上行性視神経炎と視神経炎と治療

上行性視神経炎と視神経炎

上行性視神経炎:臨床で迷う点の全体像
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症状の軸は「視力低下+視野障害+疼痛」

中心暗点、視野欠損、眼球運動時痛などが同時に揃うと視神経炎を強く疑います。

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検査は眼科+神経内科の同時進行が安全

視力・視野・眼底に加え、MRI、血液、髄液などを症例に応じて組み合わせます。

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急性期はステロイド、抵抗例は血漿交換を検討

重症例や反応不十分例では早期に次の治療選択肢へ移行できる体制が重要です。


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上行性視神経炎の症状と中心暗点と眼球運動痛

上行性視神経炎は臨床現場では「視神経炎(視神経症)」という大枠で遭遇し、患者は片眼(時に両眼)の急激な視力低下や、視野の真ん中が見えにくい中心暗点を訴えることが多いです。

随伴症状として眼球運動痛(目を動かすと痛い)や圧迫感がみられ、病歴上「数日〜1週間程度で進行」「見えにくさに痛みが乗る」という組み合わせは重要な手がかりになります。

医療者側が見落としやすいのは、患者が「視力」より先に「色がくすむ」「コントラストが落ちる」「片目だけ薄暗い」と表現するパターンで、問診で“視機能の質的低下”を拾うと早期疑いにつながります。

また、視神経炎では眼底所見が初期に正常なこともあり(球後視神経炎)、症状が強いのに眼底が決定打にならないケースが起こり得ます。

したがって「眼底がきれい=否定」ではなく、症状(視力低下・中心暗点・眼球運動痛)と経過で疑い続ける姿勢が重要です。

上行性視神経炎の視力検査と視野検査と眼底検査

視神経炎が疑われたら、最低限の初期評価として視力検査・視野検査・眼底検査をそろえ、視機能障害のパターンを“言語化できるデータ”に落とし込みます。

日本眼科医会の解説でも、視神経症の評価として視力検査・眼底検査・視野検査に加え、必要に応じてMRI検査・血液検査・髄液検査などを組み合わせることが示されています。

視野は中心暗点だけでなく、上半分/下半分が欠ける水平半盲のようなパターンもあり得るため、訴えが曖昧でも視野検査で異常を“見える化”する価値があります。

眼底では、視神経乳頭が赤く腫れるタイプ(視神経乳頭炎)と、当初は乳頭が正常に見えるタイプ(球後視神経炎)があるため、眼底だけで病勢を過小評価しない注意が必要です。

現場運用の工夫として、救急外来や当直帯では「視力(矯正/非矯正)」「対光反射」「視野(簡易でも可)」「眼球運動時痛の有無」をテンプレ化して記録すると、翌日の専門診へ情報が引き継げます。

上行性視神経炎のMRI検査と血液検査と髄液検査

視神経炎の精査では、眼科的検査に加えてMRI検査・血液検査髄液検査を必要に応じて行い、炎症性・脱髄性・免疫介在性など背景病態の同定を狙います。

とくに抗アクアポリン4(AQP4)抗体陽性例は視神経炎の一部を占め、両眼性で重篤な視力低下を来し得るため、臨床的に疑えば抗体測定を含めた設計が重要です。

日本神経学会系のガイドラインでは、抗AQP4抗体が陽性であればNMO/NMO関連疾患を念頭に治療方針を決めるべき、と位置づけられています。

髄液検査は“全例に機械的に行う”というより、脳脊髄炎の合併が疑われる場合、感染症や他の炎症性疾患を除外したい場合などに、MRI所見や神経症候とセットで判断するのが現実的です。

あまり強調されにくいポイントとして、視機能の障害が軽く見えても(視力が保たれても)視野障害が先行するケースがあり、検査の優先順位を「視力だけ」に偏らせない方が安全です。

上行性視神経炎の治療とステロイドパルス療法と血漿交換療法

特発性視神経炎では治療として副腎皮質ステロイドなどが用いられ、視機能回復を促す目的で運用されることが一般的です。

抗AQP4抗体陽性視神経炎でもメチルプレドニゾロン大量療法(ステロイドパルス療法)が用いられますが、反応が乏しい場合には血漿交換療法、免疫抑制薬、大量ガンマグロブリン治療などが応用され得ます。

日本神経学会のガイドラインでは、NMOの急性増悪(再発)でステロイドパルス療法が第一選択として扱われ、効果が不十分な重症例では血漿浄化療法が有用で早期施行が望ましいとされています。

また同ガイドライン内で、重度の視力障害を呈したステロイド不応性の視神経炎に対し血漿交換療法(PE)が有益だった報告(10人中7人)が引用されており、ステロイド抵抗例で“次の一手”を遅らせない根拠になります。

臨床の落とし穴は、ステロイドを開始した事実だけで安心して経過観察が長引くことなので、「開始後○時間/○日で反応評価」「不十分なら早期に血漿交換の適応検討」という運用ルールを施設内で共有すると、治療の遅れを減らせます。

上行性視神経炎と虚血性視神経症と鑑別の実務(独自視点)

上行性視神経炎を疑って動く際、実務上もっとも重要なのは「視神経炎だけを見ているつもりが、虚血性視神経症など別疾患を同じ箱に入れてしまう」リスクを常に意識することです。

虚血性視神経症は、高齢者の片眼に“ある日ある時間に突然”視力低下・視野欠損が起こる特徴があり、高血圧糖尿病脂質異常症・心疾患などの危険因子が背景にあることが多いと説明されています。

一方で視神経炎側は、眼球運動痛を伴うことがある、球後視神経炎では眼底が正常に見えることがあるなど、症状・身体所見の揺らぎが大きい点が診断の難しさです。

ここで意外に効くのが「鑑別のための問診テンプレ」で、例えば①発症様式(突然/数日で進行)②眼球運動痛③血管危険因子④両眼性⑤神経症状(しびれ、排尿障害など)を固定で聞くと、診断のブレが減ります。

紹介状や院内コンサルト文では、診断名を断定するより「視神経炎疑い、鑑別として虚血性視神経症も念頭」など“鑑別の設計図”を書き添えると、受け手が次の検査(MRI/血液/髄液など)を組み立てやすくなります。

急性期症状と検査の基本(視力・視野・眼底、MRIや血液・髄液の位置づけ)。

視神経症(視神経炎)|日本眼科学会による病気の解説

抗AQP4抗体陽性/NMO文脈での急性期治療(ステロイドパルス、血漿浄化)と再発予防の考え方。

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/msgl/sinkei_msgl_2010_11.pdf