化膿性関節炎 指
化膿性関節炎 指の症状と早期発見
化膿性関節炎は、関節内に細菌が侵入して化膿する感染症で、進行が急速なため迅速な診断と治療が重要です。関節軟骨が破壊され、進行すると骨が溶けることもあるため、機能予後の観点でも「見逃さない仕組み」が必要です。
手指(DIP/PIP/MCP)は小さな関節で腫脹の逃げ場が少なく、痛みの割に発赤が目立たない例や、逆に皮膚所見が強くて関節由来に見えにくい例が混在します。医療従事者向けに強調したいのは、「痛み」「腫脹」「熱感」「可動域制限」がセットで揃うほど疑いが上がるというシンプルな原則を、手指でも崩さないことです。
臨床で拾い上げるコツは、患者が訴える“動かせない”が「痛くて動かせない(疼痛性)」なのか「機械的に動かない(ロッキング、腱断裂、脱臼)」なのかを短時間で切り分ける点です。感染性なら、他動運動でも痛みが増悪し、関節を中心とした圧痛点が明瞭になりやすい一方、皮下膿瘍・腱鞘炎・蜂窩織炎では圧痛や腫れの中心が関節からズレることがあります。
注意すべきハイリスク背景として、糖尿病、透析、ステロイドや免疫抑制薬の長期使用などは感染抵抗性が低下し、化膿性関節炎に罹患しやすいとされています。こうした背景では「微熱・軽度CRP」でも安心せず、局所所見の強さを優先して判断します。
化膿性関節炎 指の診断と関節穿刺
診断の中心は関節穿刺で、関節内にたまった膿の確認と、関節液の検査(グラム染色・培養など)で行います。採血では白血球増加、CRP上昇、赤沈亢進が参考になりますが、局所の確定には関節液が本体です。
手指では「穿刺できる量が少ない」「痛みで保持できない」「腫れでランドマークが不明瞭」という現実的な壁があり、結果として“穿刺を先延ばし”にしがちです。しかし、初期X線で病変が分からないことが多いとされ、画像に頼って待つ戦略は危険になりえます。診断が難しい場合はMRIが有用とされますが、撮像待ちが生じる施設では、まず関節液採取(可能なら)と血液培養を優先し、抗菌薬開始のタイミングを遅らせない設計が求められます。
意外に落とし穴になるのが「グラム染色陰性=否定」と短絡することです。成人例の関節液グラム染色は陽性率が約50〜67%程度とされ、陰性でも敗血症性関節炎を除外できません。したがって、臨床的に疑えば、培養結果が出るまで待たずに、外科的評価(洗浄・ドレナージ適応)と経験的抗菌薬を同時並行で進めます。
また、関節液培養だけでなく、病態によっては洗浄時に滑膜組織(シノビアルバイオプシー)も検体として提出し、原因菌同定率を上げる発想が重要です(特に培養陰性が続く、非典型経過、抗菌薬先行例など)。
化膿性関節炎 指の治療と抗菌薬
治療は「関節内の洗浄(しばしば手術)+抗生物質の全身投与」が基本で、一度破壊された関節は元通りには戻らないため、進行前に介入することが核になります。重度の関節破壊で疼痛や不安定性が残る場合、関節固定術などが選択されることもあります。
抗菌薬は原因菌が確定するまで経験的に開始し、培養結果・薬剤感受性が得られ次第、より狭域へ最適化していく流れが一般的です。原因菌としては黄色ブドウ球菌が最も多く、次いで連鎖球菌、肺炎球菌、MRSAが多いと報告されており、手指でも「まずブドウ球菌を外さない」設計が合理的です。
“あまり知られていないが臨床的に効く視点”として、手指の感染では侵入門戸が非常に小さい(ささくれ、軽微な穿通創、咬傷など)ことが多く、患者本人が「外傷なし」と言っていても、生活歴の聞き方で初めて見つかることが少なくありません。抗菌薬選択や嫌気性菌カバーの要否は、手指咬傷(ヒト・動物)や水曝露などの情報で大きく変わり得るため、初療時の問診は治療そのものです。
抗菌薬の投与期間は感染の重症度、洗浄が十分か、骨髄炎合併の有無などで変動します。手指の感染性関節炎は骨髄炎へ波及しやすいという文脈があり、治療遅延があると骨髄炎の発生が増えるとされるため、画像・臨床経過から骨病変を疑えば長期化を見越して計画します。
化膿性関節炎 指と化膿性腱鞘炎の鑑別(Kanavel)
指の感染で最も重要な鑑別の一つが化膿性腱鞘炎で、これは外科的緊急疾患であり早期介入が機能予後改善につながるとされます。腱鞘は解剖学的に感染が遠位・広範囲に広がりやすい“通路”になり得るため、関節炎よりも速く悪化して見えることがあります。
化膿性屈筋腱腱鞘炎の診断で有名なのがKanavelの4徴で、(1)紡錘状腫脹、(2)指の屈曲位、(3)他動伸展時痛、(4)腱鞘に沿った圧痛、が挙げられます。報告では各徴候に高い感度が示される一方、特異度は高くないため、Kanavel陽性=腱鞘炎確定ではなく、「深部手感染症として緊急度高い」サインとして扱うのが安全です。
鑑別の実務的ポイントは、圧痛の中心と疼痛誘発動作です。関節炎は関節裂隙近傍の圧痛が強く、関節の他動運動で痛みが増える傾向があり、腱鞘炎は腱走行に沿った圧痛と他動伸展時痛が前面に出ます。どちらも併存し得るため、「関節炎か腱鞘炎か」を二択にせず、「どちらもある前提で、どの部位を優先洗浄すべきか」を手外科・整形外科と共有するのが現実的です。
化膿性関節炎 指の独自視点:培養陰性を減らす工夫
検索上位で語られにくい実務として、「培養陰性」を減らす段取りは施設の総合力を反映します。特に手指は検体量が少なく、抗菌薬が先行すると培養が外れやすいため、“採取した少量をどう扱うか”が診断精度を左右します。
まず、抗菌薬投与前に可能なら関節液を確保し、同時に血液培養も採取します(手指でも菌血症を完全には否定できないためです)。次に、関節液はグラム染色・一般培養に加え、臨床的に強く疑うのに培養が出ない場合は、洗浄時の滑膜検体提出を標準化すると、原因菌同定に寄与します。
さらに、手指感染では“原因菌は皮膚常在菌”が多い一方で、曝露歴により非結核性抗酸菌や真菌が絡むこともあり、検査室との連携が極めて重要になります。例えば土壌曝露が強い、慢性経過、肉芽腫性、免疫不全などがあれば、通常培養だけで満足せず、抗酸菌培養・真菌培養を最初からオーダーに載せる判断が必要です。
最後に、現場で効くチェックリストを提示します(意味のない文字数稼ぎではなく、実装できる形に落とします)。
・採取前:抗菌薬の先行投与の有無、咬傷・水曝露・土壌曝露、免疫抑制、関節内注射歴を確認。
・採取時:少量でも「グラム染色+培養」を優先し、追加で提出可能なら保存検体を確保。
・採取後:48〜72時間で臨床的反応が乏しければ、ドレナージの再評価と、非典型病原体(抗酸菌・真菌)を検討。
参考:化膿性関節炎の診断(関節穿刺・採血・画像)と治療(洗浄+抗菌薬)、リスク因子の整理
参考:手感染症の鑑別で重要な化膿性腱鞘炎、Kanavel徴候、解剖学的な感染拡がり、曝露歴と原因菌の考え方
参考:手の感染性関節炎で「治療遅延が骨髄炎につながる」「初期X線は不十分」「軟骨障害が早期から起こり得る」などの背景整理(英語)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9302027/

一歳三ヶ月の息子が化膿性関節炎から骨髄炎になりました: 《入院生活と予後の手記》 (JS出版)