内斜頚斜視と診断と治療
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内斜頚斜視の定義と内斜視と斜頸の関係
内斜頚斜視という表現は、臨床では「内斜視(水平偏位)」と「斜頸(異常頭位)」が同時に見えている状態を指して用いられることが多く、実態としては“内斜視そのもの”よりも“眼性斜頸を起こす背景”の読み解きが重要になります。
斜頸は「普段から首を傾けている状態」であり、原因は大別して、目の動きが原因の眼性斜頸と、首の筋(胸鎖乳突筋など)が原因の筋性斜頸があります。
眼性斜頸は、眼球の上下ずれを首の傾きで直そうとして生じ、眼球を上下に動かす筋の麻痺が原因となり、代表例が上斜筋麻痺です。
ここで重要なのは、内斜視を見つけた瞬間に「内斜視=内寄せだけの問題」と短絡しないことです。内斜視は右眼か左眼どちらかの視線が内側に向かう状態で、発症時期・原因・調節性の有無・斜視角の程度・変動などで分類されます。
参考)302 Found
また、両眼が外側へ動きにくい場合には、両眼が内側へ寄り、顔をどちらかに回して片眼で見ようとすることがあるため、頭位(顔の回旋)と眼位(内斜)をセットで観察する必要があります。
したがって「内斜頚斜視」を見たら、(1)眼位(水平・垂直・回旋)(2)眼球運動制限の有無 (3)頭位で症状が改善する理由、の3点を言語化してチーム共有するのが実務的です。
内斜頚斜視の原因:乳児(先天)内斜視と調節性内斜視
小児で内斜視が疑われるとき、まず乳児(先天)内斜視と、調節性内斜視を分けて考えると、検査計画と家族説明が整理しやすくなります。
乳児(先天)内斜視は生後6か月以内に発症した内斜視を指し、原因は遺伝・解剖学的原因・筋肉の異常・神経系の異常など諸説あるものの、はっきりしていないとされています。
症状は片眼が内側に大きくずれることが典型で、交代性に右眼・左眼が内側に寄ることもあり、結果的に両眼が内側に寄っているように見える場合があります。
一方、調節性内斜視は「遠視を矯正する眼鏡をかけると眼位ずれがなくなる内斜視」とされ、遠視があり、物をはっきり見ようとして調節(ピント合わせ)が過剰に働くことで生じます。
初期は正常の時と内斜視の時が混在し、近見で内斜視が出やすく、次第に遠見でも内斜視が出るという時間経過があり得るため、家族が持参する日常写真・動画の価値が高いタイプです。
さらに部分調節性内斜視のように「眼鏡をかけても内斜視が残る」型もあり、治療が眼鏡単独で終わるのか、プリズムや手術検討へ進むのかが分岐します。
内斜頚斜視の“頚”の部分(斜頸)については、内斜視のために頭位を変えているケースと、上斜筋麻痺など垂直・回旋要素のために頭位を変えているケースが混在します。
参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jja2.12939
そのため「内斜視がある=内斜視が斜頸を作っている」と決めず、眼性斜頸の代表である上斜筋麻痺を常に鑑別に残しておく、という姿勢が安全です。
内斜頚斜視の診断:眼位と眼球運動と写真の使い方
診断の基本は、発症時期の見極め、眼の揺れの有無、眼が十分に外側へ動くか(外転の評価)を確認することです。
1歳以上で初めて眼科受診する場合、生後すぐの写真を持参して発症時期を確認する、という具体的な方法が推奨されています。
眼科では眼位ずれの量を測定し、他に原因がないか確認するため、乳幼児用の視力表を用いた視力検査、屈折検査、眼球運動検査などを行い鑑別していきます。
内斜頚斜視で「頚(くび)の傾き」が目立つ場合は、筋性斜頸との鑑別が実務上の落とし穴になります。斜頸には眼性斜頸と筋性斜頸があり、眼性斜頸は眼球運動の異常が原因で、筋性斜頸は胸鎖乳突筋などが固いことが原因です。
眼性斜頸は首の傾きだけを直すと本人は上下にずれて見えるため、原因である眼球運動を治療する必要がある、と明確にされています。
つまり、整形外科的に姿勢矯正・筋緊張改善へ走る前に、「どの頭位で眼位が改善するのか」「頭位を戻すと複視・不快が増えるのか」を観察し、眼科評価へつなぐ判断が重要です。
医療従事者向けの現場Tipsとしては、以下のような“すぐ使える記載”がチーム連携に役立ちます。
- 観察:安静時の頭位(回旋・側屈・顎上げ下げ)と、注視時(テレビ/絵本/遠見)での変化。
- 簡易確認:片眼遮閉で頭位が変わるか(両眼視を使った代償かの推定)。
- 記録:家族スマホ動画の撮影条件(距離、注視目標、疲労時、眼鏡装用の有無)。
こうした記録は、内斜視の「変動」や、調節性内斜視の近見優位などを説明する材料になり、屈折検査・眼鏡装用後の評価にもつながります。
内斜頚斜視の治療:眼鏡と弱視と斜視手術の考え方
治療は、内斜視のタイプにより大きく異なり、乳児(先天)内斜視では眼位ずれが大きいため斜視手術が必要なことが多く、両眼視機能の獲得には早めの手術が望ましいとされています。
また、斜視によって弱視が生じている場合には、弱視に対する訓練が必要とされます。
家族には「見た目」だけでなく、両眼視(立体感・奥行き感など)の発達に関わる可能性を含めて説明することで、治療の優先度が共有しやすくなります。
調節性内斜視では、遠視を矯正する眼鏡で眼位が正位化するかを確認し、眼鏡をかけたときにだけ内斜視は治るが、遠視が治るわけではないので矯正は継続的に必要、という点が核心です。
さらに、調節性内斜視の管理では、調節を一時的に麻痺させる点眼を用いて屈折度数を測定し、その結果に基づき眼鏡を処方し、1~3か月で眼位が変化することがあるため経過観察が必要とされています。
部分調節性内斜視のように眼鏡装用後も遠近ともに10△以上のずれが残る場合は、残存角が大きければ手術、小さければプリズムで両眼視機能を養うことがある、と整理できます。
斜頸(頚)の治療方針は、眼性か筋性かで“治療の主体”が変わる点を強調すべきです。眼性斜頸は眼球運動の治療が必要で、筋性斜頸は整形外科での診断・治療が必要とされています。
したがって内斜頚斜視では、眼鏡や手術の話の前に「首の傾きは結果であり、原因を外さない」説明を挟むと、不要な介入や受診の遅れを減らせます。
内斜頚斜視の独自視点:首の矯正が招く見え方の破綻
検索上位の一般解説では「斜頸=姿勢の問題」に読まれがちですが、医療者側が強調すべき“意外な落とし穴”は、眼性斜頸に対して首の傾きだけを矯正すると、本人は上下にずれて見える(見え方の破綻が表面化する)可能性がある点です。
これは単なる注意喚起ではなく、リハビリや装具、徒手矯正などの介入設計に直結し、眼位異常を補う代償頭位を奪うことで症状が悪化するシナリオを事前に説明できるかが、チーム医療の質を左右します。
特に小児では「訴えられない不快」が行動変化(注視回避、集中低下、転倒増加)として現れることがあり得るため、介入前後での注視行動・頭位・眼位を同じ条件で観察する運用が現実的です。
また、内斜視には急性内斜視のように突然発症し、成人では複視を訴えることがあり、原因不明のこともあるが器質的疾患を伴うのでMRIなどで検査が必要とされる型もあります。
内斜頚斜視として来院したケースで「急な内斜+頭位異常」があれば、単なる姿勢癖ではなく、急性内斜視の枠組みで神経学的背景まで含めて考えるべき状況があり得ます。
この観点を共有しておくと、現場で“首の症状”として入口を誤るリスクを下げ、必要な検査・紹介の優先順位を上げられます。
眼性斜頸(眼の動きが原因の斜頸)の概要が整理されている参考。
内斜視の分類(乳児内斜視、後天内斜視、調節性内斜視、部分調節性内斜視)と診断・治療の要点がまとまっている参考。
https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus3