多発消失性白点症候群治療経過観察視力予後

多発消失性白点症候群治療経過観察

多発消失性白点症候群(MEWDS)治療の要点
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原則は経過観察

視力・眼底所見・視野は自然経過で改善する「self-limiting」が基本。過剰治療を避けつつ、例外(非典型例・合併症)を拾い上げます。

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診断は画像の組み合わせ

FA/IA、眼底自発蛍光、OCT、視野で活動性を多面的に評価。白点が目立たない症例ほど画像が診断の決め手になります。

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鑑別と合併症で方針が変わる

AZOOR-complex(PIC/MFC等)、感染性後部ぶどう膜炎、CNV合併などを除外・監視。必要時は抗VEGFや免疫抑制を含む別ルートへ。


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多発消失性白点症候群治療の基本:経過観察と自然寛解

多発消失性白点症候群(MEWDS)は、視力や眼底所見だけでなく視野異常も含めて自然経過で改善し得る「self-limiting」な疾患として報告されています。

日本眼科学会系の報告(MEWDS 5例の検討)では、初診時にマリオット盲点拡大・中心視野沈下・傍中心暗点などが見られても、週〜月単位の経過観察で軽快したとされています。

したがって医療従事者向けの実務としては「まず経過観察」が原則になりやすく、初診時点で病勢を過大評価して全身ステロイドへ直行しない判断が重要になります。

ただし「経過観察=放置」ではありません。

経過観察の質は、観察項目(視力・視野・OCT・眼底自発蛍光・FA/IA)と観察間隔(急性期は短め)で決まります。

特に患者が訴える症状(光視症、霧視、中心暗点、視野欠損)が日常生活や就労に直結するため、説明不足のまま「自然に治る」と言い切ると、受診中断や不安増大につながり得ます。

実臨床で押さえるべき観察ポイントを、最低限のチェックリストとしてまとめます。

  • 視力:矯正視力の推移(初診〜1〜2週間後〜1か月)。
  • 視野:Humphrey中心30-2等でマリオット盲点拡大・中心視野沈下・傍中心暗点の変化を追跡。
  • OCT:外層(EZなど)の障害と回復の相関を意識して評価。
  • FA/IA:白点に一致する所見を確認しつつ、活動性や鑑別の根拠を残す。

臨床的に意外と見落とされやすいのが「視力が改善しても視野所見が遅れて残る」パターンです。

上記5例報告でも、視力が回復してもマリオット盲点拡大が軽度残存した症例が示されています。

このズレを事前に患者へ説明しておくと、「治っていないのでは」という不安を減らし、通院継続に寄与します。

多発消失性白点症候群治療の分岐:ステロイドの位置づけ

MEWDSは基本的に無治療で自然軽快する一方、症状や所見が強い症例ではステロイド全身投与が検討されることがあります。

臨床眼科系の症例報告では、視力低下が顕著なMEWDSに対して早期のステロイド全身投与で病期短縮の可能性が示唆されています。

一方で、自然経過でも週〜月単位で改善する疾患である以上、ステロイド介入の「治癒促進効果」を個々の症例で断定するのは難しく、適応は慎重に考える必要があります。

ここで実務上のコツは、ステロイドの議論を「MEWDSそのものの治療」だけに閉じないことです。

参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jja2.13008

ぶどう膜炎一般の文脈では、視機能に重篤な障害を来す後眼部炎症(黄斑浮腫、広範囲な網膜血管炎、視神経乳頭浮腫など)では全身ステロイドが治療選択肢になり得ることがガイドラインに記載されています。

つまりMEWDSが「軽症の自己限定」から外れて、後眼部炎症として重く振る舞う場合(またはMEWDS以外の病態が紛れている場合)に、初めて全身治療の論理が成立します。

現場での判断軸を、あえて二段階に分けると整理しやすいです。onlinelibrary.wiley+1​

  • 第1段階:MEWDSとして典型・軽症か(経過観察でよいか)。
  • 第2段階:重症後眼部炎症として介入すべき所見があるか(ぶどう膜炎治療の原則に乗るか)。

また、ステロイドを使う場合は「投与したこと」より「投与前後で何が改善したか」を記録に残すことが重要です。

参考)視神経乳頭浮腫を伴った多発消失性白点症候群の1例 (臨床眼科…

医療従事者向けの記載としては、視力、OCT外層所見、視野(盲点拡大の程度)、炎症所見(硝子体細胞など)を時系列で残すと、後で治療妥当性を説明しやすくなります。

多発消失性白点症候群治療に必要な検査:OCT・自発蛍光・FA/IA・視野

MEWDSの診断・経過観察では、眼底所見だけでなく画像・機能検査を組み合わせて「活動性」と「回復」を評価するのが要点です。

特に視野に関しては、静的自動視野(Humphreyなど)でマリオット盲点拡大、中心視野沈下、傍中心暗点を捉え、経過で改善することが示されています。

この“機能が戻っていく過程”を数値で示せる点は、患者説明だけでなく、紹介元へのフィードバックにも有用です。

画像所見で押さえるべき頻出ポイントは次の通りです。doctork1991+1​

  • OCT:急性期に外層(EZなど)の乱れ/消失が見られ、改善とともに復元するという説明が臨床情報として共有されています。
  • FA:白点に一致した早期からの過蛍光、後期の組織染(染まり)を示す例が報告されています。
  • IA(ICGA):白点に一致した低蛍光が観察され、FAの過蛍光部位以外にも低蛍光が見られることがあるとされています。

ここで意外性のある実務ポイントは、「白点が肉眼で分かりにくい症例ほど画像の価値が上がる」ことです。journals.lww+1​

診断が難しい近視眼の症例で、眼底自発蛍光が診断に有用だったケースが報告され、治療として全身プレドニゾロンが用いられた例もあります。

参考)https://journals.lww.com/10.1097/MD.0000000000032713

この種の症例は、見た目が地味であるほど誤診や過少評価が起きやすく、結果としてAZOORや感染性疾患の見逃しにつながり得るため、初期から“画像で固める”発想が安全です。nichigan+1​

参考リンク(視野所見と自然経過の根拠として有用)

MEWDS 5例の静的自動視野検査所見と経過(無治療経過観察で視野が改善する点、FA/IA所見、マリオット盲点拡大の扱いがまとまる)

多発消失性白点症候群治療で重要な鑑別:AZOOR・白点症候群・感染性

MEWDSは「白点症候群」やAZOOR-complexの文脈で語られ、類似疾患(PIC、MFCなど)との鑑別が重要になります。

AZOORの診断ガイドラインPDFでは、より大きな疾患概念としてAZOOR-complexが述べられ、その中にMEWDSが含まれることが記載されています。

この位置づけを踏まえると、MEWDSと思って経過観察していた症例が、実は別疾患(再発しやすい、瘢痕を残す、CNVを合併しやすい等)だった、という臨床上の「落とし穴」を避けやすくなります。

鑑別を医療現場で実装するなら、「経過観察をするための除外項目」を明示しておくのが現実的です。nichigan+1​

  • 感染性後部ぶどう膜炎の可能性:ぶどう膜炎ガイドラインが推奨するような病因検索・必要時の抗微生物治療を優先する。
  • AZOOR:視野障害が遷延・拡大する、眼底が初期正常でも症状が強いなどの文脈を意識する。
  • PIC/MFCなど:再発やCNVリスクの文脈で観察密度を上げる。

また、MEWDSそのものでも脈絡膜新生血管(CNV)の報告があることが、国内報告内で言及されています。

頻度は高くないとしても、患者が「視力が一度戻ったのに、歪みが出てきた」「中心が暗い」などと訴える場合には、OCTで網膜下液や新生血管を疑う所見がないかを再確認する姿勢が安全です。

参考リンク(ぶどう膜炎の全身治療・ステロイド適応判断の土台として有用)

ぶどう膜炎診療ガイドライン(重症後眼部炎症に対するステロイド全身投与の適応、投与前評価や副作用モニタリングの考え方を確認できる)

多発消失性白点症候群治療の独自視点:患者説明と就労支援(見え方の症状)

MEWDSは自然軽快し得る一方で、急性期には光視症、霧視、中心暗点、盲点拡大など“患者の生活を壊すタイプの症状”が前面に出ます。

そして、視力(小数視力)が戻っても、視野異常がしばらく残ることがあるため、本人の体感と検査結果のズレが生じやすい点が特徴です。

このズレがあると、患者は「検査では良いと言われるのに仕事がつらい」という状況に陥り、医療不信・受診中断・過度なセカンドオピニオン巡りにつながります。

医療従事者としての介入価値が高いのは、薬ではなく“説明と段取り”の部分です。

例えば、初診時に以下を明文化して渡すだけでも、治療満足度と通院継続が改善することが多いです(院内文書・説明テンプレの形が現実的です)。

  • ⏳ 回復の目安:週〜月単位で改善し得るが、視野は遅れて戻ることがある。
  • 🧪 経過で見る検査:視力だけでなく視野とOCTを追う理由。
  • 🚫 受診を早めるサイン:変視、中心暗点の増悪、急な再低下(CNVや別疾患の可能性)。

また就労支援の観点では、視力よりも「眩しさ」「チカチカ」「視野欠損」が作業効率に直撃します。

そのため、診断書や勤務配慮の文言は「視力」単独ではなく、「視野障害(盲点拡大・中心暗点)によりPC作業が困難」など機能障害を記載したほうが、職場の理解を得やすいケースがあります。

MEWDSの治療は薬剤選択だけでなく、検査設計と患者行動(受診継続・悪化時受診)を支える運用設計まで含めて初めて完成します。