大腿骨寛骨臼インピンジメント 原因
大腿骨寛骨臼インピンジメント 原因:CAM型とPINCER型の骨形態異常
大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)は、大腿骨頭と寛骨臼のいずれか、または両方に「骨のでっぱり」を伴う形態異常があることで、股関節を曲げたりひねったりする際に骨同士が衝突(インピンジメント)し、疼痛の背景になる病態です。
臨床でまず整理したいのは、病型がCAM型(大腿骨側の過剰骨)、PINCER型(寛骨臼側の過剰骨)、そして混合型に分けられる点です。
CAM型は大腿骨頭‐頸部移行部の球状性が崩れ、屈曲・内旋などの終末域で前上方にぶつかりやすいという「形の問題」が出発点になります。
一方、PINCER型は寛骨臼の過被覆(overcoverage)が背景となり、股関節の終末域で頸部が臼蓋縁へ直接衝突しやすく、臼蓋縁や関節唇に負担が集中するという理解が重要です。
なお実臨床では、純粋な単一型よりも混合形態が多いことがあり、画像所見と症状の整合性を丁寧に確認する必要があります(形態があっても無症状の例が少なくないため)。
大腿骨寛骨臼インピンジメント 原因:関節唇損傷と関節軟骨損傷の起点
FAIでは、骨同士の衝突が繰り返されることで関節唇が損傷し、股関節痛の原因となる、という流れが基本線です。
さらに関節唇損傷が進むと、関節軟骨や骨まで削れ、関節が変形する変形性股関節症に進行しうることが知られています。
病態生理の説明としては「骨の形が悪い → 動作でぶつかる → 関節唇・軟骨が傷む」という単純化が患者説明には有用ですが、医療者側は“どの動き”で“どこが”傷みやすいかを意識すると評価精度が上がります。
特にPINCER型のovercoverageでは、頸部が臼蓋縁へ当たり、関節唇・臼蓋縁軟骨の損傷を起点に関節内障へ進む、というメカニズムが典型的に説明されます。
また、FAIの軟骨は分子学的にも炎症性・異化亢進に関する所見が報告され、変形性股関節症の前段階(precursor)としての側面が議論されています。
大腿骨寛骨臼インピンジメント 原因:成長期とスポーツの反復負荷
FAIの原因は現時点で完全には解明されていないものの、特徴的な過剰骨は成長期に形成されるとされ、一般の人よりアスリートで発症頻度が高いことが知られています。
成長期にスポーツ参加が多いほどCAM病変形成が増える、という関連は総説でも繰り返し触れられており、特に骨端線(physeal closure)前後の時期に高負荷の反復が加わることが、形態形成に関与しうるという考え方が有力です。
臨床的には、深い股関節屈曲を多用する競技(例:サッカー、バスケットボール、アイスホッケー)で頻度が高い傾向が示され、症状の自覚は20〜40代に多いとされています。
ただし「スポーツ=必ずFAI」ではなく、形態があっても生涯無症状の人がいる点は重要で、画像所見のみで病名や原因を固定しない姿勢が必要です。
医療面接では、競技歴(開始年齢、ポジション、練習量)と「痛みが出る肢位(屈曲+内旋+内転など)」をセットで聴取し、反復衝突の再現性を見に行くと、原因説明が具体化します。
大腿骨寛骨臼インピンジメント 原因:無症状形態と症状のズレ(見落とし防止)
FAIは「骨形態がある=必ず痛い」ではなく、生涯症状が出ない人も少なくないため、原因を骨だけに単純化しすぎると説明や治療選択が乱れます。
総説では、FAIが若年の股関節痛の一般的原因であり変形性股関節症へ進行しうる一方、cam/pincer形態の有無と疼痛の関係は単純でないことも指摘されています。
この“ズレ”を埋める臨床的な視点として、股関節だけでなく腰椎・骨盤・大腿のバイオメカニクスがダイナミックインピンジメントに影響しうる、という考え方があり、骨形態+運動制御(可動性・安定性)の両方を評価する発想が役立ちます。
つまり原因の説明は「骨形態異常(静的要因)」に加えて、「動作時に衝突が起こりやすい身体条件(動的要因)」を併記することで、保存療法(運動療法)につながる説明へ変換できます。
独自視点としては、画像で“それっぽい形”を見つけた時ほど、痛みの誘発肢位・日常生活動作(座位、靴下、車の乗降など)での再現性を確認し、原因と症状の因果を「動き」で検証することが、過剰診断と見落としの両方を減らします。
大腿骨寛骨臼インピンジメント 原因:医療者の説明テンプレと鑑別の入口
患者説明のテンプレとしては、「股関節の受け皿(寛骨臼)とボール(大腿骨頭)のどちらかに骨の出っ張りがあり、曲げたりひねったりすると中で骨同士が当たり、周囲の関節唇や軟骨を傷めて痛みが出る」とまとめると誤解が少なくなります。
検査・診断の流れは、問診と身体診察の後にX線とMRIで形態異常や関節唇損傷を評価する、という組み立てが一般向け解説でも採用されており、説明の順序としても実務的です。
X線では通常撮影に加えてDunn viewが重要とされ、通常撮影だけではFAI特有の骨形態異常が確認しにくい場合がある点は、医療者間連携(撮影オーダー)で特に実装価値があります。
鑑別の入口としては、鼠径部痛の原因がFAIだけではないことを前提に、股関節由来か、周囲筋腱・腰椎由来かを“痛みの再現動作”と“画像の整合”で詰める方が安全です(FAI形態の偶発所見があり得るため)。
最後に、保存療法として「衝突が起こる動作の回避」と「筋力訓練・柔軟体操(リハビリ)」が重要で、原因説明を生活・運動指導に接続することが実臨床では最も効果的です。
文中で触れた総説(病因・発生・スポーツとの関連、分子学的所見)参考:Etiology and Pathomechanics of Femoroacetabular Impingement(FAIの病因・病態生理の総説)
日本語での原因・病型・診断・治療(Dunn view、関節唇損傷、変形性股関節症への進行)参考:済生会 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)