化膿性関節炎 指
化膿性関節炎 指の症状と疼痛
化膿性関節炎は、関節内に細菌が侵入して化膿し、急速に関節軟骨を破壊し得る病態です。指の関節(PIP/DIP/MCP)でも同様で、局所症状が軽く見えても関節内では進行していることがあります。
臨床では、疼痛(自発痛・運動痛)、発赤、腫脹、熱感、可動域制限が基本セットで、全身症状(発熱・倦怠感)は必ずしも揃いません。
「指が動かせない」訴えは、痛み回避による自動運動制限なのか、関節内貯留と腫脹で他動運動も強く制限されるのかを分けて把握すると、関節炎らしさが上がります。
医療従事者向けの実務上の注意点として、指は皮下組織が薄く、腫れが“全体にパンパン”というより、関節背側の軽い膨隆や皮膚光沢程度に留まる例があります。
参考)302 Found
逆に痛みが非常に強いのに外見が乏しい場合、早期の関節内感染や、深部(腱鞘・深掌隙)病変の併存も疑います。
また、動かしたときに痛みが跳ね上がる(関節内圧上昇を示唆)ケースでは、穿刺で減圧するだけでも疼痛が軽減し、診断と治療の両面で価値があります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/be37b165da6d8db753b4291f5d030cc0e27dab74
化膿性関節炎 指の原因菌と黄色ブドウ球菌
原因菌として頻度が高いのは黄色ブドウ球菌で、次いで連鎖球菌などが続く、という大枠は指の関節でも同じです。
手の敗血症性関節炎に限ったレビューでは、黄色ブドウ球菌が30〜55%で最多であり、MRSAの比率が地域・集団で大きく変動し得る点が強調されています。
また、動物咬傷が契機の指関節炎ではPasteurella multocidaが一定割合で検出される、という“手ならでは”の微生物学も押さえておくと抗菌薬選択の精度が上がります。
侵入経路は、血行性、周囲組織からの波及、外傷・注射・手術などによる直接侵入の3パターンが基本です。
手指は穿通創(トゲ、針、カッター)、ヒト咬傷、動物咬傷、いわゆるclenched fist injury(拳の打撲でMCP背側から口腔内細菌が入るパターン)など、直接侵入が非常に多い部位です。
さらに、ひょう疽や化膿性腱鞘炎など隣接感染から関節へ波及するルートもあり、関節だけを見て「原因不明」で終わらせない問診・視診が重要です。
抗菌薬開始前に起因菌を押さえる意義は、単に「菌を当てる」だけでなく、MRSAや咬傷関連菌、グラム陰性桿菌が混じりうるという“手の感染症の幅”を適切にカバーするためです。
とくに指の機能は数mm単位の可動域がQOLと就労に響くため、初期治療のズレ(効かない抗菌薬で時間が過ぎる)が予後に直結します。semanticscholar+1
化膿性関節炎 指の診断と関節穿刺
診断の中心は関節穿刺で、関節液(膿性貯留)の確認と、可能ならグラム染色・培養で起因菌同定を狙います。
血液検査では白血球増加、CRP上昇、赤沈亢進などが参考になる一方、指の小関節感染では全身反応が目立たない例もあるため、炎症反応が軽いからといって除外しない姿勢が必要です。
画像は補助で、初期X線で所見が乏しいことがあるため、臨床と穿刺を優先し、必要時に超音波やMRIを組み合わせる方が実務的です。
手のレビューでは、X線は早期に非特異的で、骨髄炎を示す所見は2〜3週以降に出やすいことが述べられており、「初期X線がきれい=感染否定」にはなりません。
超音波は関節内液貯留の検出や小関節穿刺のガイドとして有用とされ、設備があれば救急・外来でも“即日”に診断精度を上げられます。
MRIは軟部組織・骨軟骨破壊の評価に有用ですが、コストと時間遅延があり、急性期は「撮ることで治療が遅れないか」を常に意識します。
穿刺・検体の実務ポイント(手指の小関節でありがちな失敗)を、現場向けに整理します。semanticscholar+1
・抗菌薬投与前に採取する(投与後は培養陽性率が下がる)。
・関節液量が少ないときは、グラム染色・培養を優先し、塗抹や細胞数は“可能なら”で割り切る。
・表層の膿疱や膿がある場合でも、可能な限り「関節内」の検体を取り、表面材料のみで判断しない。
・小関節は針先が関節外に外れやすく、陰性結果が出ても臨床的に疑わしければ再穿刺や切開排膿を検討する。
化膿性関節炎 指の治療と抗菌薬
治療の柱は「関節内の洗浄・排膿(多くは外科的介入)」と「抗菌薬の全身投与」で、破壊された関節は元通りには戻らないため早期介入が最重要です。
手の敗血症性関節炎レビューでも、外科的治療の優先度が高いこと、穿刺のみで済むのは最初期に限られやすいことが述べられています。
感染が残存する場合は24〜48時間以内の再手術を推奨する見解もあり、「一度洗ったから安心」ではなく臨床経過で勝負します。
抗菌薬は経験的治療から開始しつつ、培養結果で必ずde-escalation/最適化を行います。
手のレビューでは、黄色ブドウ球菌や連鎖球菌を意識しつつ、咬傷・地域の耐性状況・基礎疾患でカバー範囲を調整する重要性が示されています。semanticscholar+1
治療期間は議論があり、成人の手の敗血症性関節炎を対象に、術後の抗菌薬2週と4週を比較して差がなかったとするランダム化試験が紹介されており、「漫然と長期」ではなく感染制御と機能回復のバランスで設計する視点が役立ちます。
固定(immobilization)も重要ですが、固定しすぎは拘縮を招きます。
レビューでは、理想的には術後24時間でリハビリ開始とする考えが紹介される一方、病態(軟骨破壊の有無)により数日〜2〜4週の固定を主張する立場もあり、ケースで調整が必要とされています。
実務では、炎症が落ち着いたら「腱・関節の滑走を戻す」ことをゴールに、手外科・作業療法と早期連携するのが機能予後の近道です。
化膿性関節炎 指の独自視点:咬傷と穿通外傷の見逃し
検索上位の一般解説では「原因菌」「症状」「検査」「治療」までは網羅されやすい一方、指に限ると“侵入門戸を見逃す”ことが診断遅延の最大要因になりがちです。
手のレビューでは、手の敗血症性関節炎の多く(85〜90%)は穿通外傷や咬傷、医療操作などの直接侵入が原因とされ、問診で引き出せないと最初から詰みやすいことが示唆されます。
患者は「たいした傷じゃない」「もう塞がった」と表現しやすく、視診でも点状痕しか残らないため、痛みの部位と傷痕の位置関係(関節背側・掌側・側副靱帯近傍など)を丁寧に突き合わせる必要があります。
“意外に効く”実務テクニックとして、咬傷・穿通創を疑うときは、以下の聞き方に変えると情報が出やすくなります。
・「ペット(猫・犬)に触った後、歯が当たった/ひっかかれたことは?」(猫は針のように刺入し深部に菌を残しやすい機序が解説されています)。
・「作業中にトゲ・針・木片・金属片が刺さったことは?」(異物残存は感染遷延の原因になり得ます)。
・「ケンカやスポーツで拳をぶつけた後、MCP背側が腫れたことは?」(clenched fist injuryは口腔内細菌の混入リスクが高いとされています)。
また、基礎疾患の確認は“形式的”ではなく、治療方針の強度を決める材料です。semanticscholar+1
手のレビューでは糖尿病で経過が重く、関節固定術や切断リスクが上がることが述べられており、「少し様子を見る」という選択肢を取りにくい集団が存在します。
済生会の解説でも、糖尿病、透析、ステロイドや免疫抑制薬使用などがリスクとして挙げられており、同じ“指の痛み”でも介入閾値を下げる根拠になります。
(日本語の参考リンク:原因菌・侵入経路・診断(穿刺)・治療(洗浄+抗菌薬)・予防の要点がまとまっています)
(参考リンク:手指の敗血症性関節炎で、咬傷・穿通外傷、早期X線の限界、早期手術、リハビリ開始時期など“手の落とし穴”が体系的に整理されています)
(関連論文:術後抗菌薬2週 vs 4週の非劣性試験で、漫然と長期化しない設計の根拠を与えます)
https://doi.org/10.1136/annrheumdis-2019-215116

一歳三ヶ月の息子が化膿性関節炎から骨髄炎になりました: 《入院生活と予後の手記》 (JS出版)