硝子体膿瘍と診断と治療
<% index %>
硝子体膿瘍の内因性と外因性の鑑別ポイント
硝子体膿瘍は概念的には「硝子体腔内に感染性の膿性病変を形成した状態」で、臨床的には感染性眼内炎(endophthalmitis)の重症像として遭遇することが多いです。
感染性眼内炎は感染経路で外因性(手術・外傷・角膜感染の波及など)と内因性(血行性に眼内へ播種)に分類され、内因性は全身の感染巣から病原体が眼内へ到達します。
医療現場で重要なのは「眼の症状だけで完結しない」点で、内因性を疑うときは全身状態の悪化や菌血症/真菌血症の可能性を同時に評価します。igaku-shoin+1
特に、眼が菌血症の“原因”になることは通常想定されず、眼は播種先として捉えるのが原則です。
鑑別の実務では、次の問いが有用です。
- 直近の眼手術(白内障、硝子体手術)、硝子体内注射、穿孔性外傷があるか(外因性に寄る)。kusabaclinic+1
- 発熱、悪寒、原病巣(胆道感染、心内膜炎など)が疑われるか(内因性に寄る)。mdpi+1
- 片眼か両眼か(内因性では両眼例もあり得る)。
参考)https://www.mdpi.com/2077-0383/11/5/1183/pdf
意外に落とし穴になるのは「眼科初診時点で感染源がまだ診断されていない」パターンで、眼所見が全身感染の“警報”として先行することがあります。
参考)医学界新聞プラス [第3回]菌血症治療中の患者さんが「目が見…
そのため、紹介状に感染症の記載が薄くても、硝子体膿瘍を疑う時点で内科・救急との並走(血液培養、感染源検索)を組み込むのが安全です。pmc.ncbi.nlm.nih+1
硝子体膿瘍の症状と所見(前房・硝子体混濁・画像)
感染性眼内炎は「稀だが重篤で、適切なタイミングを逃すと不可逆的な視力障害につながり得る」とされ、臨床では視力低下や眼痛、強い炎症所見を軸に疑います。
硝子体膿瘍が疑われる局面では、眼底が硝子体混濁で透見不能になり、眼内の状態把握に画像補助が必要になることがあります。
眼底透見不能時の超音波検査(Bスキャン)は、濃厚な硝子体混濁など硝子体への炎症波及の評価に使われる、と日本語資料でも説明されています。
参考)https://kusabaclinic.com/imagesWP/pdf/gjo2016-5_06.pdf
また、内因性眼内炎の症例報告でも、超音波で「密な硝子体混濁」が確認され、臨床診断の補助になった経過が示されています。
鑑別で注意したいのは「感染性ぶどう膜炎」と「非感染性ぶどう膜炎」の見誤りです。
参考)https://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.1080/25785826.2019.1678961?needAccess=true
感染性を見逃してステロイド単独で進めると転帰が悪化し得るため、硝子体膿瘍を疑った時点で感染性眼内炎としての検体計画を立てます。pmc.ncbi.nlm.nih+1
所見を読む際の実務的メモ(外来・当直での言語化)としては、次のように整理するとチームに伝わりやすいです。
- 「前房反応が強く、硝子体混濁が濃厚で眼底が見えない」=感染性眼内炎の重症像を疑う。
- 「超音波で硝子体腔内に強い混濁(塊状/膜状)を示す」=硝子体レベルの病変を想定し、硝子体検体の必要性が上がる。mdpi+1
硝子体膿瘍の起因菌と培養・PCR(検体採取の実際)
眼感染症は臨床所見が多彩で、特定の病原体に“決め打ちできる所見”が常にあるわけではないため、微生物学的検査で裏取りする意義が大きいです。
感染性眼内炎の確定診断では、硝子体液などの検体培養が重要である、という日本語の臨床記事でも強調されています。
また日本語PDFでは、前房水採取・培養に加え、PCRにより迅速に菌同定が可能になり診断に有用と述べられています。
臨床的には「治療を遅らせないこと」と「原因微生物の手掛かりを取りにいくこと」の両立が課題で、塗抹(グラム染色)で即日情報を得る価値が高い場面があります。pmc.ncbi.nlm.nih+1
内因性の文脈では、血液培養が“必須”であると解説する日本語記事もあり、眼内検体と血液の両方から攻める設計が合理的です。
内因性細菌性眼内炎の症例報告では、硝子体吸引でグラム陽性球菌が検出され、同日手術に踏み切った経過が記載されており、塗抹の即時性が治療判断に寄与し得ることがわかります。
起因菌については状況(術後、注射後、内因性など)で頻度が変わることが知られており、術後の時期で緑膿菌・セラチア・腸球菌、あるいはブドウ球菌群が話題になることがあります。jmedj+1
“意外な情報”として押さえておきたいのは、内因性では胆道感染や心内膜炎が感染源になり得る点で、古典的症例でも胆道ドレナージ操作後の発熱に続いて両眼性眼内炎を発症し、心内膜炎も確認された経過が示されています。
参考リンク(内因性眼内炎で、超音波所見・硝子体検体・感染源(胆道/心内膜炎)・治療経過が具体的に書かれている)
日眼会誌PDF:内因性腸球菌性眼内炎の症例(超音波、硝子体吸引、起炎菌同定、感染源推定、治療経過)
硝子体膿瘍の治療(抗菌薬・硝子体注射・硝子体手術)
感染性眼内炎は治療が遅れると視機能を不可逆に損なうため、疑った段階で迅速に治療を開始する、という前提が繰り返し強調されています。
日本語の臨床報告でも、内因性細菌性眼内炎は抗菌薬の全身投与が第一で早急な治療開始が必要で、悪化や網膜剥離などが疑われる際は手術を検討する、とまとめられています。
細菌性眼内炎の解説PDFでは、眼底透見不能なら超音波検査を行い、起炎菌検索(前房水の採取・培養)を進め、PCRが迅速診断に有用と述べられています。
さらに同PDFは、硝子体手術で眼内の細菌や炎症産物を除去しつつ、抗菌薬の硝子体内注射を行うという考え方を示しており、「除去」と「高濃度局所投与」の二本柱が治療戦略として理解できます。
症例ベースでは、早期に硝子体手術を行い、術後に抗菌薬の硝子体内注射を追加して良好な視力転帰を得た報告があり、現場感として“初動の速さ”が転帰に影響し得ることを示唆します。
参考)硝子体手術と術後の抗菌薬硝子体内注射が奏効したクレブシエラ肺…
また別の日本語PDFでも、眼内炎の起因菌としてStaphylococcus lugdunensisも考慮すべきで、早期硝子体手術と抗菌薬硝子体注射が予後に寄与し得る旨が述べられています。
参考)https://www.jaoi.jp/wp-content/uploads/2023/11/vovl16_2.pdf
実務での治療設計を、医療従事者向けに「判断の分岐」として書くなら次の形が伝わりやすいです。
- 初動:眼内炎(硝子体膿瘍疑い)として緊急度高く扱い、血液培養+眼内検体計画(可能なら硝子体)を同時に走らせる。jmedj+1
- 進行/重症:硝子体混濁が濃厚、眼底不可視、経時悪化、合併症疑いなら硝子体手術を強く検討し、術中採取で原因微生物の確定を狙う。webview.isho+1
- 局所治療:硝子体手術と抗菌薬硝子体内注射を組み合わせ、眼内の菌量・炎症産物の低減を図る発想を持つ。
硝子体膿瘍の独自視点:院内連携と見落としやすい感染源(胆道・心内膜炎)
硝子体膿瘍(感染性眼内炎)対応で、検索上位の一般解説だけでは抜けがちな論点が「院内連携の設計」です。
眼科側が“眼だけの感染”として閉じてしまうと、内因性の感染源(胆道感染、心内膜炎など)評価が遅れ、結果として再燃や全身転帰に影響し得ます。
日眼会誌の症例では、胆嚢炎術後の胆道ドレナージ操作(Tチューブ)に続く発熱の経過で両眼性眼内炎を発症し、その後に細菌性心内膜炎による心不全も診断されています。
この経過は「眼が全身感染のサインとして先に立つ」「感染源が複合(胆道+心内膜炎)になり得る」ことを示しており、硝子体膿瘍の時点で感染症診療科・循環器・消化器と情報を接続する価値があります。
現場で使える“連携のチェックリスト”を置いておきます(入れ子なし)。
- 眼科:硝子体穿刺/硝子体手術の適応判断、眼内検体(塗抹・培養・必要ならPCR)のオーダー整理。jmedj+1
- 内科/救急:血液培養、抗菌薬の全身投与設計、原病巣検索(胆道・尿路・心内膜炎など)。igaku-shoin+1
- 放射線/検査部:超音波(眼球Bスキャン)や培養結果の速報ルート作り(当直帯の連絡系統)。
この“院内の仕組み”まで含めて標準化すると、硝子体膿瘍のような低頻度・高リスク疾患でも、担当者の経験差を埋めやすくなります。