硝子体内結晶沈着と硝子体混濁の鑑別診断

硝子体内結晶沈着と硝子体混濁

硝子体内結晶沈着の臨床要点
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まず鑑別を言語化

「付着して動きにくい粒子」か「沈殿して舞い上がる粒子」かで、星状硝子体症と閃輝性融解の見分けが進みます。

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背景病態を拾う

糖尿病・高血圧・高脂血症、外傷、慢性炎症、出血など「結晶の材料」が供給される状況を系統的に確認します。

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治療は視機能と合併症で決める

基本は経過観察ですが、視力低下が強い硝子体混濁や眼底観察不能、原因疾患治療の妨げになる場合は硝子体切除術を検討します。


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硝子体内結晶沈着の原因と病態

硝子体内結晶沈着という現象は、臨床的には「硝子体内にキラキラした粒子状の混濁(結晶様物質)が存在する状態」を広く含み、実体としては複数の病型が混在します。代表的な理解の入口は、星状硝子体症(asteroid hyalosis)と閃輝性融解(synchysis scintillans、硝子体閃輝症/眼コレステロール症)をまず分けることです。星状硝子体症は硝子体の変性疾患で、主成分はカルシウムを含んだ脂質とされ、硝子体のコラーゲン線維内に付着する点が重要です。

一方、閃輝性融解では黄金色に輝く小さな結晶が硝子体内に多数浮遊し、粒子はコレステロール結晶で、硝子体繊維に付着せず下方に沈殿しやすい、と説明されます。shec+1​

つまり「同じ“結晶”でも、硝子体の構造体に固定されるのか、重力で沈む遊離粒子なのか」が病態の骨格になります。診療録上は「硝子体内結晶沈着」とだけ書いてしまうと、病型(固定性・沈降性)と背景(代謝性・外傷性・炎症性・出血性)が消えてしまい、紹介状の情報量が落ちます。

原因・背景の拾い上げでは、星状硝子体症は原因不明としつつ、糖尿病高血圧動脈硬化痛風・遠視などに合併して起こりやすいと言及があります。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/dac8c16ae0f562a9602ea8f45e28ae18dbb5998f

閃輝性融解は、眼外傷、長期間持続する眼内の炎症・出血などにより代謝障害が起こり、硝子体内にコレステロール結晶が出てくる、という臨床向けの整理が一般的です。

参考)閃輝性融解(硝子体閃輝症)

ここでの“意外な落とし穴”は、患者が自覚する症状(飛蚊症など)と、眼底所見の派手さ(キラキラ)に比べて、視力は保たれるケースがあることです。星状硝子体症は軽度〜中等度では自覚症状がほぼ出ないとされ、混濁が強い場合に飛蚊症や視力低下の訴えが出うる、とされます。

硝子体内結晶沈着と星状硝子体症

星状硝子体症は高齢者に多く、片眼性で非炎症性の硝子体変性疾患という位置づけです。

顕微鏡的(臨床的には細隙灯+前置レンズや眼底観察)に「キラキラした混濁」として見え、星状体(asteroid body)が硝子体コラーゲン線維内に付着するため、眼球運動で“舞い上がる粉雪”のような挙動を示しにくい、という理解が実務上の鑑別点になります。

また、星状硝子体症は見た目のインパクトの割に視力が良好なことがあり、提示症例でも矯正視力1.5が示されています。

これは医療従事者側の意思決定に影響し、混濁が強く見えても「視機能・眼底観察の可否・合併疾患の治療計画」で介入が決まることを再確認させます。

実務では、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性など併存疾患の評価が必要なのに、硝子体混濁が邪魔で眼底が追いにくい、という理由で治療方針が変わる場面が起こります(星状硝子体症そのものではなく、合併疾患管理のための視認性が論点になる)。

硝子体内結晶沈着と閃輝性融解

閃輝性融解(硝子体閃輝症)は、黄金色のキラキラと輝く小さな結晶が硝子体内に多数浮遊している状態で、別名「眼コレステロール症」とされ、結晶はコレステロール結晶と説明されます。

さらに、結晶は硝子体繊維に付着しておらず硝子体下方部に沈殿し、眼球運動で舞い上がる、という“動きの所見”が鑑別に直結します。

原因の聴取では、外傷、重度の眼内炎症、出血などの既往が重要で、これらにより組織壊死や代謝障害が起こり、硝子体にコレステロール結晶が生成される、という筋道で説明されることがあります。

ここで臨床的に効くのは「いつから見えるか」だけでなく「どの体位・どの眼球運動でどう見えるか」を患者の言葉で再現してもらうことです。沈殿→舞い上がりの訴えは、単なる飛蚊症(液化硝子体の濁り)よりも“粒子性”を匂わせることがあります。

なお、古い文献ですが「前房および硝子体内にコレステリン結晶の析出をみた」症例報告があることからも、結晶析出が硝子体腔だけの現象ではなく、眼内環境の破綻(炎症・出血・水晶体関連など)と一緒に現れる可能性が示唆されます。

参考)前房および硝子体内にコリステリン結晶の析出をみた1例 (臨床…

臨床では、前房内結晶が見える場合は“硝子体内結晶沈着”よりむしろ眼内全体の慢性病態を疑い、眼圧・炎症所見・水晶体状態(無水晶体眼や亜脱臼など)まで含めて再点検する方が安全です(見た目に引きずられない)。

硝子体内結晶沈着の検査と鑑別診断

鑑別の出発点は「星状硝子体症」と「閃輝性融解」を、粒子の主成分と挙動(付着か沈殿か)で分けることです。

星状硝子体症では星状体が硝子体コラーゲン線維内に付着し、閃輝性融解ではコレステロール結晶が硝子体線維に沈着せず下方へ沈殿する、と整理されます。

次に、鑑別診断として“結晶っぽく見える硝子体混濁”を除外します。硝子体出血は粒子状・雲状の混濁として見えることがあり、特に陳旧性では視覚的に紛らわしい場面があります。さらに医書.jpの解説では、硝子体混濁の原因としてコレステリン結晶の硝子体閃輝症、アミロイド沈着なども挙げられており、混濁のラベルだけで病態が完結しない点が示されています。

参考)硝子体混濁・硝子体出血 (臨床眼科 46巻11号)

検査の実務フロー(例)を、医療従事者向けに“手戻りを減らす”観点で並べます。

  • 細隙灯+前置レンズ:粒子の色調(黄白色/黄金色)、密度、付着性、眼球運動での挙動を記載する。shec+1​
  • 眼底検査:混濁越しでも観察できる範囲で、糖尿病網膜症加齢黄斑変性など合併疾患の有無を確認する(星状硝子体症は併存しうる)。​
  • 既往歴・全身背景:糖尿病・高血圧・高脂血症、外傷、慢性炎症、出血イベントの聴取をテンプレ化する。ikec+1​

“意外な情報”として実務で役立つのは、星状硝子体症が非炎症性で片眼性が多い、と明記されている点です。

両眼性の強い炎症所見や痛みを伴う場合は、結晶そのものより別のアクティブな病態(炎症、感染、急性緑内障など)を優先して扱うべきサインになり得ます。

星状硝子体症(概説・原因・鑑別として閃輝性融解との違い、治療の考え方がまとまっている)

星状硝子体症 (よくある目の病気 83) | 京橋クリニック眼科 | 大阪市都島区京橋駅前の眼科専門のクリニック
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硝子体内結晶沈着と硝子体切除術の適応

治療は「結晶を見つけたから除去」ではなく、視機能障害と合併症治療の必要性で判断します。星状硝子体症は基本的に無害で治療不要、経過観察が基本とされます。

ただし、混濁が強く視力低下をきたす場合には硝子体切除術を行うことがあり、一般的には他の眼底疾患の治療と同時に除去する場合以外、単独で手術を行うことは稀、とされています。

ここでの臨床的な要点は「症状(飛蚊症・視力低下)」「眼底観察不能」「原因疾患(出血、炎症など)への介入計画」の3点を分けて考えることです。星状硝子体症でも、星状体増加や後部硝子体剥離によって粒子密度が増すと混濁が強くなり、飛蚊症や視力低下が起こり得る、とされています。

つまり、“星状硝子体症=無症状”と決め打ちせず、症状がある場合は混濁の程度だけでなく網膜側の併存病変や別原因(硝子体出血など)をセットで再評価するのが実務的です。webview.isho+1​

また、閃輝性融解は背景に外傷・炎症・出血などの既往が語られることがあり、病態のコアが「結晶」より「眼内環境の慢性破綻」である可能性があります。

そのため、硝子体切除術を検討する際も、単に浮遊物を減らす目的だけでなく、原因検索(出血源、炎症の持続)や、同時手術の設計(白内障手術との関係など)を含めた全体最適で判断する方が安全です。

最後に、記録・紹介の観点での実務Tipsです。

  • 「硝子体内結晶沈着(固定性/沈降性)」と書き分ける。星状硝子体症は硝子体線維に付着、閃輝性融解は沈殿し舞い上がる、と対比して残す。shec+1​
  • 全身背景(糖尿病・高血圧・高脂血症、外傷・炎症・出血)を“結晶の供給源”として1行で要約する。ikec+1​
  • 患者説明は「結晶=危険」になりやすいので、「多くは経過観察、ただし見え方や合併症次で治療が変わる」と構造化して伝える(不必要な不安を減らす)。​