認し、穿刺のガイドとして使える点が現場で大きなメリットです。

一方で、初期の単純X線は情報が乏しいことがあり、これが診断遅延の要因になります。手指の感染性関節炎に関するレビューでも、発症早期のX線は非特異的で、骨髄炎の所見が出るのは時間がかかると述べられています。したがって「X線で異常がないから様子見」は危険で、臨床所見と穿刺所見が優先です。

MRIは関節液、軟部組織、骨髄炎の評価に強い反面、コストと撮像までの時間が障壁になります。ガイドラインでもMRIの有用性を認めつつ、アクセスや遅延の問題に言及しており、急性期は「穿刺・培養と初期ドレナージ判断を遅らせない」範囲で適応を考えるのが現実的です。たとえば、疼痛が強いのに穿刺がdry tapで針位置が不明、深部膿瘍や骨髄炎の合併が疑わしい、など“治療方針が変わる”局面でMRIを選ぶと納得感があります。

化膿性関節炎 指の治療:洗浄・デブリドマンと抗菌薬と期間

治療は原則として「関節内の感染源コントロール(穿刺/切開・排膿、洗浄、デブリドマン)」と「全身抗菌薬」の組み合わせです。手指の感染性関節炎レビューでは、穿刺のみでの治療はごく早期に限られ、実臨床では開放手術(オープンでの洗浄・デブリドマン)が最も多い、と整理されています。感染が残る場合は24〜48時間で再手術が推奨されるという記載もあり、「1回洗って終わり」と決め打ちせず、経過で躊躇なく再介入する運用が重要です。

抗菌薬は、起炎菌の頻度として黄色ブドウ球菌(S. aureus)と連鎖球菌が多いこと、動物咬傷ではPasteurella multocidaが増えることが知られています。手指では外傷・穿通創・咬傷など外因性が多く、皮膚・口腔由来菌を念頭に置くのが合理的です。したがって初期エンピリックでは、地域のMRSA頻度や患者リスク(透析、既往、施設入所など)も加味しながら、S. aureus/streptococciを外さない設計が基本になります。

抗菌薬の“期間”は施設差が出やすい論点ですが、手・手関節に限れば短縮のエビデンスが存在します。手指・手関節の細菌性関節炎を対象に、外科的ドレナージ後の抗菌薬2週間が4週間に対して非劣性だったランダム化比較試験が報告されており、入院期間短縮にもつながったとされています。さらに手指のレビューでも2〜4週や約1か月など幅のある提案が並び、最終的には起炎菌、骨髄炎合併、免疫状態、デブリドマンの十分性で個別化が必要、というのが現時点の“落としどころ”です。

実務上のコツとして、SANJOガイドラインは「敗血症がなければ、培養採取前に抗菌薬を開始しない」ことで培養陰性を減らす姿勢を明確にしています。またIV→経口への切り替えは、臨床症状と炎症反応(白血球/CRP)の改善を見て行い、経口薬はバイオアベイラビリティと滑液移行性を重視する、といった考え方が示されています。手指の小関節は“感染巣の完全排除がしやすい”側面もあり、外科的にコントロールできていれば、過度に長い点滴継続が必須とは言い切れない点が、上記RCTの示唆です。

化膿性関節炎 指の独自視点:診断遅延を生む「見た目の軽さ」と早期リハビリ

検索上位の解説は「症状・検査・治療」を丁寧に説明する一方、臨床現場で本当に厄介なのは“軽く見える指”が混じることです。手指の関節は小さく、皮下の腫脹が派手に出ないまま、関節内で破壊が進むことがあります。手指の感染性関節炎では感染後24〜48時間で軟骨破壊が進行し得る、という実験的知見がまとめられており、「赤くないから大丈夫」「腫れてないから腱鞘炎だけ」などの思い込みは危険です。

また、機能予後を決めるのは感染沈静化だけではありません。手指の感染性関節炎レビューでは、関節拘縮(stiffness)が大きな後遺症として繰り返し言及され、術後早期(理想は24時間後開始)からのリハビリ開始が議論されてきたと記載されています。SANJOガイドラインも、感染がコントロールされドレーン抜去後に可及的早期の関節可動を推奨しており、固定しすぎによる拘縮リスクを明確に意識しています。

ここが“意外な実務ポイント”ですが、手指では「感染が怖いから固定を続ける」ほど、最終的な握力・巧緻運動が戻らず、職業復帰に影響することがあります。だからこそ、術後は整形外科/手外科とリハビリ、感染症(または抗菌薬管理担当)で目標を共有し、「いつから動かすか」「どこまで動かすか」「腫脹や疼痛が増えたらどう判断するか」をプロトコール化すると再現性が上がります。

さらに、動物咬傷(特に猫咬傷)は穿刺創が小さい割に深部に菌を“注射針のように”運び、重症化し得るという指摘があります。問診で「引っかかれただけ」「小さな穴」などと言われても、手指の関節近傍なら感染性関節炎を含めた深部感染のリスク説明と、早期受診・早期再診の導線設計が重要です。

(診断の基軸と検体優先順位、抗菌薬開始前採取、画像の位置づけ)感染性関節炎の国際ガイドライン(SANJO)。

Guideline for management of septic arthritis in native joints (SANJO) - PMC
This clinical guideline is intended for use by orthopedic surgeons and physicians who care for patients with possible or...

(手指の感染性関節炎:起因菌、遅延で骨髄炎、X線初期非特異、治療とリハの論点)手指のseptic arthritis総説。

Septic arthritis of the hand: Current issues of etiology, pathogenesis, diagnosis, treatment - PMC
Septic arthritis of the hand is a serious disease that often results in dysfunction of the joint or even the need to per...

(術後抗菌薬2週 vs 4週が非劣性:手・手関節の細菌性関節炎を含むRCT)Annals of the Rheumatic Diseases。

https://ard.bmj.com/content/78/8/1114

一歳三ヶ月の息子が化膿性関節炎から骨髄炎になりました: 《入院生活と予後の手記》 (JS出版)