膝の病気:変形性膝関節症と診断と治療と予防

膝の病気:変形性膝関節症

膝の病気:変形性膝関節症の要点
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診断は立位X線が基本

関節裂隙狭小化や骨棘、アライメント評価に立位X線は有用だが、軟骨・半月板・滑膜炎などは描出できない点に注意します。

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保存療法は教育・運動・体重

治療は患者教育・生活指導、運動療法、体重減少、装具、薬物などの保存療法を軸に段階的に組み立てます。

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痛みは「軟骨」だけでない

滑膜炎や骨髄病変(BML)などの全関節病として捉えると、画像と症状のズレや治療反応の説明がしやすくなります。

膝の病気:変形性膝関節症の診断 立位X線 KL分類 MRI

 

変形性膝関節症の診断は、問診・身体所見で膝痛の鑑別を行い、必要に応じて画像検査や関節液検査を組み合わせる流れが基本です。特に立位での単純X線撮影(前後面・側面・軸射など)は、関節裂隙狭小化、骨棘、骨硬化、下肢アライメント(FTAなど)の評価に有用とされています。

日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023(PDF)

一方で、X線は「骨の変化」には強い反面、骨髄病変(bone marrow lesion:BML)、軟骨病変、半月板病変、滑膜炎などの評価は困難である点を、医療者側が明確に理解しておく必要があります。ガイドラインでも、単純X線は有用だが骨病変以外の検出力はMRIに比べて低いことが注意点として示されています。

日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023(PDF)

重症度の共通言語としてはKellgren-Lawrence(KL)分類(grade0〜4)が広く使われ、骨棘形成と関節裂隙狭小化を軸に段階評価します。疫学研究ではKL grade2以上をOAと定義することが多い一方、KL分類は検者間・検者内の信頼性が必ずしも高くないことも指摘されており、「X線だけで病態の全てを語らない」姿勢が安全です。

日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023(PDF)

臨床では、画像所見と症状の不一致がよく問題になります。X線で軽度でも痛みが強い例、逆にX線で高度でも痛みが軽い例が存在し、そこでMRIや超音波を追加する判断が患者満足度と治療効率を左右します。特に「急なロッキング」「引っかかり感」「急激な腫脹」などがあれば、半月板損傷や遊離体、炎症性病変の合併を疑い、単純な膝OAとして扱わないことが重要です。

日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023(PDF)

(参考リンク:ガイドラインの目次とCQ/BQの全体像、改訂版で扱う保存療法・薬物・手術の範囲確認に有用)

Minds 変形性膝関節症診療ガイドライン2023

膝の病気:変形性膝関節症の病態 疼痛 滑膜炎 骨髄病変

変形性膝関節症を「軟骨がすり減る病気」とだけ捉えると、説明も治療戦略も単純化しすぎます。ガイドラインでは、AAOSやOARSIの定義も踏まえ、関節軟骨だけでなく、軟骨下骨、靱帯、関節包、滑膜、関節周囲筋を含む関節全体に影響する疾患として整理されています。

日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023(PDF)

疼痛に関しても、単純な「摩耗痛」ではなく、滑膜炎や骨髄病変(BML)が関与し得ることが示されています。ガイドラインの病態(BQ4)では、膝OAの疼痛は滑膜炎やBMLなどの画像所見と関連し得るほか、社会心理的要因の関与も指摘されています。

日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023(PDF)

意外に見落とされやすいのが「炎症は局所だけでなく、代謝や肥満とも相互作用する」という視点です。肥満は単に機械的負荷を増やすだけでなく、脂肪組織由来の炎症性メディエーター(アディポカイン)を介して、慢性の低度炎症としてOA病態に関与する可能性がまとめられています。

Pathogenic Mechanisms and Therapeutic Approaches in Obesity-Related Knee Osteoarthritis

この視点は患者説明にも効きます。例えば「体重が同じでも筋量が落ちると膝の安定性が低下し、炎症の土台(慢性炎症)も増えやすい」という話は、単なる“減量のお願い”より納得されやすいことがあります。国内でもサルコペニア肥満と膝OAを結びつけた論考があり、運動療法の価値(筋機能の回復)が“荷重の軽減”以上に意味を持ち得ることが示唆されます。

変形性膝関節症とサルコペニア肥満(J-STAGE PDF)

膝の病気:変形性膝関節症の治療 保存療法 運動療法 体重減少

日本整形外科学会の診療ガイドラインでは、治療選択肢として、患者教育・生活指導、運動指導、薬物療法、物理療法、装具療法、運動療法などの保存療法、さらに関節鏡視下手術、膝周囲骨切り術、人工関節置換術などの手術療法が整理されています。まず保存療法を軸に、症状・機能・画像・患者希望を踏まえて段階的に組み立てることが基本方針です。

日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023(PDF)

保存療法のなかでも、教育プログラム、運動療法、体重減少、物理療法、装具療法、薬物療法がClinical Questionとして章立てされており、「まず何を優先するか」を設計しやすい構造になっています。医療従事者向けには、患者のセルフマネジメントを治療の一部として位置づけ、継続可能性(通院頻度、疼痛の変動、家事・仕事負荷)まで含めて処方を考えるのが実践的です。

Minds 変形性膝関節症診療ガイドライン2023

運動療法は、単に「筋力をつける」ではなく、疼痛の許容範囲での負荷設計と、関節不安定性の制御(特に大腿四頭筋・股関節周囲筋・足部機能まで含む運動連鎖の再構築)がポイントになります。ガイドラインでも膝OAの診療全体の流れの中に運動療法が明確に位置づけられています。

日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023(PDF)

体重減少は「膝の荷重を減らす」説明が王道ですが、前述の代謝性炎症の視点を添えると、より医学的な説得力が出ます。肥満関連の膝OAでは、慢性炎症やアディポカイン分泌変化、サルコペニアの併存が病態を複雑化させる可能性があると整理されています。

Pathogenic Mechanisms and Therapeutic Approaches in Obesity-Related Knee Osteoarthritis

薬物療法・注射療法・物理療法・装具療法は、患者教育と運動(+必要時の体重介入)を“続けるための補助輪”として位置づけると破綻しにくいです。疼痛をゼロにする治療ではなく、機能と活動性を回復させる治療であることを、チーム内で共通理解として持つと、過剰医療も過少医療も減らせます。

Minds 変形性膝関節症診療ガイドライン2023

膝の病気:変形性膝関節症の治療 手術療法 骨切り術 人工膝関節

保存療法で疼痛・機能障害がコントロール困難な場合、手術療法が選択肢になります。ガイドラインでは、鏡視下半月板切除やデブリドマンの有用性、膝周囲骨切り術、人工膝関節単顆置換術、人工膝関節全置換術(TKA)などが、章立てで整理されています。

Minds 変形性膝関節症診療ガイドライン2023

手術適応の議論で重要なのは、画像の重症度だけでなく、患者の活動性・就労状況・合併症・リハビリ環境を含めた“生活の設計”です。ガイドラインの序文でも、診療ガイドラインは規制や命令ではなく意思決定支援であり、個々の状態や環境で治療選択が変わることが明記されています。

日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023(PDF)

臨床で意外と盲点になるのが「術前からのリハビリ介入の質」です。日本におけるTKA前後のリハビリの質指標(Quality Indicators)を検討した研究では、ガイドラインを実装するための“測れる形”への翻訳が重要であることが示されています。

Quality indicators for the rehabilitation before and after total knee arthroplasty in Japan

また、TKAはアライメント戦略(mechanical alignment、kinematic alignmentなど)によりアウトカムが議論され続けており、術式が成熟しても改善余地は残っています。ランダム化比較試験を含むネットワークメタ解析では、異なるアライメント戦略の臨床アウトカムが比較されており、今後も「最適化」は続く領域です。

Postoperative clinical outcomes for kinematically, restricted kinematically, or mechanically aligned total knee arthroplasty

膝の病気:変形性膝関節症の独自視点 バイオマーカー 歩行速度 セルフエフィカシー

検索上位の一般向け記事では、診断=X線、治療=運動と注射、という説明に収まりがちですが、医療従事者にとっては「進行予測と介入優先度」をどこまで具体化できるかが差になります。ガイドラインでも診断・臨床評価・進行予測に有用な方法として、画像に加え、バイオマーカーやバイオメカニクスが俎上に載っています。

Minds 変形性膝関節症診療ガイドライン2023

まずバイオマーカーの話題です。ガイドラインの疼痛の章では、炎症性サイトカイン(IL-6)や軟骨代謝マーカー(例:sCPIIやuCTX-IIなど)と、早期膝OAや疼痛の関連を報告した研究が引用されており、「画像の前に代謝が動いている」可能性を示唆します。現時点で一般診療にそのまま実装するのは難しくても、研究動向を知っているだけで、患者に“なぜ早期でも痛いのか”を説明しやすくなります。

日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023(PDF)

次にバイオメカニクスとして「歩行速度」をあえて前面に出すのは実用的です。国内研究でも、変形性膝関節症患者の歩行速度に関連する因子として、健側の膝伸展筋力や伸展可動域が抽出された報告があり、「患側だけ見て処方するとリハが外れる」ことを示唆します。歩行速度は転倒リスクやフレイル評価とも接続しやすく、多職種連携の共通指標として使いやすい利点があります。

変形性膝関節症患者の歩行速度に関連する因子の検討(J-STAGE)

さらに“意外な実務ポイント”として、セルフエフィカシー(自己効力感)を評価に組み込む発想があります。膝OA患者で歩行能力と自己効力感の関連を検討した報告もあり、身体機能だけでは説明できない「やれると思えるか」の差が、運動継続や活動量に影響し得ることが示されています。外来で運動指導が続かない症例ほど、心理尺度や破局的思考への介入(教育+目標設定)が効くことがあり、医師・PT・看護師が同じ言葉で介入設計しやすくなります。

理学療法科学 35(6) 779-783(自己効力感と歩行能力)

最後に、患者説明の“ひと言フレーズ”を用意しておくとチームが回ります。

・「X線は骨、MRIは軟骨や炎症も見える」

・「痛みは軟骨だけでなく、滑膜炎や骨の中の変化も関係する」

・「治療の目標は“痛みをゼロ”ではなく“動ける体を取り戻す”」

これらはガイドラインの記載(X線の限界、疼痛因子、治療の全体像)と整合し、説明の一貫性を担保できます。

日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023(PDF)

(参考リンク:ガイドライン本文(定義、診断、保存療法、手術療法、CQ一覧)の一次情報として有用)

変形性膝関節症診療ガイドライン2023(日本整形外科学会PDF)

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