偽半盲と心因性視覚障害
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偽半盲の定義と心因性視覚障害の位置づけ
「偽半盲」は、見かけ上は半盲(とくに同名半盲様)に見えるのに、視路障害などの器質的病変と整合しない視野所見・臨床経過を示す状態を、臨床的にまとめて呼ぶ時に用いられます(用語として厳密な統一定義があるというより、現場での“疑わしい半盲”のニュアンスで使われがちです)。
医療者として重要なのは、「偽」という言葉から“詐病”を連想して患者を断罪しないことです。心因性視覚障害は心理的要因による視機能異常で、本人は本当に見えにくいと感じており、嘘をついているわけではない点が強調されています。
心因性視覚障害は除外診断であり、眼に器質的疾患がないことが前提なので、眼底検査などで器質疾患を否定するプロセスが必須です。
参考)心因性視覚障害
また、視機能異常として視力低下だけでなく視野異常も起こり得るため、「半盲っぽい」だけで即座に中枢病変へ短絡せず、逆に「心因性っぽい」だけで中枢病変を見落とさない、両方向の慎重さが必要です。yoshida-hp+1
偽半盲を疑う視野検査(ハンフリー)ポイント
ハンフリー視野計では、結果そのものより前に「信頼性指標」を確認するのが安全策です。固視不良(Fixation Loss)、偽陽性(False Positive)、偽陰性(False Negative)の3つが基本として整理されています。
固視不良は盲点(Mariotte盲点)に刺激を提示して反応があった割合で評価する仕組みで、記事内では基準値として20%未満が示されています。
偽陽性は「見えていないのに押す」反応で、SITAでは反応速度などから推定してカウントする、という説明があり、これが視野のばらつきに大きく影響する点が強調されています。
偽陰性は「見えているはずの刺激に反応しない」指標で、SITAでは正常(またはほぼ正常)な感度点に対して閾値より明るい刺激を提示して反応しない割合として扱う、という整理がされています。
偽半盲を疑う実務上のコツは、半盲様パターンが出たときに、(1)信頼性指標が悪くないか、(2)検査中の患者の反応が“当てにいっている”感じになっていないか、(3)説明や休憩、再検でパターンが変化しないか、をセットで見ることです。
特に心因性視覚障害では、検査前の声かけや誘導で正常化することがあるとされ、再検査戦略そのものが鑑別の一部になります。
偽半盲の鑑別:器質疾患(視路障害)とのズレを拾う
半盲(とくに同名半盲)は、視交叉以降の脳内視覚路の障害で両眼視野に欠損が出る、という基本が整理されています。
このため、訴えや視野図が「同名半盲っぽい」のに、神経学的に辻褄が合わない(症状が変動する、整合的な随伴症状が乏しい、検査ごとに欠損が移動する等)場合に、偽半盲として再評価する臨床判断が生まれます。
心因性視覚障害は器質疾患がないことが前提なので、眼科的に角膜・水晶体・網膜などに明らかな異常がないかを確認し、必要に応じてMRI等で「本当に心理的問題以外に病気がないか」を確認する流れが示されています。
また、心因性視覚障害では「らせん状視野」「管状視野狭窄」といった、通常の眼疾患による視野異常とは異なるパターンが出ることがある、と具体例が挙げられています。
一方で、現場の安全管理としては、「心因性っぽいから画像検査不要」と決め打ちするのではなく、危険な鑑別(脳血管障害など)を落とさない設計が重要です。yoshida-hp+1
医師—視能訓練士—看護師で情報を揃え、視野図・信頼性指標・検査中の挙動・眼底/神経所見を束ねて評価すると、“ズレ”が見えやすくなります。
偽半盲の患者対応:詐盲と決めつけない説明と環境調整
心因性視覚障害は、心理的要因で視機能異常が起きる一方、本人は本当に見えないと感じており、嘘ではないという点が明記されています。
この前提を共有せずに「気のせい」「わざと」と扱うと、診療関係が崩れ、再検査やフォローアップが途切れて安全確認の機会を失うリスクが上がります。
原因としては、家庭環境・学校環境・対人関係・宿題や習い事の負担など、些細にも見えるストレスが背景になることがあると説明されています。
治療・管理では、まず心理的ストレスを取り除くこと、家族を含めた周囲の理解と協力が重要で、改善しない場合は心療内科や(小児)精神科の受診が必要になることがある、とされています。
医療従事者向けの実務としては、説明のポイントを「異常がない=問題がない」ではなく、「目自体の重い病気はまず否定的だが、見え方の困りごとは現実にある」に置くと、患者の防衛反応を下げやすいです。
さらに、視野検査は“頑張り”で結果が歪みやすいので、「見えた時だけ押す」「迷ったら押さない」などルールを短く具体化し、疲労・眠気があれば中断する運用が有効です。
偽半盲の独自視点:検査設計(説明・再現性・チーム連携)で診断精度を上げる
検索上位では「心因性か器質か」の二択に寄りがちですが、実臨床では“検査設計の質”が診断精度を左右します。ハンフリー視野計の信頼性指標は、検査が成立しているかどうかの最低条件を数値で示すため、半盲様パターンの解釈より先に確認する価値があります。
特に偽陽性は、SITAでは反応速度を手がかりに推定され、検査結果のばらつきに強く影響するという指摘があり、「半盲が出た=病変」ではなく「半盲が出たが偽陽性が高い=結果が壊れている可能性」をまず疑えます。
また、心因性視覚障害では声かけや誘導で視野異常が正常化することがあるため、“同日内の再検”や“説明を変えた再検”が、単なるやり直しではなく臨床情報になります。
ここで意外に効くのが、医師と視能訓練士で説明文言を揃えることです(説明が揺れると患者は「押し方が正しいか」に過度に注意が向き、偽陽性や反応の癖が増えやすい)。
チーム連携の具体例として、検査室での観察(瞬きの多さ、固視の癖、反応のリズム)を、外来での診察所見(眼底、訴えの変動、生活背景)と合流させると、偽半盲の“検査由来のアーチファクト”が見抜きやすくなります。
最後に、偽半盲が疑われても「器質疾患がゼロ」とは限らないため、危険な中枢病変の除外を優先する姿勢(必要時MRIなど)を運用として固定しておくと、担当者が変わっても安全性が担保されます。yoshida-hp+1
心因性視覚障害の診断・治療の考え方(除外診断、らせん状視野・管状視野狭窄、声かけで正常化する可能性、必要時MRIなど)。
ハンフリー視野計の信頼性指標(固視不良・偽陽性・偽陰性)と、SITAでのカウント方法の実務的理解。