膝靱帯損傷 治療
膝靱帯損傷 治療の診断とMRI
膝靱帯損傷の治療は、まず「どの靱帯が」「どの程度」損傷しているかを確定し、膝不安定性と合併損傷(半月板・軟骨など)を同時に評価するところから始まります。靱帯損傷は単独に見えても、実際には複合損傷や骨挫傷パターンを伴うことがあり、方針(保存療法か手術療法か、いつ復帰を目指すか)に直結します。ACL損傷の領域では、診断・治療・リハビリまでを含むガイドラインが日本整形外科学会等により整備されており、医療者は「患者の活動性・不安定性・合併損傷」を軸に意思決定する前提が共有されています。
Minds:前十字靱帯(ACL)損傷診療ガイドライン2019(改訂第3版)
現場で説明が難しいのは、「痛みが軽い=軽症」とは限らない点です。ACLのように関節内に位置し血流に乏しい靱帯では、自然治癒が期待しにくい背景があり、スポーツ復帰を目標にする場合に手術が選ばれやすいという整理が患者説明の納得感につながります。逆に、PCLやMCLは比較的保存療法が選ばれることがある、という“靱帯ごとの性格”を先に伝えると、その後の装具・リハビリの話が通りやすくなります。
膝靱帯損傷 治療の保存療法と装具
保存療法の中心は、装具(固定)で靱帯に過剰なストレスがかからない環境を作りつつ、時期を見てリハビリで筋力・可動域・動作を回復させることです。軽度で不安定性が大きくない場合、あるいは日常生活上の支障が限定的な場合には、手術を行わず保存療法が選択されることがあります。保存療法でも“何もしない”わけではなく、痛みや腫脹に応じて内服や関節穿刺などの対症も組み込みながら、運動療法へつなげる設計が必要です。
装具療法の説明では、「目的は治すことだけでなく、治りやすい条件を作り、同時に二次損傷(半月板・軟骨)のリスクを下げること」と明確化すると、装具着用のアドヒアランスが上がります。装具は“可動域を止める”だけではなく、“ぶれ(制動)を抑えて靱帯負担を減らす”役割があり、損傷部位や重症度で選択が変わる点も重要です。ここを曖昧にすると「サポーターなら何でも同じ」という誤解が起きやすく、再受傷の温床になります。
膝靱帯損傷 治療の手術療法と靱帯再建術
手術療法は、靱帯の機能不全が残りやすいタイプの損傷や、スポーツ復帰など高い安定性が求められる場合に検討されます。膝靱帯損傷の手術は、前・後十字靱帯損傷に対しては「靱帯再建術」が行われるのが基本で、MCL単独損傷では手術は少なく、複合損傷などで「靱帯縫合術」が検討される、という整理は押さえておくと説明がぶれません。近年は低侵襲化や成績向上を背景に手術が選択されることも増えている、という臨床的トレンドも患者の意思決定に影響します。
医療従事者向けのポイントは、手術適応を「画像所見」だけで語らないことです。ガイドラインの目次レベルでも、保存治療の有用性、若く活動性の高い患者の手術適応、再建術の時期などが臨床課題として整理されており、“患者背景×不安定性×目標(復帰)”で適応が揺れる領域であることがわかります。外来説明では、術式の話を先にしすぎず、「何のために安定性を再獲得するのか(再受傷予防・二次損傷予防・競技復帰)」を先に共有するのが実務的です。
Minds:ACL損傷診療ガイドライン(保存・手術適応・時期)
膝靱帯損傷 治療のリハビリと可動域
膝靱帯損傷の治療では、保存療法でも手術療法でもリハビリが成否を決め、時期に応じて「炎症を悪化させない」「可動域を落としすぎない」「筋力を戻す」「動作を再学習する」を段階的に行います。受傷直後は炎症や内出血があり、無理に動かすと炎症が悪化し得るため、安静・アイシング・松葉杖などで負荷調整しながら拘縮や筋力低下を防ぐ、という初期設計が基本です。腫れや痛みが落ち着いたら、可動域運動、筋力訓練、バランス練習や動作の再学習へ進め、膝だけでなく股関節や足関節の影響も確認しながら介入する、という考え方が示されています。
医療者が見落としやすい“意外な盲点”は、痛みの消失と機能回復が一致しないことです。疼痛が引いても、筋出力(特に大腿四頭筋)と動作制御が戻っていないと、膝が内側に入る動作(いわゆるknee-in toe-out)などを誘発し、再損傷リスクを上げます。したがって、患者説明では「痛くないからOK」ではなく「痛くない状態で正しく動ける・耐えられる」をゴールに置き、復帰基準を言語化することが重要です。
バランス練習・動作再学習と再発予防(knee-in toe-out)
膝靱帯損傷 治療の独自視点:合併損傷と説明設計
検索上位の多くは「保存療法か手術か」を中心に書かれますが、臨床では“説明設計”そのものが治療の一部になります。たとえば「関節の不安定性が残ると軟骨や関節の変性が起こりやすい」という説明は、患者が装具・リハビリを継続する動機づけとして非常に強力です。ここを単に脅し文句にせず、「だからこそ、段階的に安定性を獲得する」「必要なら手術で安定性を再構築する」という前向きな因果に組み替えると、医療不信を避けながら行動変容につながります。
さらに一歩踏み込むなら、患者の“生活背景”を治療計画に翻訳して提示するのが効果的です。たとえば「仕事でしゃがみ込みが多い」「育児で抱っこしながら階段」「競技復帰の期限がある」などを聴取し、保存療法・手術療法のメリット/デメリットを、その人の行動単位に落として説明します。ACL領域では診療ガイドラインとして「保存治療と手術適応」や「リハビリ・スポーツ復帰」が大きな章として整理されているため、説明の軸を“患者の目標と復帰”に置くこと自体がガイドラインの枠組みにも整合します。
Minds:ACL損傷診療ガイドライン(保存・手術適応・リハビリ・復帰)
有用:ACLの診療方針(保存治療・手術適応・リハビリの章立てが確認できる)
有用:膝靱帯損傷の保存療法と手術療法、リハビリの具体的な流れ(装具・可動域・筋力・動作再学習)
https://www.itojoint.jp/knee_ligament_injury/chiryou.html

膝靱帯損傷の治療およびリハビリテーション (Monthly Book Medical Rehabilitation(メディカルリハビリテーション))