貧血網膜症ガイドラインと眼底検査と治療

貧血網膜症 ガイドライン

貧血網膜症を「ガイドライン的」に読む要点
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病態は低酸素+出血/血栓の複合

貧血だけでなく、血小板・凝固/線溶異常が重なると眼底は多彩になり、原因検索の優先順位が変わります。

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眼底所見は全身精査のトリガー

若年の網膜血管閉塞や出血では、高血圧・動脈硬化が目立たなくても血液成分分析が重要です。

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検査は「眼」+「血液」+「薬剤」

眼底検査/OCT/蛍光眼底造影に加え、一般血液検査と凝固・線溶を組み合わせ、必要なら薬剤性も鑑別します。


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貧血網膜症 ガイドラインの定義と病態

貧血網膜症は、貧血に伴う網膜の低酸素・血管内皮障害・血液粘稠度変化などを背景に、網膜出血や白斑、血管異常、時に血管閉塞や硝子体出血までを含む広い「眼底病変の集合」と捉えると臨床運用しやすいです。

特に重症の貧血(例:悪性貧血、失血性貧血など)では、眼底に綿花状白斑、網膜表層出血、Roth斑、静脈拡張や蛇行などが観察されうるとされ、眼科所見が全身の重症度を反映する場面があります。

「ガイドライン」として厳密に貧血網膜症だけの単独ガイドラインが整備されていない領域では、病態を①出血傾向、②粘稠度亢進、③血栓傾向の3群に整理し、それぞれに対応する検査・治療へ落とすのが実務的です。

貧血網膜症の“意外な落とし穴”は、単純な鉄欠乏だけではなく、血液凝固阻害因子異常や線溶系異常など、いわば「血栓素因」が同居して網膜循環障害(網膜静脈閉塞・網膜動脈閉塞など)として出てくることがある点です。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/6c2c0c8c64fab414b8dbbde8c9ab6e451a876e42

実際、網脈絡膜循環障害患者159例のスクリーニングで、24.5%に血液成分異常が確認された報告があり、内訳に鉄欠乏性貧血、von Willebrand病、プロテインS異常症などが含まれています。

このため「貧血がある=出血だけ」と早合点せず、眼底所見のパターンから“出血優位か/閉塞優位か”を見極め、次に採る血液検査のセットを変えるのが安全です。

参考:網脈絡膜循環障害における血液成分分析(鉄欠乏性貧血、凝固・線溶異常、若年例の頻度など)

https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/99_255.pdf

貧血網膜症 ガイドラインに沿う眼底検査と所見

貧血網膜症の評価は、まず眼底検査で「出血・白斑・血管拡張/蛇行・黄斑病変・硝子体出血の有無」を押さえ、必要に応じてOCTや蛍光眼底造影で活動性や合併症(黄斑浮腫、血管閉塞の範囲など)を詰めます。

薬剤性の網膜障害(出血、黄斑浮腫、血管閉塞など)が鑑別に挙がる場合は、同じく眼底検査に加えてOCTや蛍光眼底造影が早期発見に有用とされ、症状があれば早急な眼科紹介が推奨されています。

臨床では「貧血がある患者の網膜出血」を見たときに、貧血網膜症と断定するより先に、糖尿病網膜症・高血圧網膜症・網膜静脈閉塞症などの代表的鑑別を同時に走らせるのが現実的です。

所見の読み方を“ガイドライン的に”単純化すると、次のような整理が役立ちます。

・🩸出血優位:網膜出血、Roth斑、硝子体出血など(血小板減少、凝固異常、薬剤性も含めて考える)ebisuclinicganka+1​

・🧠虚血/閉塞優位:綿花状白斑、血管閉塞像、広範な無灌流(線溶系・凝固阻害因子異常、血小板機能異常、鉄欠乏に伴う血小板増多なども疑う)​
・🧪混合型:上記が同時に存在し、全身状態が悪い/複数因子が重なるほど多彩になる(“眼だけ治療”にしない)​

また、あまり強調されにくいポイントとして、若年者の網膜中心静脈閉塞症に鉄欠乏性貧血の合併が多く、鉄剤投与で著明な改善が得られた例があること、さらに眼底変化の改善に先立って視力が改善する例が多いことが報告されています。

この所見は、眼科フォローの指標として「眼底だけでなく視力の時間経過も臨床意思決定に使える」ことを示唆します(ただし個々の原因疾患に依存します)。

貧血網膜症 ガイドラインの鑑別と血液検査

貧血網膜症を疑う場面では、眼底所見で“出血か閉塞か”を当たり付けたうえで、一般血液検査(赤血球数、Hb、Ht、血小板)と生化学(血清鉄など)に加えて、凝固・線溶系(PT、APTT、フィブリノーゲン等)や必要に応じた因子検査へ拡張する方針が推奨される考え方があります。

網脈絡膜循環障害のスクリーニングとして、一般血液検査・生化学・凝固線溶・血小板機能(凝集能/粘着能)まで含めた「血液成分の分析」を行い、異常があれば再検で確認し、遺伝性が疑われる場合は家系調査や家族の分析も重要とされています。

この枠組みは、貧血網膜症という診断名にこだわらず、「循環障害に起因する眼底疾患で、高血圧糖尿病などの基礎疾患が明確でない症例、特に若年者」で血液成分異常を探すべき、という実務に直結します。

鑑別の実務ポイント(医療従事者向け)

・🧭糖尿病/高血圧の有無:薬剤性網膜障害の鑑別でも、糖尿病網膜症・高血圧網膜症の有無チェックが必要と明記されています。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/a498167d57c9d0fd5eef497a7b2aceaf1542d969

・💊薬剤性:ワルファリンやインターフェロンなどで網膜出血が報告されており、服薬歴は必須確認です。

・🧬血栓素因:若年の血管閉塞は、プロテインS/C異常、プラスミノーゲン異常などが隠れることがあるため、眼底が閉塞型なら検査を躊躇しない。

「意外な情報」として押さえておきたいのは、プラスミノーゲン異常症は抗原量が正常でも活性が低いタイプがあり、線溶が進まず血栓傾向になり得る、というメカニズムです。

このタイプは一般的な“貧血のワークアップ”だけでは拾えず、眼底がきっかけで凝固・線溶へ進んで初めて見つかることがあるため、眼科所見が全身診断の入口になり得ます。

貧血網膜症 ガイドラインに沿う治療とフォロー

治療の第一原則は「眼底所見の背景にある全身原因を治す」ことで、鉄欠乏性貧血が関与する網膜循環障害では鉄剤投与により貧血改善とともに視力や眼底所見が改善した報告があり、原因治療が眼科的転帰にも直結します。

一方で貧血網膜症の皮をかぶった網膜血管閉塞や出血では、薬剤性や凝固異常など別ルートの原因があるため、原因が疑われる薬剤があれば中止/減量を含めた対応が基本で、眼科的には眼底検査・OCT・蛍光眼底造影などで重症度と経過観察を行う考え方が示されています。

また薬物関連の網膜血管閉塞・出血などは、放置すると重症化し元に戻りにくくなるため、医療関係者は初期症状があれば早急に眼科へ紹介する、という行動指針が提示されています。

フォロー設計の現場Tips(“ガイドライン的運用”としての最低限の型)

・👁️眼科フォロー:視力、眼底、必要時OCT/蛍光眼底造影で「出血の増悪」「黄斑合併症」「無灌流/新生血管化の兆候」を追います。

・🩸血液フォロー:Hbの回復だけでなく、血小板数、鉄指標、凝固/線溶異常が疑われた場合は再検で変化を確認します。

・🔁再発予防:原因が血栓素因や血小板機能異常なら、再発予防の観点から内科/血液内科と併診し、リスク因子を長期で管理します。

貧血網膜症 ガイドラインの独自視点:若年の網膜静脈閉塞を「貧血」で止めない

検索上位では「貧血=網膜出血」という説明に寄りがちですが、若年の網膜中心静脈閉塞症や網膜中心動脈閉塞症では血液成分異常の合併率が高く、若年者群で血液成分異常が48.8%と高率だった報告があり、「閉塞型」の眼底は“血栓素因のスクリーニング適応”と捉えるのが合理的です。

この視点に立つと、貧血が見つかった時点で満足せず、鉄欠乏に伴う血小板増多、プロテインS/C異常、プラスミノーゲン異常、von Willebrand病などの可能性まで診療導線に組み込めます。

そして、血液成分の分析で異常を明確化できれば、原因に対する根本的治療が可能になり、進行抑制や再発予防の点からも有用である、という目的が“ガイドライン的に”共有できます。