レーベル遺伝性視神経症とは
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レーベル遺伝性視神経症とは原因のミトコンドリア遺伝子変異
レーベル遺伝性視神経症(LHON)は、ミトコンドリア遺伝子変異が母系遺伝形式を規定し、他の遺伝因子・エピジェネティック修飾・環境因子が発症を制御すると整理されている視神経変性疾患である。
臨床の説明で重要なのは「遺伝子変異=必ず発症」ではなく、発症には複数要因が重なる、という構図を患者・家族に最初に共有する点である。
原因変異としては塩基対番号3460、11778、14484の3つが大半を占め(約90%)、日本では11778の置換が同定例の多数を占めるとされる。
この「母系遺伝」の伝え方は、遺伝カウンセリングの入口で誤解が起きやすい。罹患男性の子には基本的にミトコンドリア変異が伝わらず(母系のみが伝える)、無症候女性保因者の子孫に患者が現れ得る、という家系の見え方を、図示して説明できると現場が安定する。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3411744/
また、LHONは視神経“だけ”が目立って障害される点が特徴だが、なぜ視神経限局性・男性好発性・遅発性発症になりやすいかの原因は不明とされ、ここは断定を避けて説明するのが安全である。
レーベル遺伝性視神経症とは症状の視力低下と中心暗点
症状は、急性〜亜急性に進行する無痛性の視力低下と中心暗点が核で、通常は片眼発症後に数週〜数か月で対側眼も発症する経過が典型とされる。
両眼性で、数か月のうちに高度の視神経萎縮へ至り、矯正視力0.1以下となることがある点は、患者の生活設計に直結するため早期に共有したい。
自覚症状として光視症や羞明を伴うことがあるため、問診では「見えにくさ」だけでなく“見え方の質”まで拾うと鑑別が進みやすい。
予後の説明では「医学的失明(光覚なし)に至る割合は高くない一方、青年期・壮年期に中途社会的失明に至りやすい」という二段構えが実務的である。
読書・書字・運転・色識別・顔認識など、患者が困る具体タスクが難病情報として明記されており、医療者側が“見え方の困り”を具体化して話す意義が大きい。
発症ピークは10歳代〜30歳代と45〜50歳代の二峰性とされるため、若年者に限らず中年発症の可能性も念頭に置く。
レーベル遺伝性視神経症とは診断基準と鑑別
診断は、症状(急性〜亜急性、両眼性、無痛性の視力低下と中心暗点)と、急性期眼底所見(乳頭発赤・腫脹、乳頭近傍毛細血管拡張蛇行、網膜神経線維腫大、乳頭近傍出血など)や慢性期の視神経萎縮所見を組み合わせて考える。
検査所見として、代表的ミトコンドリア遺伝子ミスセンス変異(3460/11778/14484)を確認する位置づけが明確で、3大変異は委託検査が可能とされている。
急性期の眼窩部CT/MRIで球後視神経に異常を認めない、という“陰性所見”も診断の助けになるため、画像オーダー時に目的を明確化する。
意外に現場で効くのが、急性期フルオレセイン蛍光眼底造影で「拡張蛇行した乳頭近傍毛細血管から蛍光色素漏出がない」という所見で、乳頭腫脹を呈する他疾患との鑑別に特異度が高いと明記されている。
鑑別は、特発性視神経炎、脱髄性視神経症(多発性硬化症含む)、視神経脊髄炎(抗AQP4抗体関連含む)、虚血性・圧迫性視神経症、中毒性・栄養障害性、外傷性、他の遺伝性視神経症、黄斑ジストロフィーなど幅広い。
診断カテゴリー(Definite/Probable/Possible)や保因者(carrier)の定義も示されており、紹介状や公費申請の文書作成時に、そのままロジックとして使える。
レーベル遺伝性視神経症とは治療法とイデベノン
治療は「現時点では治療法が確立されていない(根治的治療なし)」が公式情報として明確であり、患者説明ではこの前提を曖昧にしないことが重要である。
一方で、コエンザイムQ誘導体のイデベノンやEPI-743が一定の患者に有効だったという報告がある、と難病の資料内でも言及されている。
さらに研究として、免疫抑制(シクロスポリン等)、遺伝子治療、幹細胞治療、胚細胞治療などが挙げられており、“今できる支援”と“研究中の選択肢”を分けて整理すると説明が通りやすい。
医療従事者向けには、治療の柱を「(1)急性期の見落とし回避(鑑別の徹底)」「(2)視機能リハビリ・ロービジョンケアへの早期接続」「(3)心理社会的支援」「(4)臨床研究・治験情報の適切な提示」に分けておくと、根治薬がない状況でも“医療としてできること”が見えやすくなる。
また、LHONでは就学・就労への影響が大きいことが公式に記載されているため、診断確定前でも視覚補助具や職場調整の相談ルートを早めに提示する価値がある。
公的支援(指定難病)に関しては、重症度分類として「良好な方の眼の矯正視力が0.3未満」が対象とされているので、診断だけでなく視力値の記録精度が実務上重要になる。
レーベル遺伝性視神経症とは現場説明の落とし穴(独自視点)
検索上位の一般解説では病名・遺伝・症状が中心になりがちだが、医療現場では「患者が“遺伝”をどう受け止めるか」が転帰を左右し得るため、説明設計が実質的な介入になる。
具体的には、母系遺伝の説明を急ぐあまり「子どもにうつる/うつらない」の二択に矮小化すると、家族内の責任帰属(自責・他責)が強まり、受診中断やカウンセリング拒否につながることがあるため、保因・発症・環境因子という三層で説明する方が摩擦が少ない。
また、視力低下が急性〜亜急性で進む疾患では、患者は“情報処理そのもの”が難しくなるため、初回説明は短い要点+次回に回す項目を明確化し、文書で渡す運用が安全である。
さらに、LHONは両眼性が基本で、片眼発症から対側眼発症まで数週〜数か月という時間差があり得るため、「片眼だから様子見」の空気が生まれやすい。
この時間差は、生活上の安全(運転、転倒、職場での危険作業)に直結するため、診断確定前でも“視機能低下を前提にした行動調整”を具体的に提案しておくと事故予防になる。
最後に、医学的失明に至る割合が高くない一方で社会的失明になりやすい、というギャップは患者が誤解しやすいので、「光覚が残る=困らない、ではない」ことを日常タスクの例で言語化して共有するのが実務的である。
難病の公式ページ(概要・原因・症状・治療・予後の整理に有用)
診断基準・重症度分類PDF(Definite/Probable/Possible、蛍光眼底造影の特異所見、視力基準が確認できる)
https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/302-202404-kijyun.pdf