色素上皮網膜性ジストロフィー 症状 診断
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色素上皮網膜性ジストロフィーの症状:夜盲・視野狭窄・視力低下
色素上皮網膜性ジストロフィーは名称のニュアンスが広く、実臨床では「遺伝性網膜ジストロフィ(網膜色素変性症を含むスペクトラム)」として症状から疑い、検査で型を詰めていく進め方が現実的です。
典型的に患者が最初に訴えやすいのは夜盲と視野狭窄で、進行に伴って視力低下が前景化し、後期には色覚異常・光視症・羞明を伴うこともあります。
症状は原則として両眼性で、緩徐進行である点が重要で、急性の視力低下や強い炎症所見が前景にある場合は別の疾患軸(薬剤性、炎症性、続発性)を必ず並走して考えます。
臨床の落とし穴は、患者が「暗い所が苦手」「段差が怖い」と生活課題として訴える一方で、視力表ではまだ保たれている段階があり、受診理由が「白内障かも」「眼精疲労」など迂回表現になりやすい点です。
参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jja2.12089
この段階で問診テンプレとして、①暗順応、②夜間歩行、③周辺視野、④まぶしさ、⑤家族歴(孤発もある)を短時間で拾うと、検査設計が一気に合理化します。
患者説明では「中心視力が残りやすい型もあるが、視野障害で生活が難しくなる」点を早期から共有すると、支援導入が遅れにくくなります。
色素上皮網膜性ジストロフィーの診断:眼底・網膜電図(ERG)・眼底自発蛍光
指定難病としての網膜色素変性症の診断枠では、進行性であること、自覚症状、眼底所見、ERG異常、炎症性または続発性でないことを満たすかどうかが骨格になります。
眼底所見としては、網膜血管狭小、粗造な網膜色調、骨小体様色素沈着、多発白点、視神経萎縮、黄斑変性などが挙げられており、所見が揃わない早期ほど機能検査や画像の比重が上がります。
ERGは減弱型・陰性型・消失型などの異常が診断要素に含まれ、症状の訴えと眼底の見た目だけで「気のせい」「年齢変化」に寄せないための重要な客観軸になります。
眼底自発蛍光(FAF)はRPE(網膜色素上皮)障害の“地図”として役立ち、RPE萎縮に伴う過蛍光または低蛍光といった所見が診断の臨床検査所見に位置づけられています。
一方で、黄斑に主座を置く遺伝性病型(黄斑ジストロフィ群)では、両眼性・進行性・遺伝性という定義を満たしつつ、眼底写真・FA/FAF・ERG・OCTなど複数モダリティで診断を組み立てる考え方が示されています。
つまり「色素上皮」という語からRPE病変に引きずられて加齢黄斑変性や中心性漿液性脈絡網膜症だけに視野を狭めず、遺伝性ジストロフィの枠組みで“機能+構造+経時性”を統合するのが安全です。
(日本語で診断枠組みと鑑別疾患がまとまっている:黄斑ジストロフィーの診断基準・鑑別の項)
(日本語で症状・診断基準・検査所見(ERG、FAF、OCT)と重症度分類まで確認できる:指定難病としての診断の項)
色素上皮網膜性ジストロフィーのOCT:エリプソイドゾーン(EZ)と網膜菲薄化
OCTは「いま患者が困っている症状」が、網膜のどの層の障害として現れているかを説明可能にするため、医療従事者にとっても患者説明にとっても価値が高い検査です。
指定難病の網膜色素変性症の検査所見では、中心窩におけるエリプソイドゾーン(EZ)の異常(不連続または消失)が挙げられており、視機能低下の構造的裏づけとして重要です。
黄斑ジストロフィ群でもOCTは「病巣部における網膜の形態異常」が診断要素に含まれ、病型によってはEZ消失と網膜菲薄化などが具体所見として記載されています。
OCT所見の読み方で意外に実務差が出るのは、「黄斑がダメージを受ける病型」と「周辺優位で黄斑が後から巻き込まれる病型」で、患者が訴える不自由(読みづらい/歩きづらい)がどちらに寄っているかが層構造と対応しやすい点です。
検査結果説明では、EZを“視細胞の働きの目印”として言語化し、見えている・見えにくいの二択ではなく「保たれている範囲が狭くなっている」イメージを共有すると、ロービジョン導入の心理的ハードルが下がります。
また、OCTで黄斑浮腫や白内障など“治療で改善しうる合併症”が拾える場合があり、進行性疾患でも「できる介入がある」部分を切り分けられます。
色素上皮網膜性ジストロフィーの鑑別:薬剤性・炎症性・加齢黄斑変性
遺伝性の黄斑ジストロフィ群の診断枠では、薬剤性(クロロキン、ハイドロオキシクロロキン、チオリダジン、タモキシフェン等)、外傷性・近視性、後天性網脈絡膜疾患(CSC、AZOOR、MEWDS等)、先天異常、加齢黄斑変性(萎縮型)などを鑑別として明示しています。
このリストは「色素上皮」という言葉に反応してRPE障害を見たときに、遺伝性に寄せすぎないための安全装置として、そのまま問診・検査オーダーのチェックリストに転用できます。
加齢黄斑変性(萎縮型)については年齢50歳以上や地図状萎縮の形態条件などが挙げられており、遺伝性疾患との区別を“年齢”だけに依存しない姿勢が重要です。
鑑別の現場でありがちな誤差は、①「視野狭窄=緑内障」に短絡する、②「黄斑の萎縮=AMD」と短絡する、③「所見が軽い=心因性」と短絡する、の3つです。
これを避けるには、症状(夜盲・暗順応)と機能検査(ERG)と画像(FAF/OCT)の“三点照合”で、どの軸が最初に破綻しているかを見るのが効率的です。
特に薬剤性は「中止すれば終わり」ではなく、既に生じた障害の評価と生活支援が必要なので、処方歴の棚卸しを最初に行う意味があります。
色素上皮網膜性ジストロフィーの独自視点:難病制度・重症度分類とチーム支援
進行性の遺伝性網膜ジストロフィでは、薬や手術の話だけでなく、制度と支援の導線設計がアウトカムを左右します。
網膜色素変性症(指定難病90)では重症度分類(矯正視力と視野狭窄の組み合わせ)が示され、対象となる重症度(II〜IV度)も明記されています。
黄斑ジストロフィー(指定難病301)でも、要件の判定事項として重症度分類(良好眼の矯正視力0.3未満など)が記載されており、診断名の確定が医療費助成や支援の入口になり得ます。
ここが“検索上位では薄くなりがち”な実務ポイントで、患者にとっては視力そのものより「読み書き」「移動」「就労継続」の困難が先に来るため、診断の段階からロービジョンケア、視覚補助具、就労支援、家族支援を同じ診療計画に載せる価値が高いです。
また、網膜色素変性症の説明では「完全な医学的失明(光覚なし)に至る割合は高くない」「中心視野が残る例もあるが視野狭窄で生活が困難になる」点が示されており、恐怖訴求ではなく現実的な見通しと対策を提示しやすい構造になっています。
外来運用としては、紹介状に「夜盲・視野狭窄の生活影響」「FAF/OCTの要点」「ERG予定」「難病申請の視点」をセットで書くと、専門施設への連携が滑らかになります。