網膜血管炎治療と診断とステロイド

網膜血管炎 治療

網膜血管炎 治療の全体像(医療従事者向け)
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最初に決めるのは「非感染性か感染性か」

ステロイドや免疫抑制は有効だが、感染性を取り違えると増悪しうるため、治療開始前の整理が要点。

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検査はFA中心、OCT/OCTAで補完

網膜血管炎の活動性と虚血評価は蛍光眼底造影(FA)が軸になり、黄斑浮腫や微小循環評価にOCT/OCTAを組み合わせる。

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炎症と虚血・新生血管は別物として管理

消炎(ステロイド/免疫抑制・生物学的製剤)と、虚血に対する網膜光凝固などの局所治療は目的が異なる。


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網膜血管炎 治療の診断:蛍光眼底造影とOCT

網膜血管炎は「血管の炎症(漏出)」と「虚血(無灌流)」が混在し、治療ターゲットが一致しないため、画像で分けて考えると方針が立ちやすくなります。

活動性評価の中核はフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)で、漏出パターンや無灌流領域、血管壁の染まりなどを確認し、治療の強度(全身消炎か局所治療追加か)を決めます。

一方で黄斑浮腫や網膜構造変化の把握にはOCTが有用で、造影剤不要のOCTAは毛細血管閉塞の程度評価にも使われます(施設導入状況に依存)。

検査の実務ポイント(見落としを減らす視点)

  • FA:漏出=炎症優位、無灌流=虚血優位として、同じ「網膜血管炎」でも治療の主目的が変わる。
  • OCT:黄斑浮腫の有無は視力予後に直結し、治療反応性のモニターに向く。
  • OCTA:造影剤が使いにくい症例で反復評価しやすい(ただし炎症の「漏出」はFAほど直接的に見えない)。

網膜血管炎 治療の原因:ベーチェット病とサルコイドーシス

非感染性の網膜血管炎では、原因疾患の同定が「再燃を抑える長期戦略」に直結します。特にベーチェット病は網膜ぶどう膜炎(網膜血管炎を含む)を繰り返しやすく、従来治療抵抗例ではTNF阻害薬が視力予後を改善した、という整理が臨床導入の背景として重要です。

実臨床では、インフリキシマブなどの生物学的製剤は強力ですが、導入前スクリーニング(結核など感染症に注意)や内科連携がガイドラインでも強調されています。

サルコイドーシス関連では、軽いぶどう膜炎・網膜血管炎であればステロイド点眼など局所治療から開始し、重症度に応じて段階的に全身治療を検討する、という基本が押さえどころです。

鑑別と連携のコツ

  • ベーチェット病:眼炎症発作の抑制が目的になりやすく、再燃頻度を軸に治療強化を検討する。
  • サルコイドーシス:まず局所ステロイドで十分か、後極部病変・再燃で全身治療が必要かを段階づける。
  • どちらも「網膜血管炎」だけで完結せず、全身所見・他科評価が治療安全性に直結する。

参考:ベーチェット病の生物学的製剤や治療注意点(導入前スクリーニング等)の根拠

日本眼科学会:ベーチェット病眼病変の治療(PDF)

参考:サルコイドーシスにおける網膜血管の炎症が軽い場合の治療(点眼など)

日本眼科学会:サルコイドーシス(病気の解説)

網膜血管炎 治療の薬:ステロイドと免疫抑制

非感染性ぶどう膜炎・網膜血管炎の治療は、急性炎症をまずステロイドで抑え、長期では副作用を避けるため免疫抑制や生物学的製剤へ移行する「段階的アプローチ」が基本です。

この考え方は「ステロイド単独は副作用の問題が大きく、寛解維持には免疫調整が重要」という整理につながり、慢性・再発例ほど治療設計の質が問われます。

なお局所投与(点眼・周囲注射・硝子体内など)は全身副作用を減らす狙いがありますが、病変部位(後眼部)や重症度によっては全身投与が不可欠な場面があり、投与経路の選択は「到達性」と「安全性」のトレードオフになります。

副作用と安全管理(現場で起きやすい落とし穴)

  • 感染性の除外前に強い免疫抑制を始めると、病原体増殖を助長しうる(後述のCMVなど)。
  • 長期ステロイドは眼圧上昇や白内障など眼科的副作用も問題となり、モニタリング計画を治療開始時点で組む。
  • 免疫抑制・生物学的製剤は、導入前検査と他科連携(特に感染症リスク評価)が質を左右する。

網膜血管炎 治療の落とし穴:サイトメガロウイルス

意外に見落としやすいのが「免疫抑制中に出てきた網膜血管炎=非感染性の再燃」と早合点するパターンです。免疫抑制薬や副腎皮質ステロイド投与中に生じた網膜血管炎が、サイトメガロウイルス網膜炎(感染性)である可能性がある、という報告があり、臨床上の警鐘として重要です。

このケースでは、免疫抑制を増やすほど悪化する方向に働き得るため、「活動性が高い=ステロイド増量」という単純化を避け、感染の手がかり(硝子体混濁の性状、壊死性変化、全身状態、検査)を再点検します。

医療チームとしては、治療抵抗例・非典型例・急速進行例ほど、感染性ぶどう膜炎/網膜炎の再評価をルーチン化すると安全域が上がります。

このセクションの実務メモ

  • 「免疫抑制中の網膜血管炎」は、まず感染性の可能性を思い出す(CMVを含む)。
  • 眼所見だけで断定しない:必要に応じて内科・感染症科と相談し、検体検査も検討する。
  • 治療反応が想定と逆(ステロイド増量で悪化など)のときは、診断仮説の入れ替えを最優先にする。

網膜血管炎 治療の独自視点:抗炎症薬の投与時期

検索上位では「ステロイドが効く/免疫抑制へ」という流れが中心になりがちですが、実は“抗炎症薬は常に善”とは言い切れない、という視点が臨床判断を一段深くします。京都大学などの研究として、コルチコステロイドデキサメタゾン)は病的血管新生の形成初期には抑制的に働く一方、退縮期に投与すると修復に必要な炎症反応が低下し、血管再構築を阻害する可能性が示唆されています。

網膜血管炎の現場では、炎症を抑えること自体は重要でも、「どの病期に、どの強さで、どの経路で」介入するかが最終的な組織修復・虚血進行・新生血管リスクに影響し得る、という発想が安全設計につながります。

具体的には、強い消炎で漏出は改善しても虚血が残れば新生血管リスクは別途残るため、FAで虚血・無灌流領域を把握し、必要なら網膜光凝固などを組み合わせる、という「炎症と虚血の二正面作戦」が理にかないます。

参考:抗炎症薬の“二面性”(投与タイミングと血管修復)

京都大学:ステロイドが新生血管病変に与える二面性