網膜分離症 治る
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網膜分離症 治る 定義
医療者がまず共有したいのは、「治る」の意味が少なくとも2層あることです。ひとつは解剖学的に網膜が眼底(網膜色素上皮側)に“復位して付着する”こと、もうひとつは視機能(視力、変視、視野)がどこまで回復するかです。患者の「治る」は後者を指すことが多く、ここで齟齬が起きやすいのが現場の実感でしょう。
網膜剥離の解説では、放置すると失明の可能性が高い疾患であり、進行例では手術が必要と明記されています。つまり「自然に治る」より「治療により復位させる」領域の病態である点が、最初に押さえる核になります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/566867093e5a6df608c1d36fe4620d218a9c3f5a
さらに、前駆症状(飛蚊症・光視症)がありうる一方、無症状で進むこともあるため、患者は“悪化した実感が弱い”のに病態は進むというギャップが生まれます。痛みがない(網膜には痛覚がない)ことも受診遅れに拍車をかけるため、問診・啓発の観点でも「治る/治らない」の議論以前に「早期介入が前提」の疾患として位置づける必要があります。
臨床説明では、次の3点に分けると誤解が減ります。
- ①網膜が貼る(手術のゴール1:解剖学的復位)
- ②再発せず安定する(ゴール2:再剥離・PVRの回避)
- ③見え方が戻る(ゴール3:視機能の回復)
このうち③は黄斑の状態や剥離期間、術後の網膜微細構造などの影響を受けやすく、“復位=視力が完全に元通り”ではない点を、医療者側が一貫して伝える必要があります。
参考リンク(疾患の概説、症状・検査・治療法の全体像)。
網膜分離症 治る 手術
手術は大別して「眼外から」網膜裂孔部位にあて物(バックル)を置く強膜バックリング系と、「眼内から」硝子体を処理して裂孔閉鎖・牽引解除を図る硝子体手術に整理できます。
実臨床では、病型、裂孔位置、硝子体牽引の要素、年齢、有水晶体/偽水晶体、混濁や出血の有無などで選択が変わるため、「術式の優劣」より「病態に対する合理性」を言語化するのが説明の要点です。
日本眼科学会の資料でも、バックリングは裂孔閉鎖と牽引軽減、硝子体手術は牽引解除とタンポナーデ物質で裂孔閉鎖という原理で整理されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/7ad93c0b84e130b3fb6848d96fab3c6170daf1b1
この“牽引”という語は患者には抽象的なので、医療者向けに言い換え例を作っておくと役立ちます。たとえば「裂け目の周囲を引っぱるゼリー(硝子体)を減らして、穴が開かない・広がらない状態にする」と翻訳すると、術式の違いが伝わりやすくなります。
また、眼内に空気・特殊ガス・シリコーンオイルを入れるのは、剥がれた網膜を内側から押さえつける“タンポナーデ”のためで、術後に体位制限が必要になる理由にも直結します。
この点は「術後の姿勢がつらいのはなぜか」「いつまで必要か」という患者の最大関心事とつながるため、看護指導・退院指導の骨格として先に説明しておくと、術後アドヒアランスが上がります。
参考リンク(裂孔原性網膜剥離の術式、歴史、DPCデータによる実態など)。
https://www.gankaikai.or.jp/press/20171129_2.pdf
網膜分離症 治る 硝子体手術
硝子体手術は、眼内から牽引要因(硝子体)を処理し、液・空気置換で網膜を復位させ、裂孔周囲をレーザー等で固定する流れとして理解されます。
日本眼科学会の疾患解説でも、硝子体手術ではほぼ全例で空気・特殊ガス・シリコーンオイルを用いること、そして術後にうつぶせ等の体位制限が必要になることが明確に示されています。
医療従事者向けの実務ポイントとしては、「体位制限は気合ではなく物理」だと伝えることです。ガス等の浮力・接触圧で裂孔部を押さえ、癒着が成立する時間を稼ぐのが目的であり、体位が崩れると“押さえたい位置に押さえが効かない”状況が起こり得ます。
そのため、術後説明では「うつぶせの目的(押さえる場所の問題)」「例外(裂孔位置や術式で指示が変わる)」「守れない時の相談(介護・整形外科疾患・睡眠時無呼吸など)」をセットにして、患者の現実に合わせたプランに落とします。
意外に見落とされがちなのは、“術後に急に見え方が悪い=失敗”と短絡されるケースです。ガスが視軸を遮る間は視力低下が出やすく、患者の不安が急上昇するので、術前から「見え方の変化の予定表」を口頭で共有しておくとクレーム予防になります(どの程度・何日、は施設方針と使用ガスで調整)。
網膜分離症 治る 視力
視力の回復は「網膜が貼った瞬間に完成」ではなく、術後しばらく時間をかけて改善していくことがあります。黄斑部剥離を伴う裂孔原性網膜剥離で、術後1か月から3か月、6か月にかけて視力改善がみられたという報告もあり、視機能回復が時間軸を持つ点は患者説明に有用です。
一方で、黄斑が剥がれていた期間が長いほど視力予後が厳しくなり得る、という臨床感覚は多くの施設情報でも繰り返し述べられています。医療者としては、ここを断定口調で煽るのではなく、「黄斑が関与すると、貼っても“画質の限界”が残ることがある」という説明に落とし込むと、患者の理解が進みます。
患者が「治ったのに見えにくい」と訴えるとき、鑑別の入口はシンプルに3つです。
- 網膜は貼っているが、黄斑機能回復に時間が必要(経過観察と説明の勝負)
参考)黄斑剥離を伴う裂孔原性網膜剥離における年齢と裂孔部位、術後視…
- 網膜は貼っているが、黄斑前膜など別の黄斑病変が残存/顕在化(OCTで再評価)
参考)https://www.hosp.u-toyama.ac.jp/amc/topic65/
- 網膜が再剥離している、またはPVRなどで引きつれが進行(早期再診の導線が重要)
参考)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/101_857.pdf
参考リンク(黄斑疾患や網膜剥離術後の見え方、体位制限などのQ&A形式)。
網膜分離症 治る 予後(独自視点:薬剤性・説明責任)
検索上位の一般向け記事は「症状→手術→うつぶせ→予後」の定型が多い一方、医療従事者の現場では“病態そのもの以外”で予後がぶれる場面があります。独自視点として押さえたいのが、①薬剤性・全身疾患との絡み、②説明責任(インフォームドの設計)です。
まず①として、厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルでは、薬物投与の副作用として惹起される網膜障害に「網膜剥離」などが報告されていることが明記されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000990363.pdf
外来で「治るのか」の相談を受けた際、抗がん剤・免疫関連薬、ステロイド、抗凝固薬などの背景を持つ患者では、主病名の説明だけでなく「薬剤・全身状態の変更が視機能/手術計画に影響し得る」ことをチームで共有するのが安全です(この一言が入るだけで、後日のトラブルが減ります)。
次に②の説明責任です。日本眼科学会の解説では、眼内に空気や特殊ガスを注入する場合、術後にうつぶせなどの体位制限を伴う安静が必要とされていますが、患者はこの“生活制限の重さ”を術後に初めて実感することが少なくありません。
したがって術前説明は「術式」より「術後に何ができないか」を先に示し、仕事・介護・運転・移動手段(公共交通/車)まで含めて、患者が意思決定できる情報設計にすることが重要です。
さらに、難治化の代表として増殖性硝子体網膜症(PVR)は、復位率や追加手術の可能性に影響し得ます。日本眼科学会誌のPVR手術成績の報告では、病型や増殖性変化の範囲によって復位率が変動する旨が示されており、再発・複数回手術の説明の根拠として使えます。
患者に「1回で治る可能性が高いが、条件によっては追加治療が必要になる」ことを、脅しではなく“想定シナリオ提示”として伝えると、治療同意の質が上がります。
参考リンク(薬剤性を含む網膜障害の位置づけ、臨床対応の考え方)。