一過性網膜動脈閉塞症と原因と症状と検査と治療

一過性網膜動脈閉塞症と原因と症状

一過性網膜動脈閉塞症:医療従事者向け要点
🧠

TIAと同列の「血管イベント」視点

一過性の視機能障害でも、網膜虚血は脳虚血と同じく早期に脳梗塞へ移行し得るため、眼科単独で完結させず全身評価が重要。

👁️

症状が消えても「なかったこと」ではない

視力が回復しても塞栓・血栓・血管攣縮など背景因子は残る。発作性の既往(反復、持続時間、誘因)を具体的に聴取する。

🚑

初動:眼底・神経・頸動脈を同時に意識

眼底所見は発症直後に典型所見が出ないことがあるため、経過と全身リスクから疑う。頸動脈狭窄や心房細動などの検索へ繋げる。


<% index %>

一過性網膜動脈閉塞症の症状と一過性黒内障

一過性網膜動脈閉塞症は、臨床的には「単眼の視機能障害が一過性に出現し、回復する」パターンとして遭遇しやすく、患者は「片目にカーテンが降りた」「白っぽくなった」「一瞬真っ暗」など多彩に表現します。東京逓信病院の解説でも、一過性黒内障は眼動脈(網膜へ血流を送る血管)血流低下で片眼が一時的に見えなくなると説明され、真っ暗だけでなく白っぽい消失もあり得る点が明記されています。

重要なのは、症状が消えた時点で“軽症”と判断しないことです。TIAは「脳・脊髄または網膜の局所的虚血による一時的な神経学的機能障害で、急性梗塞を伴わないもの」とする考え方が示され、時間よりも「梗塞がないこと」で区別する枠組みが紹介されています。

医療者が押さえるべき問診の芯は、(1)単眼か両眼か、(2)完全暗転か部分欠損か、(3)持続時間(数十秒〜数十分など)、(4)反復性、(5)誘因(起床時、血圧変動、脱水、透析など)です。網膜動脈閉塞症の一般論として、前兆として一過性の視力・視野障害を自覚することがあるとされており、「一過性」症状そのものが前段階のサインになり得ます。

一過性網膜動脈閉塞症の原因と内頚動脈狭窄と心房細動

一過性網膜動脈閉塞症の背景は、塞栓・血栓・血管攣縮など、網膜動脈系の一時的な閉塞(または灌流圧低下)として整理すると理解が早くなります。メディカルノートでは網膜動脈閉塞症の原因として、栓子・動脈血栓・動脈れん縮が挙げられ、糖尿病・高血圧・脂質代謝異常症などによる動脈硬化が多いと説明されています。

特に見逃したくないのが頸動脈病変と不整脈です。東京逓信病院のTIA解説では、一過性黒内障がある場合に「同側の内頚動脈狭窄が強く疑われる」と明記されています。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/f2bc1511b9e24512cfdc394167b414212aaa99f0

また同ページでは、TIAの原因検索として心電図で心房細動がある場合は心原性脳塞栓症の可能性が高い、狭窄が強い場合は血栓が飛んで末梢に詰まった可能性が高い、という考え方が示されています。

意外に盲点になりやすい誘因として、外傷、高度の眼圧上昇、血液透析、心臓カテーテル検査が誘因となり得ることが挙げられています。

「一過性網膜動脈閉塞症=動脈硬化だけ」と決め打ちせず、若年者では膠原病・血管炎・血液凝固障害が原因となることもある、とされているため、年齢で鑑別の重み付けを変えるのが実務的です。

一過性網膜動脈閉塞症の検査と眼底検査と蛍光眼底造影

検査は「眼局所の証拠固め」と「全身の原因検索」を同時並行に考えます。メディカルノートでは診断のために視力検査、眼底検査、蛍光眼底造影検査、網膜電位図、全身検査などを行うと整理されています。

眼底では、虚血による網膜内層の浮腫・白濁、黄斑が相対的に赤く見える cherry red spot(桜実紅斑)が典型所見として知られますが、注意点として「発症直後すぐには所見が出てこない」ことが明記されています。

つまり、一過性網膜動脈閉塞症を疑うのに十分な病歴があるのに眼底が“きれい”でも、その場で否定しきらない態度が安全です。

蛍光眼底造影では、閉塞により動脈への色素流入欠損や遅延が見られる一方、閉塞が解除されると正常所見になり得ることも記載されています。

この「後から正常化し得る」という性質は、一過性エピソードの証拠が残りにくいことを意味するため、発作時刻・持続時間・視野欠損の形など“再現可能な情報”をカルテに残す価値が高いです。

全身評価の入口としては、TIA解説ページにあるように、血圧測定、血液検査、心電図、MRI/MRA、頸動脈エコーで原因疾患を探す、という流れが実務に直結します。

眼科から紹介する際も「一過性の網膜虚血が疑われるため、頸動脈と心原性塞栓の検索を至急で」と理由が書けると連携がスムーズになります。

一過性網膜動脈閉塞症の治療と眼球マッサージと眼圧下降

治療は、視機能予後だけでなく、脳梗塞など全身イベントの予防という二重の目的を意識します。メディカルノートでは、網膜動脈閉塞後に網膜虚血が約100分程度持続すると不可逆的変化を来し得るため迅速な診断と治療が必要、とされ、治療も「診断がつき次第、早急に開始」と記載されています。

初動として現場で実施されることがあるのが眼球マッサージで、眼科のない医療機関でも網膜動脈閉塞が疑われる場合に施行可能と説明されています。

同ページでは、眼球マッサージの狙いとして網膜動脈の拡張や眼圧低下による血栓移動・血流増加の期待が記載され、眼圧下降手段として前房穿刺やアセタゾラミド内服にも言及されています。

入院後治療の選択肢として、血管拡張薬点滴、星状神経ブロック、高圧酸素療法、線維素溶解療法(血栓溶解)などが列挙され、設備や患者状態に応じて選択される、とまとめられています。

一方、TIAの内科的治療としては、動脈原性が疑われる場合はアスピリン等の抗血小板薬、心房細動など心原性が疑われる場合はワーファリン等の抗凝固薬、併存する高血圧・糖尿病・脂質異常症の治療が基本、と記載されています。

一過性網膜動脈閉塞症の独自視点と医療連携と説明

一過性網膜動脈閉塞症の運用上の難しさは、「眼科救急としての時間軸」と「脳卒中救急としての時間軸」が同時に走る点です。TIAは3か月以内に脳梗塞へ移行する割合が10–15%で、その半数が2日以内というデータが紹介されており、患者説明の段階で“早期リスク”を具体的に共有する根拠になります。

また、TIAは疑った時点で予防的治療をただちに開始することを日本脳卒中学会が推奨している、という記述があり、「症状が消えたから外来で様子見」になりやすい局面へのブレーキとして使えます。

この文脈を眼科側の言葉に翻訳すると、「一過性網膜動脈閉塞症(または一過性黒内障)は“目のTIA”として扱い、頸動脈狭窄・心房細動を除外するまで安全側に倒す」が現実的です。

さらに独自視点として、紹介状・救急連絡で効くのは“否定所見”より“疑う根拠”の明文化です。メディカルノートが述べる通り、眼底所見は発症直後に典型が出ないことがあるため、「眼底に所見なし」より「発症直後で所見が出ない可能性あり、病歴から網膜虚血を疑う」という情報の方が次の医療者の意思決定を助けます。

患者説明では、「視力が戻った=治った」ではなく「原因検索で再発と脳梗塞を防ぐ段階」と言語化し、頸動脈エコー・心電図・MRI/MRAなどの必要性に納得してもらうのが、結果的に受診中断を減らします。

検査・治療の場をまたぐため、院内の運用テンプレ(眼科→脳神経内科/循環器への緊急紹介基準、夜間の連絡先、ABCD2スコア確認の導線など)を整備しておくと、属人的な漏れを減らせます。ABCD2スコアがTIAの脳梗塞発症リスク判断に用いられ、3点以上で入院して治療開始すべきとされる、という実装しやすい基準が示されています。

参考:網膜動脈閉塞の病態・所見(cherry red spot、眼底で直後に所見が出ない注意点)、検査と緊急処置(眼球マッサージ、眼圧下降、入院後治療)

網膜動脈閉塞症について
網膜動脈閉塞症とは、網膜の内層を栄養する網膜動脈のなかでも網膜中心動脈が閉塞した状態をいいます。閉塞した部分が一部のみの場合は、網膜動脈分枝閉塞症とよばれます。網膜動脈閉塞が発症したのち、網膜の虚血状態が長時間(約100分程度)持続す...

参考:TIAの定義変更、脳梗塞への早期移行リスク、一過性黒内障と内頚動脈狭窄、原因検索(心電図・MRI/MRA・頸動脈エコー)、抗血小板薬/抗凝固薬、CEA/CASの考え方

https://www.hospital.japanpost.jp/tokyo/shinryo/nouge/tia.html