巨視症と黄斑前膜と変視症検査

巨視症と黄斑前膜

巨視症の臨床ポイント
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「左右差」の訴えが鍵

巨視症/小視症は「左右の見え方の相対評価」であり、どちらが異常側か決めつけず両眼で評価する。

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眼科疾患+中枢性も想定

黄斑前膜など黄斑疾患が多い一方、脳など中枢性疾患が隠れる可能性もあるため、随伴症状と経過が重要。

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簡易検査→OCTへ

アムスラーチャート等の簡易チェックで拾い上げ、眼底検査・OCTで器質的変化を確認する。


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巨視症の定義と左右差の注意点

巨視症(大視症)は、同じ対象物が「通常より大きく」見える、または左右眼で像の大きさが違って感じられる視覚の訴えとして臨床上扱われます。左右差の訴えは、本人にとって“どちらが大きい/小さい”という相対評価に過ぎず、実際には「正常眼がどちらか」は問診だけで断定できません。左右で見える大きさが違う場合は、必ず両眼で検査して原因を特定する、という整理が実務的です。

また、巨視症は「屈折異常のピント問題」とは別軸のことが多く、眼鏡度数の変更で改善しない訴えとして出てきやすい点が重要です。訴えとしては「文字が大きく感じて読みにくい」「片眼で見ると行間の間隔が違う」「片側の目だとスマホ画面のUIが拡大したように見える」など、サイズ感の歪みとして表現されます。

医療従事者が最初に押さえるべきは、巨視症は“病名”というより“症状のラベル”であり、背景に黄斑疾患(牽引・浮腫・剥離)や中枢性の異常が存在し得ることです。実際、黄斑疾患では変視症(歪んで見える)を伴うことも多く、サイズ感の異常と歪みは同時に出現し得ます。

巨視症と黄斑前膜の関係

巨視症の原因として、外来でまず念頭に置かれる代表が黄斑前膜(黄斑上膜)です。黄斑の表面に膜が形成され、その膜の収縮が黄斑を変形させ、厚みや皺襞を作ることで、視力低下・変視症に加え、巨視症(左右でものの大きさが違って見える)を来すことがあります。

黄斑前膜は「加齢」「糖尿病網膜症」「網膜静脈閉塞症」「ぶどう膜炎」「外傷」などを契機に続発する場合もあり、既往歴からリスクを拾えることがあります。患者は「歪み」を主訴にすることもあれば、「左右差」「拡大して見える」を先に訴えることもあり、問診で症状を“変視症だけ”に回収しない姿勢が必要です。

治療の考え方は症状強度で分かれます。黄斑上膜は症状が強ければ硝子体手術が検討されますが、症状が強くない場合は経過観察となることもあります。ここでの実務上のポイントは、視力表の数字だけでは拾いにくい“生活上の困りごと(読書・運転・PC作業)”が、巨視症や変視症の程度で大きく左右される点です。

巨視症の検査:アムスラーチャートとOCT

巨視症の評価では、まず「片眼ずつ」の自覚症状の再現と、変視症や暗点の有無を簡便に拾い上げることが役立ちます。アムスラーチャートは格子状の図を見て、変視症(歪み)・中心暗点などの有無を大まかに確認する目的で使われます。現場では、患者が「歪みはない」と言っていても、チャート上で線の湾曲や欠けを自覚するケースがあり、問診を補強できます。

一方で、巨視症は“歪み”として出ないこともあるため、アムスラーチャートが陰性でも否定にはなりません。そこで重要になるのが、眼底検査とOCT(光干渉断層計)です。黄斑前膜の膜形成、黄斑の肥厚や皺襞、牽引の有無はOCTで把握しやすく、症状(巨視症・変視症)と器質の対応付けが可能になります。

医療従事者向けの実務としては、以下のように“訴え→検査”を紐づけると説明しやすくなります。

  • 「片眼で見ると大きい/小さい」→両眼別の視力・屈折・眼位の確認+黄斑評価(眼底、OCT)。
  • 「線が波打つ」「格子が曲がる」→アムスラーチャートで再現性確認+黄斑疾患スクリーニング。
  • 「急に起きた」「頭痛や神経症状がある」→眼科疾患だけでなく中枢性の除外も意識。

参考:左右差(大視症/小視症)の考え方と、黄斑前膜が大視症の原因になりうる点

左右で見える大きさが違う|おながファミリー眼科 戸塚区 栄区 本郷台
横浜市戸塚区のおながファミリー眼科です。戸塚駅から江ノ電バス(T2系統)の「雪ノ下」バス停下車すぐ、本郷台駅から小菅ケ谷北公園行の江ノ電バス(H1系統)の「小菅ヶ谷小学校前」バス停下車徒歩7分で、サミットストア下倉田店そばにあります眼科クリ...

参考:黄斑上膜の症状として大視症を挙げ、膜の収縮で黄斑が変形する機序と治療(硝子体手術/経過観察)

眼科の主な疾患と治療方法 |病名別診療科案内|患者さまへ|関西電力病院

巨視症と片頭痛:前兆としての視覚症状

巨視症(大視症)・小視症・変視症という“見え方の異常”は、黄斑疾患だけでなく、片頭痛の前兆(オーラ)として語られることがあります。日本頭痛学会の解説でも、片頭痛の前兆症状は視覚性が最も多く、閃輝暗点などが代表として挙げられています。臨床では「ギザギザの光」「キラキラ」「見えづらい」に加え、「大きさが変に感じる」など多彩な表現が出るため、眼科と神経内科の境界に位置する訴えとして扱うのが安全です。

医療面接で押さえるべきは、時間経過と反復性です。片頭痛オーラは、一定の時間経過(数分〜1時間程度の範囲で変動する、といった訴えになりやすい)と、頭痛や光過敏・悪心などの随伴がヒントになります。逆に、眼科疾患(黄斑浮腫や黄斑前膜など)由来の巨視症は“持続性”で、日単位〜月単位でじわじわ悪化する語りになりやすい点が鑑別の入口になります。

注意点として、片頭痛らしいからといって眼科所見の確認を省略しないことです。特に「片眼だけ」「左右差が固定」「視力低下が進む」といったパターンでは、黄斑疾患側に軸足を置いた評価が必要です。

参考:片頭痛の前兆として視覚症状が多い点(日本頭痛学会の一般向け解説)

片頭痛│日本頭痛学会
日本頭痛学会は頭痛研究・医療をさらに発展させ、国民の疾病の予防・治療に貢献いたします

巨視症の独自視点:医療面接での「デバイス差」聴取

検索上位の解説は黄斑前膜など器質疾患に寄りがちですが、現代の外来では“デバイスで症状が露呈する”という面接上の特徴があります。患者は新聞や遠方視では気づかず、スマホのアイコン配列やPCの罫線、表計算のグリッドなど「規則正しいパターン」を見た時に、初めて“片眼だけ拡大して感じる”“左右でUIの大きさが違う”と訴えることがあります。これは、アムスラーチャートが「格子」で歪みを拾うのと同じで、日常の“格子・直線・反復”がセルフスクリーニングになっているとも言えます。

この観点を面接に組み込むと、訴えの具体化が速くなります。たとえば次の質問は、患者が症状を言語化しやすいことがあります。

  • 「スマホの文字サイズやアイコンは左右で同じに見えますか?」
  • 「片眼で見たとき、表や方眼、罫線は曲がりますか?」
  • 「“大きい”のか“近い”のか、“歪む”のか、どれが一番近いですか?」

また、患者が「目が悪いせいで大きく見える」と自己解釈していると、受診が遅れることがあります。巨視症は屈折異常では説明しにくい場合があり、眼鏡で改善しない、片眼で顕著、変視症を伴う、といった特徴を医療者側が言語化して伝えることは、受診行動と検査同意(OCTなど)をスムーズにします。

最後にトリアージの要点です。急性の視覚症状で、神経症状(しびれ、言語のもつれ)や激しい頭痛を伴う、あるいは視野障害が疑われる場合は、眼科単独で完結させず中枢性疾患の評価ルートも同時に確保するのが安全です。一方、慢性的な左右差・歪み・読みにくさが主であれば、黄斑疾患(黄斑前膜など)を軸に、眼底+OCTで構造評価を進めるのが合理的です。