網脈絡膜出血と黄斑とOCTと抗VEGF

網脈絡膜出血と黄斑

網脈絡膜出血の臨床要点(医療従事者向け)
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まず病態の層を決める

網膜内・網膜下・RPE下(出血性PED)で治療戦略が変わるため、眼底写真+OCTで「どの層の出血か」を最初に固定します。

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OCTは活動性評価の中心

IRF/SRF/sub-RPE fluid、SHRM(出血やフィブリンを含む)など、活動性の指標をOCTで拾い上げます。

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抗VEGFは第一選択になりやすい

新生血管型AMDなどMNVが背景にある場合、抗VEGF硝子体内注射が治療の軸になります(投与設計も重要)。


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網脈絡膜出血の原因と鑑別

網脈絡膜出血という言い方は臨床の文脈で幅があり、「網膜〜脈絡膜(RPEを含む)周辺のどこに血液があるか」を層で言い直すと、鑑別が一気に整理されます。

眼底で出血が見えても、OCTでみると網膜下高輝度物質(SHRM)として表現され、出血・フィブリン・MNVそのものが重なって見えることがあるため、単純に「出血=出血」と決め打ちしない姿勢が重要です。

臨床で頻度が高い背景疾患は、新生血管型加齢黄斑変性(MNVを伴う病態)やPCV(ポリープ状病巣を伴う1型MNV)で、これらは出血性変化を来しやすいと整理されています。

参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jja2.12003

特にPCVは大量の網膜下出血やRPE下出血(出血性PED)を伴うと、ICGAでの病巣検出が出血による蛍光ブロックで難しくなる場合がある点が「実務上の落とし穴」です。

鑑別を考えるときは、以下の観点をセットで取ると現場の判断が早くなります。

  • 出血の層:網膜内出血/網膜下出血/RPE下出血(出血性PED)
  • 滲出の併存:IRF・SRF・sub-RPE fluidの有無(活動性の判断)
  • 病型:1型MNV、2型MNV、3型MNV、PCVのいずれの形態が疑わしいか

網脈絡膜出血の黄斑の病態と予後

黄斑に出血が及ぶと視力低下が急で、かつ不可逆になりやすい理由は、黄斑下出血によって網膜外層が損傷されうるためで、ガイドラインでも「網膜外層が損傷されることで視力低下は不可逆的」と明確に述べられています。

一方で発症早期なら、黄斑下血腫の移動で視力改善が得られることがあるとされ、時間軸が治療適応を左右します。

予後を読む上では、単に視力表だけではなく、OCTで「活動性が続いているか/終息した瘢痕・萎縮フェーズか」を見極めるのが有用です。

末期相では線維性瘢痕、囊胞様黄斑変性、萎縮性変化を伴い、疾患活動性が乏しい場合は積極治療より経過観察を考慮する、という判断枠組みが提示されています。

臨床では「患者が訴える歪視や中心暗点の強さ」と「眼底の派手さ」が一致しない場面があります。

このズレは、出血が中心窩直下か、あるいはRPE下(出血性PED)中心で神経網膜の構造破綻がどこまで及んでいるか、またSRF/IRFなどの液体成分がどの程度かで説明できることが多く、結局はOCTが病態把握の中心になります。

網脈絡膜出血とOCTの所見

新生血管型AMDの診断と活動性評価では、視力・眼底所見に加え、OCTやOCTA、FA/ICGAなどを用いることが整理されています。

その中でも実臨床で毎回使うのはOCTで、滲出性変化(IRF、SRF、sub-RPE fluid)を非侵襲的に評価できる点が、フォロー設計の核になります。

OCTで出血を読むときのポイントは、「出血は網膜下高輝度物質(SHRM)として観察される」という整理です。

SHRMは“出血だけの塊”とは限らず、フィブリンやMNVの成分も同じように高輝度として混在し得るため、OCTAの血流シグナルやFA/ICGA所見と突き合わせて“構造物の正体”を詰めます。

PCVを疑う場合は、ポリープ状病巣がOCTで「中〜高輝度の内部反射を伴うRPEの急峻な隆起」として観察され得る点、ICGAで「1型MNVの周辺に瘤状に拡張した円形で境界明瞭な病変」として捉えられる点が、典型像として示されています。

ただし大量出血があると検出が難しくなることがあるため、「OCTで何が見えないか」も所見として扱うのが現場向きです。

OCTの運用面のコツとして、病変は中心窩だけに限らず、PCVのポリープ状病巣や3型MNVの病巣は中心窩外に存在し得るため、黄斑だけでなく病変全体をスキャンしてfluidとSHRMを評価することが勧められています。

網脈絡膜出血の治療と抗VEGFとPDT

新生血管型AMDが背景にある場合、治療の第一選択は抗VEGF薬硝子体内注射とされています。

本邦で使用される抗VEGF薬として、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブが挙げられ、各薬剤の臨床試験で視力改善が示された、というまとめ方がされています。

投与設計としては導入期(通常、1か月ごと連続3回)と維持期を分けて考え、維持期は固定投与、PRN、treat-and-extendなどを症例・負担に合わせて選ぶ枠組みが示されています。

PRNは長期で視力維持が難しい可能性が示された一方、treat-and-extendは毎月投与に近い視力改善・維持が得られるという報告があるため、忙しい外来ほど“設計そのもの”が予後に影響します。

PCVに対しては、抗VEGF併用PDTが現在も治療選択肢の一つと位置づけられ、抗VEGF抵抗例ではPDT併用を考慮してもよいとされています。

ただしPDTは長期的に黄斑萎縮を増悪させる可能性があるため、脈絡膜が薄い症例やすでに黄斑萎縮がある症例は避けるのが望ましい、という注意点が明記されています。

黄斑下血腫(重症の出血)に関しては、硝子体内気体注入術や硝子体切除術による血腫移動が行われ、抗VEGFやtPA(適応外使用)を併用する場合がある一方、適応についてはさらなる議論が必要とされています。

この「できる治療」と「推奨の強さ(適応の確かさ)」を分けて説明できると、紹介・併診・同意取得の質が上がります。

参考:新生血管型AMDの診断・治療(抗VEGF、PDT、OCTでの活動性評価、黄斑下血腫移動などの位置づけ)

新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン(日本網膜硝子体学会)