外傷性眼筋麻痺と複視
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外傷性眼筋麻痺の複視と眼球運動障害の見分け方
外傷性眼筋麻痺は、外傷後に「眼球運動障害」と「複視」を主症状として出現し、麻痺性斜視として捉えると整理しやすいです。
麻痺性斜視では突然に複視を自覚するのが特徴で、複視が強くなる視方向を避けるように顔を回したり頭を傾けたりする「頭位異常」が診察上の手がかりになります。
一方で乳幼児や先天性では複視を自覚しないことがあり、代償機転の結果として弱視や両眼視機能の発達不全につながり得るため、「複視がない=軽い」とは限らない点に注意します。
臨床では「単眼性か両眼性か」を最初に切り分け、両眼性複視なら眼位ずれ(斜視)を疑い、次に外傷機転から神経損傷か眼窩由来かを考えます。jstage.jst+1
頭頸部外傷でもⅢ・Ⅳ・Ⅵ脳神経損傷が起こり得るため、眼の周囲に目立つ打撲が乏しくても眼球運動障害が成立することがあります。
参考)顔面神経麻痺の既往のあるTolosa-Hunt syndro…
医療従事者向けの実務としては、眼位(正面視でのずれ)、9方向眼位、眼瞼下垂・瞳孔異常、眼球運動時痛の有無をセットで記録し、経時変化を追える形にしておくと紹介・引継ぎが円滑です。pmc.ncbi.nlm.nih+1
外傷性眼筋麻痺と動眼神経麻痺と滑車神経麻痺と外転神経麻痺
外傷性眼筋麻痺という言葉は、外眼筋そのものの損傷や絞扼だけでなく、支配神経(Ⅲ・Ⅳ・Ⅵ)の障害で生じる麻痺性斜視も含めて臨床上扱われます。
動眼神経麻痺では、眼球を動かす複数の外眼筋に加え眼瞼挙筋や瞳孔括約筋にも関与するため、複視に加えて眼瞼下垂や瞳孔異常が併発し得る点が重要です。
また急性の動眼神経麻痺は動脈瘤が原因のことがあり、生命に直結し得るため、疑えば緊急で画像評価が必要とされています。
滑車神経麻痺は上斜筋麻痺で、成人の後天性原因として頭部外傷が多いこと、下方視で複視が強く階段下降が困難になり得ることが実地で役立つポイントです。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11543839/
外転神経麻痺は外直筋麻痺で、麻痺眼の外転制限と内斜視により水平性の複視が起こり、外傷を含む多様な原因疾患を想定して早期に画像検査や全身検索が必要とされています。
外傷後の複視では「単独神経麻痺に見える」場合でも、複数神経麻痺や眼窩先端部症候群のような重篤病態を念頭に置く設計が安全で、少なくとも神経所見と眼所見の両方のスクリーニングが求められます。
外傷性眼筋麻痺と眼窩吹き抜け骨折のCTと嵌頓
外傷性眼筋麻痺の原因が「眼窩吹き抜け骨折(眼窩壁・眼窩底骨折)」にある場合、眼球運動障害の機序として外眼筋損傷、支配神経損傷、骨折部への外眼筋嵌頓が挙げられます。
このうち嵌頓(いわゆる外眼筋トラップ)は、眼球運動制限だけでなく、受傷直後の迷走神経反射症状の回避が治療目的に含まれるほど急性期対応が重要です。
現場では、眼球運動痛が強い、運動制限が高度、悪心・嘔吐を繰り返す、小児で受傷状況のわりに腫脹や皮下出血が少ない、といった所見が揃うときに「絞扼」を強く疑います。
小児は眼球心臓反射(Aschner反射、三叉迷走神経反射)が出やすく、眼窩骨折のトラップ型で徐脈、嘔吐などが生じることが示されています。
このパターンは、眼科救急だけでなく救急外来・小児科当直で最初に遭遇しやすく、嘔吐を「脳震盪」だけに帰してしまうと眼窩由来の緊急性を見逃し得るため、眼球運動とバイタル(特に脈拍)をセットで評価する運用が有効です。
手術のタイミングや適応は施設方針や病態で異なりますが、「適切な診断」と「緊急・早期の治療開始」が視機能を守る鍵である点は強調されています。
外傷性眼筋麻痺の検査:CT・MRIと眼球運動検査
麻痺性斜視(外傷性眼筋麻痺を含む)では、原因検索のためにCTやMRIなどの画像検査を早急に行う必要があるケースがあり、特に後天性の動眼神経麻痺では動脈瘤を疑う状況で緊急評価が求められます。
外転神経麻痺でも後天性の場合は原因疾患の鑑別のため早期の画像検査や全身検索が必要とされ、外傷だけに限定せず鑑別を広く取る姿勢が安全です。
滑車神経麻痺では、先天性の鑑別にCT/MRIで上斜筋低形成を確認すると診断が確実になる、というように画像が「原因検索」だけでなく「病型同定」にも役立ちます。
ベッドサイドで即日できる評価としては、9方向眼位、眼球運動制限の方向、頭位異常、眼瞼下垂・瞳孔所見の確認が基本で、記録が後日の手術適応判断や経過観察に直結します。
外傷外来では「複視が主訴」でも、視機能は視力・視野・色覚だけでなく眼球運動や輻輳など多機能であるため、問診では日常生活(運転、階段、読書、近業)で困る場面を具体化して聞くと見落としが減ります。
意外に盲点になりやすいのは、眼や顔面を強打していないのに頭頸部外傷で複視や視機能障害が出るケースで、外傷歴の聴取を「眼の打撲」だけに限定しないことが重要です。
外傷性眼筋麻痺の独自視点:眼球心臓反射と「嘔吐」トリアージ
検索上位では複視・眼球運動障害の説明に焦点が当たりがちですが、臨床の独自視点として「嘔吐」をどうトリアージするかは外傷性眼筋麻痺の安全管理に直結します。
眼窩骨折の外眼筋トラップ型では、急激な眼球・眼窩圧上昇や外眼筋牽引により徐脈や嘔吐が生じる眼球心臓反射が起こり得て、小児で感受性が高いことが示されています。
つまり「顔面打撲+嘔吐」は頭部CTの適応検討だけで完結せず、脈拍低下や眼球運動痛・運動制限を伴えば、眼窩由来の緊急性を優先して眼科・形成外科/耳鼻科(施設体制による)へ早期に接続する判断が必要になります。
運用上の工夫として、救急初療のテンプレに「眼球運動(上下左右)」「複視の有無」「眼球運動時痛」「脈拍」「悪心嘔吐」を同じ行に並べ、見逃しやすい組合せ(運動制限+嘔吐+徐脈)を可視化するとチーム内で共有しやすくなります。
また、麻痺性斜視の患者は複視を避けるために頭位異常を取ることがあるため、診察室に入ってくる時点の姿勢(顔回し・頭部傾斜)を観察所見として記録するのは、忙しい外来で取りこぼしにくい実践的手段です。
この「行動観察」は画像や数値が出る前に拾える情報であり、紹介状や救急記録に残ると後日の経過評価(改善・固定)にも役立ちます。
外傷性眼筋麻痺は自然軽快するタイプもありますが、外傷や血管性、ウイルス性などではプリズムや遮閉などで複視を回避しつつ経過を見る選択肢が示されており、ただし6か月を目安に手術検討が語られています。
一方でトラップ型眼窩骨折のように「待つ」ことが不利益になり得る病態もあるため、同じ“複視”でも緊急度の層別化が医療安全の核心になります。
外来・救急で迷った場合は、複視の方向性や眼球運動制限の程度だけでなく、悪心嘔吐・徐脈・眼球運動痛といった随伴症状を重く評価する、という共通言語を持つと判断がぶれにくくなります。
参考リンク(眼球心臓反射・外眼筋トラップ型、外傷性視機能障害の診断と治療の実例がまとまっている)
参考リンク(麻痺性斜視:動眼神経麻痺・滑車神経麻痺・外転神経麻痺の原因、症状、診断、治療の要点)