非調節性内斜視と診断治療手術

非調節性内斜視と診断

非調節性内斜視:臨床で迷いやすい要点
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まず「調節性」を除外する

散瞳下屈折で遠視を拾い、眼鏡で眼位が改善しない(遠近とも内斜視が残る)かを確認する。

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急性発症はMRIも視野

急性内斜視は器質的疾患を伴うことがあり、症状や所見によっては画像検査の検討が必要。

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ICT機器・視距離が絡む例

若年者の急性後天共同性内斜視では、未矯正近視+極端な近業・短い視距離が誘因になり得る。


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非調節性内斜視の原因と分類(基礎型・後天内斜視・急性内斜視)

非調節性内斜視は、一般に「遠視矯正(眼鏡)で眼位が改善しない内斜視」を臨床的に指すことが多く、後天内斜視(基礎型内斜視、周期内斜視、急性内斜視など)という枠組みの中で捉えると整理しやすいです。日本弱視斜視学会の解説でも、後天内斜視は生後6か月以降に発症し、基礎型内斜視・調節性内斜視・周期内斜視・急性内斜視を含む、とされています。

臨床で重要なのは「発症時期と経過」で、基礎型内斜視は徐々に斜視角が増え、遠見と近見のずれが同程度で、眼鏡で治らない特徴が示されています。急性内斜視は突然発症し、成人では複視を訴えることがある一方、原因不明のこともあるが器質的疾患を伴う場合があるためMRIなどが必要、と注意喚起されています。

また、急性後天共同性内斜視(AACE)は、外眼筋麻痺がない共同性内斜視として扱われ、若年~青年期に増えているという報告があり、近年の生活環境(デジタル近業)と合わせて理解すると診療の解像度が上がります。

非調節性内斜視の診断(屈折検査・眼鏡・斜視角・遠見近見)

診断の第一歩は、調節性要因を丁寧に除外することです。日本弱視斜視学会の説明では、後天内斜視の治療・管理として「まず遠視がないか確認し、角度の変動がないかチェック」し、眼鏡でも治らない場合はずれの量に基づいて手術をする、という流れが示されています。

実務的には、①散瞳下屈折(調節を切って遠視・近視を正確に評価)、②完全矯正眼鏡装用後に遠見・近見で斜視角を再評価、③「遠近ともに内斜視が残る」なら非調節性成分が主体、と判断します。部分調節性内斜視の定義として、眼鏡開始後3か月以上経っても遠近ともに10⊿以上残存する、という基準も紹介されており、非調節性成分を見極める目安になります。

急性発症で複視が明確なケースでは、共同性か(注視方向で斜視角が大きく変わらないか)、眼球運動制限がないか、瞳孔・眼振・神経症状がないかを短時間でチェックし、典型から外れる場合は中枢性を疑って検査計画を組みます。急性内斜視は器質的疾患を伴うことがあるためMRI検査が必要、と学会ページでも明記されています。

非調節性内斜視の治療(手術・プリズムレンズ・視能訓練)

非調節性内斜視の治療は、眼鏡のみで正位が得られないため、残余角に対して「手術」または「プリズム」などを組み合わせて両眼視機能を守る設計になります。日本弱視斜視学会の部分調節性内斜視の項では、眼鏡でも内斜視が残る場合、角度が大きければ手術、角度が小さければプリズムレンズで両眼で見る機能を養うことがある、と整理されています。

臨床では、複視が強い成人・学童では、まずフレネル膜プリズムで日常生活の障害を下げつつ、斜視角が安定してから手術適応を判断する流れが現実的です(ただし小児は複視の訴えが乏しいため、視機能評価と弱視リスクを優先)。なお、急性内斜視は原因が多様で、保存的に改善する例もあるため、原因(屈折・視環境・ストレス・遮閉など)を丁寧に拾うことが「不要な手術の回避」に直結します。

視能訓練は、斜視角そのものを大きく動かすよりも、術前後に融像の再獲得を助けたり、プリズム併用下で日常視の安定性を上げたりする目的で位置づけると実装しやすいです。外眼筋手術の適応がある場合でも、両眼視機能の現状(抑制・立体視)を把握し、術後の見え方(特に成人)を事前に説明しておくとトラブルが減ります。

非調節性内斜視の手術(斜視角・内直筋・外直筋)

非調節性内斜視で眼鏡に反応しない場合、斜視角(プリズム度数)を基に外眼筋手術を計画します。日本弱視斜視学会の後天内斜視の治療・管理では、眼鏡をかけても治らない場合は「ずれの量に基づいて手術」を行う、と基本方針が示されています。

術式は施設方針・斜視角・片眼優位・既往手術などで変わりますが、一般に内斜視では内直筋後転(必要により外直筋短縮の組み合わせ)で矯正量を確保します。小児では両眼視の獲得・維持の観点から「時期」の判断が重要で、学会ページでも、眼位ずれが大きい場合は斜視手術が必要なことが多く、両眼視機能の獲得には早めの手術が望ましい、とされています。

手術適応で悩むポイントは「角度の安定性」と「背景因子の是正」です。例えば近業負荷が強いAACEでは、視環境介入で角度が動く可能性があるため、急いで固定術式に進まず、一定期間の再評価を挟む判断も合理的です(ただし複視が強い成人ではQOLと安全面から早期の対症が必須)。

非調節性内斜視の独自視点:ICT機器・視距離・未矯正近視の介入

検索上位の一般解説では「眼鏡か手術か」の二択に見えがちですが、若年者の急性後天共同性内斜視では、視環境そのものが治療ターゲットになることがあります。日本視能訓練士協会誌の症例報告では、未矯正近視(約-4.50D)で視距離15cm・最大12時間/日のICT機器使用が疑われた14歳例に対し、眼鏡装用と視距離40cmの維持を指導したところ、約2か月で斜視角が近見35⊿ET/遠見40⊿ETから近見8⊿内斜位/遠見4⊿内斜位へ改善した、と報告されています。

この報告が示唆する「意外な臨床ポイント」は、①屈折(近視)矯正そのもの、②視距離(姿勢)という行動介入、③“時間制限より距離優先”という現実的なプランでも改善し得る点です。特に学校健診後に眼鏡が中断され、短い視距離でスマホ・学習が常態化している症例は日常診療で珍しくないため、問診テンプレートに「視距離(cm)」「連続近業時間」「未矯正期間」を入れるだけで拾い上げが良くなります。

さらに、急性内斜視は器質的疾患を伴う場合があるため、視環境要因が強く見えても、神経学的所見・頭痛・眼振・眼球運動制限の有無など基本チェックは省略しない運用が安全です。学会ページでも急性内斜視ではMRIなどの検査が必要な場合があると明記されており、見逃し回避の後ろ盾になります。

急性内斜視の鑑別と画像検査の注意(急性内斜視・MRIが必要なことがある)。

日本弱視斜視学会:内斜視

ICT機器・視距離介入で改善したAACE症例(視距離40cm指導、斜視角の経時変化が具体的)。

日本視能訓練士協会誌:視距離の指導により眼位改善がみられた急性後天性共同性内斜視の1例(PDF)