再発性多発軟骨炎と診断基準と気道軟骨炎

再発性多発軟骨炎と診断基準

再発性多発軟骨炎 診断基準の要点
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基準は複数を“照合”する

研究班基準に加え、McAdam・Damiani・Michetを並行参照すると、時相差のある症状を拾いやすい。

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気道軟骨炎は最重要の予後規定

気道病変は重症化・死亡に直結し、耳介症状が乏しい型では診断まで時間がかかりやすい。

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生検は部位選択が鍵

気道病変での生検は危険性があり回避が推奨される一方、耳介は状況により診断補強に有用。

再発性多発軟骨炎の診断基準の全体像(研究班・McAdam・Damiani・Michet)

 

再発性多発軟骨炎(RP)は、耳介・鼻・喉頭気管などの軟骨に再発性炎症を起こす希少疾患で、診断に特異的な単独マーカーが現時点では確立していないため、臨床所見と補助検査を組み合わせて診断します。

日本の難病情報(指定難病55)では、診断基準項目として「両側性の耳介軟骨炎」「非びらん性・血清陰性の炎症性多発性関節炎」「鼻軟骨炎」「眼の炎症」「気道軟骨炎」「蝸牛/前庭機能障害」を掲げ、①3項目以上、②1項目以上+確定的な組織所見、③解剖学的に離れた2カ所以上で陽性+ステロイド/ダプソン反応、のいずれかで診断カテゴリーに入ります。

一方で国際的・歴史的には、McAdam(1976)、Damiani & Levine(1979)、Michet(1986)という臨床ベースの診断基準が用いられてきた経緯があり、研究班ガイドライン草稿でも「いずれの診断基準にも照会することが好ましい」とされています。

医療現場での実務上は、「研究班基準で行政的・臨床的に整合をとりつつ、McAdam/Damiani/Michetで拾い上げの漏れを減らす」という二段構えが安全です。pmc.ncbi.nlm.nih+1​

特に発症早期は症状が同時に揃わず、耳介→関節→眼→気道のように時相がズレて出現するため、診断基準を“単発で満たすか”だけを見てしまうと見逃しやすい点が落とし穴になります。jbji.copernicus+1​

再発性多発軟骨炎の診断基準項目(耳介軟骨炎・鼻軟骨炎・関節炎・眼の炎症・前庭)

診断基準項目の中で、頻度と臨床的手がかりとして特に強いのが耳介軟骨炎です。

難病情報の概要では耳介軟骨炎が全経過で78%と最多で、次いで気道軟骨50%、鼻軟骨39%、関節軟骨39%とされ、耳介所見の有無は疑いを立てる初動に直結します。

典型的な耳介軟骨炎は、耳介の疼痛・腫脹・発赤を伴い、耳垂(脂肪組織)を比較的温存しやすいとされ、感染性蜂窩織炎や外傷後炎症との鑑別では「反復性」「左右差/移動」「他部位軟骨炎の併発」を丁寧に拾うことが重要です。

関節炎は「非びらん性・血清陰性・炎症性多発性関節炎」と整理されており、RA様に見えてもびらんが乏しい、RF/抗CCPが陰性のことがある、という“違和感”が診断の入口になります。

参考)https://jbji.copernicus.org/articles/9/37/2024/jbji-9-37-2024.pdf

眼病変は結膜炎・角膜炎・強膜炎・上強膜炎・ぶどう膜炎など幅が広く、耳介や関節の症状が軽い時期に眼科から逆紹介されて初めてRPが疑われるケースも想定すべきです。

蝸牛/前庭機能障害(神経性難聴、耳鳴、めまい)は、単独だと耳鼻科領域の鑑別が膨大ですが、軟骨炎の既往と結びついた瞬間に診断確度が跳ね上がるため、既往歴の再確認が有効です。

なお「RPに特異的な検査所見は存在しない」ため、CRPや赤沈は活動性の参考にはなっても、陰性だから除外できるものではありません。

この“決め手に欠ける感じ”そのものがRPらしさでもあり、診断基準の項目を系統的に棚卸しする作業が、結局は最短ルートになります。

再発性多発軟骨炎の診断基準で重要な気道軟骨炎(生検・呼吸機能・CT・PET/CT)

気道軟骨炎(喉頭、気管、気管支)は、RPの最大の予後規定因子になり得るため、「診断基準を満たすか」だけでなく「気道評価をいつ・どこまでやるか」が医療安全上の核心です。

難病情報でも高度の気道病変は呼吸不全を来し得ると明記され、呼吸器関連が死亡原因の約半数を占める旨が述べられています。

さらに研究班ガイドライン草稿では、耳介軟骨炎がない気道優位の群は初回受診から診断確定までの期間が有意に長い可能性が指摘されており、喘息・慢性気管支炎・反復性喉頭炎の“治療抵抗性”の裏にRPが潜むシナリオを想定する必要があります。

生検については、研究班ガイドライン草稿が「気道軟骨炎においては炎症を誘発するため危険であり、実施は回避することが好ましい」としており、気道から“確定診断を取りにいく”発想はまず危険です。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7745290/

一方で、同草稿は「声門直下狭窄で気管切開を要する場合には、その際の生検組織像が診断に有用となりうる」としており、救命処置と同時に得られる組織を診断に活かす、という現実的な線引きが示されています。

また、気道病変の経過観察として、呼吸機能検査(スパイロ、フローボリューム)を診断時および経過中に年1回行う推奨が記載され、無症状でも所見が出現し得る点が強調されています。

画像では、呼気時CTで虚脱を評価することが最重症型(気管気管支軟化症)の探索に重要とされ、被ばく増加のデメリットと、進行例の早期把握というベネフィットを天秤にかけて運用します。

加えて、保険適用外の論点は残るものの、PET/CTの診断的価値が気道病変・他臓器病変のいずれでも高い可能性が述べられており、症状と内視鏡所見だけで詰めきれない時の“全身の炎症マッピング”として有力です。

再発性多発軟骨炎の診断基準と鑑別(感染・血管炎・VEXAS症候群)

RPは症状が多彩で、しかも特異的検査がないため、診断基準を満たす前段階では鑑別が診療の大部分を占めます。

まず感染症は常に最優先の鑑別で、耳介の発赤腫脹、気道症状、発熱、炎症反応上昇が揃うと、抗菌薬反応性の評価や培養・画像評価を並行しないと“免疫抑制開始の誤り”につながります。

血管炎や他の膠原病とのオーバーラップもあり得るため、眼症状・神経症状・心血管病変を見たらRP単独と決め打ちせず、全身疾患の枠組みで再整理する姿勢が必要です。

ここで、近年の意外な(しかし重要な)論点がVEXAS症候群です。

研究班ガイドライン草稿ではVEXASを独立節で扱い、UBA1遺伝子の体細胞変異に関連する成人発症の重篤な炎症性疾患で、頻回の発熱や皮膚病変、血栓症、大球性貧血、骨髄異形成症候群などに加えて、半数程度で軟骨炎を合併し得ることが記載されています。

臨床的には「中年以降の男性」「大球性貧血や血球異常」「炎症が強いのに典型的自己抗体が決め手にならない」といった文脈で、RP様の耳介・鼻軟骨炎が出た時にVEXASを想起できるかが分水嶺になり得ます。

つまり、RPの診断基準を満たして見える症例でも、“RP単独”なのか、“VEXASなど別疾患に伴う軟骨炎”なのかで、予後・モニタリング(血液学的合併症の追跡)・治療優先順位が変わる可能性があります。

診断基準はあくまで入口であり、鑑別を狭める道具として使いながら、病型(特に気道型)や合併症リスクを同時に見積もることが、医療従事者向け記事として最も実用的です。pmc.ncbi.nlm.nih+1​

再発性多発軟骨炎の診断基準の独自視点:診断が遅れるパターンと問診テンプレ

検索上位の解説は「診断基準の列挙」に寄りがちですが、現場で効くのは“診断が遅れるパターンの予防策”です。

研究班ガイドライン草稿が指摘するように、耳介所見が乏しい気道優位例は診断まで時間がかかりやすく、さらに気道病変は重症化しやすいという、最も避けたい組み合わせが起こり得ます。

このため、診断基準を満たすかどうかの前に、外来の短時間で「疑いを持てる問診テンプレ」を用意しておくことが、実質的に診断率を上げます。

以下は“軟骨炎の連結”を作るための実務テンプレです(どれも診断基準項目に直結します)。

✅ 反復性の耳介痛・耳介腫脹:片側→反対側へ移ったことはあるか(耳垂は巻き込まれたか)pmc.ncbi.nlm.nih+1​

✅ 鼻閉・鼻梁痛・鞍鼻の進行:副鼻腔炎として治療され続けていないか​
✅ 嗄声・吸気性喘鳴・“喘息治療抵抗性”:夜間悪化、体位で変動、呼吸機能のフローボリューム異常の指摘歴​
✅ 眼科通院歴:強膜炎・上強膜炎・ぶどう膜炎でステロイド点眼/全身投与が入ったことがあるか​
✅ 難聴・めまい・耳鳴:突発性難聴として扱われた既往の有無​

さらに“意外に効く”のが、治療反応の記録です。

難病情報の診断カテゴリーにも「ステロイド/ダプソン治療に反応」が組み込まれているように、反応性そのものが診断の後押しになる場面があります。

ただし、反応がある=RP確定ではなく、感染や他の炎症性疾患でも症状が軽快し得るため、反応性は「診断基準を満たすための1要素」かつ「鑑別を進める追加情報」として慎重に扱うべきです。

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診断基準(研究班基準の該当項目と診断カテゴリー、重症度分類の考え方)がまとまっており、医療者向けに実務的です。

難病情報センター:再発性多発軟骨炎(指定難病55)

診断に「Damiani基準を推奨」、気道病変での生検回避、呼吸機能・CT・PET/CTの位置づけ、VEXAS症候群の注意点まで俯瞰できます。

厚生労働科学研究成果:再発性多発軟骨炎診断・治療ガイドライン(草稿)

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