網膜静脈蛇行症と原因
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網膜静脈蛇行症の所見と眼底
網膜静脈蛇行症という言葉は、臨床では「眼底で静脈がくねって見える状態」を指して用いられることが多く、病名というより所見名として扱うのが安全です。
実際、網膜静脈閉塞症では静脈の拡張や蛇行が起こり得て、同時に網膜出血や浮腫などの所見が加わると「閉塞症としての病態」を疑う根拠になります。
網膜静脈閉塞症では、静脈が詰まることで血流が停滞し、十分な血液が流れなくなると網膜機能が低下し、視界がぼやける・視力低下などにつながります。
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さらに静脈の流れが悪いと行き場を失った血液が漏れ、網膜出血になり、血漿成分の漏出で黄斑浮腫を起こすことがあります。
一方で、蛇行があっても出血や黄斑浮腫がなく、視機能が保たれているケースもあります。
この場合は「ただちに侵襲的治療を要する蛇行ではない」可能性が高いものの、初診時点では“今は軽いRVO”や“別病態の前段階”が紛れていないかを、検査で裏取りする姿勢が必要です。
網膜静脈蛇行症と鑑別診断(網膜静脈閉塞症)
網膜静脈蛇行症を見たときに、まず鑑別に挙げるべきは網膜静脈閉塞症(RVO)です。
RVOは「網膜の太い静脈が詰まって血流が停滞」することで発症し、障害部位によって症状の強さが変わります。
RVOは網膜中心静脈閉塞症(CRVO)と網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)に分けられ、中心静脈が障害されるCRVOのほうが広範な網膜障害となり視機能への影響が大きい一方、頻度はBRVOが高いとされます。
また、周辺部だけの障害では自覚症状が出ないこともあるため、「症状が軽い=安全」とは言い切れず、所見の組み合わせで判断する必要があります。
鑑別で実務的に役立つ観点は次の通りです。
・蛇行“だけ”か:出血、綿花状白斑、硬性白斑、黄斑浮腫が伴うか
・分布:扇形に限局(BRVOを示唆)か、全周性(CRVOを示唆)か
・虚血:無血管野や毛細血管閉塞の程度(新生血管や血管新生緑内障のリスク)
蛇行所見がRVOの一部であるなら、最終的に視力を左右しやすいのは黄斑浮腫で、現在は抗VEGF硝子体注射が黄斑浮腫治療の第1選択として位置づけられています。
逆に、黄斑浮腫も虚血もなく、出血も少ない場合は経過観察の選択肢が現実的になりますが、その判断は「検査で合併症がないこと」を確認して初めて成立します。
網膜静脈蛇行症の検査(OCT・蛍光眼底造影・OCTA)
網膜静脈蛇行症が疑われる場面では、眼底所見の確認だけでなく、黄斑とTITLE:網膜静脈蛇行症と眼底検査と鑑別診断
網膜静脈蛇行症と鑑別診断
網膜静脈蛇行症の所見と眼底検査
網膜静脈蛇行症は「網膜の静脈が拡張し、蛇行して見える」という眼底所見の呼称として扱われることが多く、単独の病名というより“背景病態のサイン”として捉えると整理しやすいです。
典型的に問題になるのは、蛇行が「新規に出現したのか」「片眼性か両眼性か」「出血や浮腫を伴うか」です。
医療面接では、急な視力低下・変視症(ゆがみ)・小視症(小さく見える)・視界のかすみの有無を確認し、中心窩に障害が及ぶと眼鏡で矯正できない視力低下になり得る点を共有しておくと、その後の説明がスムーズです。
眼底評価の実務では、散瞳下眼底検査に加えて、黄斑浮腫の評価にOCTを早期に入れるのが安全策です。
さらに毛細血管の詰まり(虚血)の程度を評価するためにフルオレセイン蛍光眼底造影を行うことがあり、最近は造影剤を使わないOCTAで評価する選択肢も示されています。
「蛇行+網膜出血」「蛇行+黄斑浮腫」「蛇行+虚血所見」という組み合わせは、単なる形態差よりも臨床的な重みが大きく、次の鑑別と治療方針へ直結します。
網膜静脈蛇行症と網膜静脈閉塞症の鑑別診断
現場で最も重要な鑑別は網膜静脈閉塞症(網膜中心静脈閉塞症・網膜静脈分枝閉塞症)で、静脈が詰まって血流が停滞することで網膜機能が落ち、視界のぼやけや視力低下につながります。
網膜静脈閉塞症は基本的に60歳以降に多く、高血圧・糖尿病・高脂血症などがリスクファクターとされ、眼だけでなく全身管理の話に接続する必要があります。
また遠視や緑内障などの眼疾患を持つ人で発症しやすいことも示されており、既往の眼科情報が鑑別の精度を上げます。
病態の理解としては、静脈の流れが悪くなると網膜が虚血になり、虚血網膜からVEGF(血管内皮増殖因子)が放出され、病態を悪化させ得る、という流れが重要です。
静脈うっ滞で行き場を失った血液が毛細血管から漏れれば網膜出血となり、血漿成分の漏出が黄斑に貯留すると黄斑浮腫になって視力を落とします。
つまり「蛇行」という見た目の所見を起点に、実際に警戒すべきは“漏れ(浮腫)と詰まり(虚血)と新生血管”である、とチーム内で共通言語化すると、検査や説明がブレにくくなります。
網膜静脈蛇行症の治療と経過観察
網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫は重要な合併症で、自然に治ることもある一方、最近は積極的に治療を行うことが多い、と整理されています。
黄斑浮腫に対しては抗VEGF薬の硝子体注射が第1選択で、効果は数日で現れることがある一方、数か月で再発しやすく複数回の注射が必要になることがあります。
この「効くが、繰り返すことがある」という見通しは、医療者側が早い段階で伝えておくと、患者の通院中断(フォロー逸脱)を減らしやすいポイントです。
虚血が広範囲にある場合には、虚血網膜からのVEGF産生を抑える目的で予防的にレーザー光凝固術を行うことがあり、すでに新生血管がある場合も退縮目的でレーザーが選択されます。
新生血管に硝子体牽引がかかると硝子体出血を来しうるため、慢性期(数年後)に突然「かすみ」を訴えるケースも想定してフォロー計画を立てます。
網膜中心静脈閉塞症で広い虚血を伴うと虹彩・隅角に新生血管が生じ、血管新生緑内障で眼圧上昇を来すことがあるため、眼圧・前眼部所見も“蛇行の評価”から外さないことが実務的に大切です。
網膜静脈蛇行症と全身疾患
網膜静脈閉塞症は高血圧・糖尿病・高脂血症などの全身疾患がリスクファクターになるとされ、眼底所見が全身リスクの拾い上げにつながる代表例です。
医療従事者向けの運用としては、眼科内で完結させず、既に内科フォローがあるか、血圧・HbA1c・脂質の最近値、服薬アドヒアランスを確認し、必要に応じて紹介状で連携するのが安全です。
特に「自覚症状が乏しい周辺部病変」では放置されやすく、後年の硝子体出血などで初めて“困る症状”として顕在化する可能性があるため、全身管理も含めた説明が患者の行動変容に直結します。
また、患者説明では「網膜は脳の一部で、中枢神経であるため、いったん細胞が死ぬとよみがえらない」という前提が示されており、予防・早期介入の意義を伝える材料になります。
蛇行を見た瞬間に“すぐ注射”ではなくても、「虚血→VEGF→浮腫/新生血管」という進行の道筋を理解してもらうと、検査追加(OCT、OCTA、蛍光眼底造影)への納得が得やすくなります。
医師以外の職種(視能訓練士、看護師、コメディカル)もこの流れを共有しておくと、説明の一貫性が出て医療安全上のメリットがあります。
網膜静脈蛇行症の独自視点
検索上位の一般向け解説は「網膜静脈閉塞症」を中心に整理されがちですが、臨床では“蛇行”の観察自体を長期で比較できるように、初回の眼底写真(できれば広角)を確実にベースラインとして残すことが、その後の判断精度を大きく上げます。
特に、患者が「見え方は変わらない」と言っていても、OCTで中心窩近傍の軽い浮腫が拾えることがあり、所見と症状の乖離を前提にフォロー設計するのが現実的です。
さらに、静脈蛇行を“静脈の問題”と決め打ちしすぎず、家族性の血管蛇行(文献では細動脈蛇行が中心)や微小循環障害仮説など、血管形態が多様である点を知っておくと、説明の幅と鑑別の視野が広がります。
意外と見落とされる運用上の落とし穴は、患者が「片眼の異常」を自覚しにくいことです。
健眼で補正されて受診が遅れ、初診時にすでに黄斑浮腫や虚血が進んでいると、治療しても“完全に元に戻ることは少ない”とされる状況に近づくため、職域健診や人間ドックの眼底検査情報の活用も重要になります。
その意味で網膜静脈蛇行症は、眼底所見の読み方だけでなく「フォローの組み立て」「他科連携」「患者行動の設計」まで含めた総合力が問われるテーマです。
日本眼科医会の解説:検査(散瞳眼底検査・OCT・蛍光眼底造影・OCTA)と治療(抗VEGF、レーザー、合併症)が体系的にまとまっています。