全脈絡膜萎縮症と診断と検査と治療と予後

全脈絡膜萎縮症と診断と検査

全脈絡膜萎縮症:臨床で押さえる要点
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疾患概念の核

網膜色素上皮(RPE)と脈絡膜(特に脈絡膜毛細血管板)の萎縮が早期から進み、脈絡膜の中・大血管が透見されやすくなるのが要点。

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検査の組み立て

眼底所見だけで断定せず、蛍光眼底造影やOCTなどの複数モダリティで「どの層が落ちているか」を確認する。

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鑑別と説明

網膜色素変性、強度近視など「脈絡膜が薄く見える」疾患との鑑別が実務上重要。遺伝形式の説明は家族支援に直結する。


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全脈絡膜萎縮症の原因と遺伝

全脈絡膜萎縮症は、臨床的には「脈絡膜のジストロフィ(変性)」として把握され、網膜と脈絡膜の萎縮が緩慢に進行するタイプを念頭に置くと、病歴聴取と検査設計が組み立てやすい。

関連疾患として、コロイデレミア(choroideremia)はX染色体連鎖遺伝病で、10~20代男性の夜盲で発症し、周辺視野狭窄から中年以後に視機能障害が進行し得ることが総説で整理されている。

また、CHM遺伝子(REP-1)の変異によりREP-1機能が障害されることが分子遺伝学的背景として説明されており、臨床では「遺伝形式(X連鎖)」「女性保因者の眼底モザイク」をセットで理解しておくと説明の質が上がる。

女性保因者は一般に自覚症状が乏しい一方で、眼底にRPEレベルの異常部位と健常部位がモザイク状に混在する所見が出やすいとされ、家族歴が曖昧なケースの“拾い上げ”に役立つ。

実務のポイントとして、問診では以下を短時間で確認するとよい。

  • 夜盲(思春期~若年での暗所不自由)。
  • 視野異常(輪状暗点→周辺視野障害→求心性狭窄の訴えの変化)。
  • 母方家系に類似症状や「男性だけが悪い」パターンがないか。

全脈絡膜萎縮症の症状と眼底所見

症状は病期で変化し、初期は暗順応低下・夜盲が前面に出て、進行すると視野障害、病変が黄斑に及ぶと視力低下や後天性色覚異常が課題になりやすい。

眼底では、進行に伴って網膜色素上皮と脈絡膜血管の萎縮が目立ち、脈絡膜の大きな血管が透見され、さらに進むと強膜が露出して「白色眼底」様の外観へ移行し得る。

一方で、網膜血管や視神経乳頭の変化は比較的軽度のことがある、と総説で述べられており、「眼底の白さ=すべてが末期変化」と早合点しない視点が重要になる。

加えて、稀ではあるが脈絡膜新生血管を合併して出血や増殖を来すことがある点も触れられており、急な視力低下が出た場合の説明と検査の優先順位付けに直結する。

診療現場での“見落としやすいズレ”として、次がある。

  • 眼底の印象が強い一方、患者の主訴は「暗いところが苦手」「ぶつかる」など曖昧で、問診が浅いと取り逃がす。
  • 視力が比較的長く保持される病期があり、「視力が良い=軽症」と誤認しやすい。

全脈絡膜萎縮症の検査(蛍光眼底造影とOCT)

検査は“単独で決めない”のが基本で、眼底所見に加えて、蛍光眼底造影で背景蛍光の変化や脈絡膜血管の描出を確認し、病期や残存組織の推定につなげる。

総説では、初期にwindow defectを反映した過蛍光が斑状にみられ、進行に伴って背景蛍光の減弱・消失とともに脈絡膜の大きな血管の造影が際立つ、と病期に沿った読み方が整理されている。

さらに進行すると、脈絡膜毛細血管の萎縮が進み、脈絡膜の大きな血管が造影の全期を通じて透見されるようになるという記載があり、造影所見の“時間軸”が診断の助けになる。

臨床ではここにOCTを組み合わせ、「網膜外層・RPE・脈絡膜のどこが主体か」「黄斑の構造がどの程度残っているか」を層別に評価し、視機能予測や経過観察の指標にする。

検査計画の例(外来運用を意識した最小セット)。

  • 眼底写真:後極から周辺まで、左右差も含めて記録。
  • 視野検査:輪状暗点~求心性狭窄の把握(進行の説明材料)。
  • 蛍光眼底造影:背景蛍光と脈絡膜血管の見え方を病期として読む。
  • OCT:黄斑構造と外層の残存、合併症(新生血管など)の拾い上げ。

※参考リンク(疾患の臨床像・遺伝・造影所見・女性保因者の眼底モザイクなど、診断の実務に直結する総説)

https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/103_773.pdf

全脈絡膜萎縮症の鑑別(網膜色素変性と強度近視)

鑑別の軸は「病変の主座(RPE・脈絡膜・網膜外層)」「遺伝形式」「眼底のパターン」「検査の整合性」で、見た目が似る疾患ほど検査の“組み合わせ”が効いてくる。

総説では鑑別対象として、X連鎖網膜色素変性、脳回状網膜脈絡膜萎縮、眼白子、強度近視などが挙げられており、日常診療で迷いやすい並びがそのまま列挙されている。

強度近視は脈絡膜が薄く見えたり脈絡膜血管が透見されやすかったりして印象が似るため、「屈折・眼軸」「近視性変化の分布」「造影・OCTでの層の落ち方」で整合性を取るのが安全である。

また、家族歴が典型的でない場合でも、母親(または母方女性)眼底のモザイク所見はX連鎖疾患の手がかりになり得るため、可能なら家族受診を提案すると鑑別の確度が上がる。

鑑別で使える実務メモ(カルテに残しやすい形)。

  • 「夜盲が先行」+「若年男性」+「母方にヒント」:X連鎖を疑う。
  • 眼底が白い:強度近視でも起こり得るので、眼軸・萎縮の分布・造影で補強する。
  • 急な視力低下:新生血管や出血など合併症の評価を優先する。

全脈絡膜萎縮症の独自視点:説明と支援

この疾患群は「治療の話」だけで完結しにくく、患者の生活上の困りごと(暗所、移動、仕事、運転など)を、病期と検査所見に紐づけて具体化して伝えることが医療者の価値になりやすい。

総説でも、視力が比較的長く保持され得る一方で、中年以後に視野狭窄や中心視力低下が進行し得るという時間軸が示されており、“今の見え方”と“今後の困り方”を分けて説明する必要がある。

また、女性保因者は原則無症状でも眼底モザイク所見を示し得るという点は、患者本人の診断だけでなく、家族の不安(子ども、きょうだい)への対応・遺伝カウンセリング導線づくりに直結する。

眼底が進行して白色眼底様でも、網膜血管や視神経の変化が比較的軽度のことがあるという記載は、「画像の迫力に引っ張られすぎず、機能評価(視野・生活機能)と並走する」姿勢を後押しする。

患者説明に使える短いフレーズ例(現場向け、言い換え可能)。

  • 「視力だけでは病状を表しきれないので、視野と暗所の困り方も一緒に評価します。」
  • 「家族に同じ体質が隠れていることがあるので、必要に応じてご家族の眼底も確認します。」
  • 「急に見え方が変わったときは、出血や新しい血管など合併症の可能性があるので早めに受診してください。」