黄斑部瘢痕と脈絡膜新生血管
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黄斑部瘢痕の症状と視力低下
黄斑部瘢痕は、黄斑(中心窩近傍)の網膜下〜網膜色素上皮(RPE)周辺に線維性組織が形成され、中心視力の低下や質の低下(細部が読めない、にじむ、コントラストが落ちる)として表面化します。
臨床で患者が訴えやすいのは、視界の真ん中が見えにくい「中心暗点」、直線が波打つ「変視症」、片眼視で気づく「左右差」で、病変が小さくても職業運転・読書・電子カルテ入力などのタスクで支障が出ます。
重要なのは、矯正視力(小数視力)が比較的保たれていても「読めるのに疲れる」「文字が飛ぶ」など、中心窩周囲の微細な障害がQOLを大きく落としうる点です。
【医療従事者向けの観察ポイント】
- 👁️ 片眼遮閉での自覚症状の確認(両眼視だと見逃されやすい)。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/839e75eff15e0fc3315f46eaa3956acda9450eec
- 📝 症状の時間軸(数日〜数週で急に悪化=活動性を疑う)。
参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jja2.12863
- 🧠 「見え方の質」を言語化してもらう(暗点の位置、歪み、文字欠け)。
黄斑部瘢痕の原因と出血
黄斑部瘢痕の代表的な形成ルートは、脈絡膜新生血管(CNV/MNV)が発生し、漏出・浮腫・網膜下出血を経て、最終的に黄斑部に大きな傷跡(瘢痕)として固定化する流れです。
滲出型加齢黄斑変性では、網膜下に異常血管が形成され、限局性の浮腫や出血を起こし、未治療で放置すると黄斑下に円盤状瘢痕が形成されることがあると整理されています。
強度近視(病的近視)でも黄斑部新生血管(近視性MNV)が問題となり、病的近視患者の約10%に生じるとされ、中心視力障害の主要な原因になります。
【少し意外だが臨床的に効く視点】
- 🩸 近視性MNVは「加齢黄斑変性のMNVのように濃い出血になることは少ない」ため、眼底所見だけで軽く見えても活動性を否定しない姿勢が重要です。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/7bb3990dc2147ce92f64ca0b060f1a5be42a9d1c
- 🔍 近視性眼底の萎縮性変化に紛れてMNVが判然としないことがあり、症状が強いのに所見が乏しいケースほど画像の組み合わせが必要になります。
黄斑部瘢痕の検査とOCT
黄斑部瘢痕やその前段階(活動性MNV)を評価する軸はOCTで、網膜内液・網膜下液・RPE形状・高反射病変などを追跡し、治療反応や再燃を見ます。
病的近視の文脈では、OCT主体の画像診断が有用で、単純型黄斑部出血との鑑別が難しい場合はFAやOCTAの施行を考慮し、MNVの存在確認が重要とされています。
また、近視性MNVが瘢痕化した状態は、OCT上でRPEに囲い込まれた高反射のラインとして観察され、囲い込みが明瞭かどうかの観察が活動性評価に有用で、再燃時には不明瞭化することがあると示されています。
【現場で使えるチェックリスト(OCT中心)】
- 🧩 滲出性変化:網膜下液、嚢胞様変化、出血に伴う高反射。
- 🧱 瘢痕の輪郭:RPEによる囲い込み(encapsulation)の有無と明瞭さ。
- 🔁 比較の徹底:同一条件での過去画像との比較(「以前より不明瞭」こそ再燃の入口)。
黄斑部瘢痕の治療と抗VEGF
滲出型加齢黄斑変性の治療は、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬の硝子体内注射が中心で、視力障害リスクを大幅に低下させ得る、と整理されています。
近視性MNVでは、OCT所見やFAから活動性があると判断された場合に治療が必要で、治療の第一選択は抗VEGF薬療法、導入期1回投与+必要時投与(PRN)を原則とする、という実務的なプロトコルが明記されています。
一方で、黄斑部瘢痕が形成された後は「元の正常網膜に戻ることはない」とされるため、治療目標は視機能の回復というより、残存機能の維持と再燃の早期捕捉に置くのが現実的です。
【治療後フォローの要点】
- 💉 反応が良くても再発は起こり得るため、短期は1〜3か月、長期でも数か月〜1年程度の間隔でOCTと眼底検査を行うのが望ましいとされています。
- 🧭 疑わしいときはOCTA、活動性評価にFAは有用だが侵襲もあるため患者状況を踏まえて判断、という現実的な運用が推奨されています。
黄斑部瘢痕と黄斑部萎縮の予後設計(独自視点)
黄斑部瘢痕の“次に来る問題”として、近視性MNVでは「活動性の低下したMNVの周囲に生じる黄斑部萎縮」が長期的な視力低下の主因になり得る、と要約で強調されています。
つまり、抗VEGFで漏出が止まり瘢痕が安定しても、視機能の長期低下は「再燃」だけでなく「萎縮の進行」という別ルートで進むため、患者説明は“出血が止まった=安心”で終えない方が安全です。
実務上は、①再燃監視(症状+OCT)と、②萎縮の見える化(必要に応じたFAFなど)を分けて運用し、タスク別の視機能支援(読書・PC作業・運転可否)まで含めた予後設計を組むと、医療側も患者側も迷いが減ります。
【患者説明に使える比喩(過度にカジュアルにしない版)】
- 🧵 瘢痕:治癒後に残る「縫い跡」で、形が視界の癖として残る。
- 🕳️ 萎縮:周辺の組織が年単位で薄くなる「地盤沈下」に近く、止血とは別の管理が必要。
【参考リンク:滲出型AMDの診断・治療(OCT/FA、抗VEGF、円盤状瘢痕の説明)】
MSDマニュアル プロフェッショナル版:加齢黄斑変性(AMD)
【参考リンク:近視性MNVの診断・鑑別・治療プロトコル(OCT/FA/OCTA、PRN、瘢痕・萎縮の長期問題)】
【参考リンク:脈絡膜新生血管が瘢痕に至る臨床像(症状、原因疾患、瘢痕形成の不可逆性)】