上行斜位と上下斜視
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上行斜位の定義と斜位
上行斜位は、両眼を開けて融像しているときは目立たない一方で、片眼遮閉などで融像が途切れると上下方向の潜伏偏位が顕在化する状態として捉えると、臨床の導入が整理しやすい。
「斜位」は、普段は神経の緊張(融像努力)で両眼視を維持できるが、遮閉で眼位ずれが出るという点が本質で、ずれが強いと複視や眼精疲労につながり得る。
上下方向のずれは単独で語られがちだが、上下斜視・回旋斜視・水平斜視が合併することが多く、症状も「上下」だけでは説明できないことがあるため、問診でも「傾き」「回旋性」「方向依存」を必ず拾う。
上行斜位と上下斜視の症状
上下斜視では、小児は両眼視機能の発達が阻害されやすく、頭位異常(頭を傾ける)を呈しやすい一方、学童期〜成人では複視が主症状として前面に出やすい。
麻痺性斜視では「突然の複視」が特徴で、麻痺筋が作用する方向で眼位ずれと複視が最も強くなるため、患者が無意識に顔を回したり傾けたりして症状の軽い方向を探す。
「疲れやすい・肩こり・集中困難」など非特異的な訴えの背後に上下斜位が隠れることもあり、遮閉で症状が変わるか、夕方に悪化するかなど、生活内での再現性を確認すると見落としが減る。
上行斜位の診断と遮閉
診断の入り口は、遮閉によって眼位ずれが出るかどうか、さらに遮閉を外した瞬間の再固視運動(戻り方)を観察して、斜位(潜伏)か斜視(顕性)かを切り分けることにある。
上下方向の評価は、正面視だけで終えると取りこぼしやすく、側方視で内側になる眼が上転するような所見があれば、下斜筋過動を疑うなど、視方向での変化を必ずセットで見る。
また「遮閉した眼が上転し、遮閉を除去すると回旋しながらゆっくり降りてくる」といった特異な運動が見えた場合、通常の上下斜位ではなく交代性上斜位(DVD)を考えるのが重要になる。
上行斜位と上斜筋麻痺と下斜筋過動
先天性上斜筋麻痺は、先天性の上下斜視の原因として多く、こどもの頃は症状が軽くても成人になって複視が出て受診につながることがあるため、「昔から写真で頭が傾いている」などの情報が診断の鍵になり得る。
滑車神経麻痺(上斜筋麻痺)では、上斜筋の下転・内方回旋作用が障害されて上下・回旋斜視が生じ、先天例は頭位異常が前景に出やすい一方、後天例は複視が主になるなど、年齢と経過で見え方が変わる。
下斜筋過動は、横を向いたときに内側になる目が上にずれるという特徴を取り、内斜視・外斜視や上斜筋麻痺と一緒にみられることがあるため、単独診断にせず「セットで起きるもの」として追うと整合しやすい。
上行斜位の治療とプリズムと手術(独自視点:説明と安全)
治療は原因・病型で分かれ、麻痺性の滑車神経麻痺では自然軽快する場合があるため、プリズムレンズで複視を回避しつつ原因疾患の治療を行い、一定期間(例:6か月)経っても複視が続く場合に斜視手術を検討する、という流れが取りやすい。
交代性上斜位は、普段の生活で上下斜視が目立たない場合は治療不要とされる一方、屈折矯正で目立ちにくくできる場合があり、整容面で問題が大きいと手術が選択され得るが完治は困難という説明が必要になる。
医療従事者向けに強調したい独自視点としては、「上下のずれ=眼科内で完結」と決めつけない安全設計で、麻痺性斜視は命に関わる疾患が潜むことがあるため、突然の複視は早急受診を促すというメッセージを、患者説明文書・紹介状テンプレに組み込むと運用での漏れが減る。
加えて、プリズムは“治す”というより“両眼視機能を確保しやすい状況を作る”介入である点を最初に共有すると、患者の期待値調整がしやすく、長期フォローの満足度に直結する。
交代性上斜位(DVD)の特徴(遮閉で上転・解除で回旋しながら下降)と治療方針の目安。
滑車神経麻痺(上斜筋麻痺)の原因・症状(先天/後天、外傷・血管障害など)と検査・治療の流れ。