フリクテン性パンヌスと角膜新生血管の診断治療

フリクテン性パンヌスと角膜新生血管

フリクテン性パンヌス診療の要点
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病態は「細菌性抗原」への過敏反応

主にブドウ球菌などの抗原に対する免疫反応が背景となり、角膜・結膜にフリクテンが出現し、再発例では角膜混濁や血管新生(パンヌス)へ進むことがあります。

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症状+所見は「角膜輪部」が鍵

羞明、流涙、疼痛、異物感などの訴えと、輪部周囲の小結節・浸潤・表在血管侵入をセットで評価し、感染性角膜炎などを除外します。

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再発予防は「眼瞼炎」対策まで

局所治療だけでなく、眼瞼炎(脂漏性眼瞼炎など)を合併しやすい点を踏まえ、眼瞼清拭・衛生指導まで含めると再燃を減らしやすくなります。

フリクテン性パンヌスの原因と遅延型アレルギー

フリクテン性角結膜炎は、角膜および結膜の細菌性抗原に対する過敏反応で、孤立性隆起(フリクテン)を特徴とします。

原因抗原としてはブドウ球菌が主とされ、結核菌やクラミジアなどの関与も述べられています。

免疫学的には「抗原に曝露されてすぐではなく緩やかに生じる遅延型アレルギー(遅延型過敏反応)」として説明され、臨床的には再発性・遷延性になり得る点が重要です。

医療従事者として意識したいのは、「パンヌス」は単独疾患名というより、フリクテンを含む表層角膜炎症が反復・遷延した結果として、角膜に血管が侵入してくる“現象”として出てくることが多い点です。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/ad5ce94db541df05fec9e43c5c9002fce3883bf2

そのため、単に角膜の血管新生を抑える発想だけでなく、「何の抗原刺激が持続しているか(例:眼瞼縁のブドウ球菌負荷、慢性眼瞼炎)」を詰めないと、治っては再燃する経過になりがちです。

フリクテン性パンヌスの症状と角膜輪部所見

病変は角膜輪部・角膜上・眼球結膜上に黄灰色の小結節(小フリクテン)として現れ、数日から2週間続くことがあるとされます。

角膜病変が主体だと、流涙、羞明、霧視、疼痛、異物感が強くなり、患者のQOLを大きく落とします。

一方で結膜上の小結節は潰瘍化しても瘢痕を残さず治癒し得るため、「結膜主体=軽い」と早合点せず、角膜側への波及や既存の角膜所見(表層混濁、血管侵入)を丁寧に拾う必要があります。

パンヌス(表在性の角膜新生血管)は、再発を繰り返す過程で“角膜混濁+血管新生”として問題化し、視力障害に直結します。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/f1c87a11d2869f28cb05b23df5692de7a7049708

医療者側の落とし穴は、「充血が軽い」「訴えが強い割に角膜所見が乏しい」などのズレがある初期に、アレルギー結膜炎やドライアイとして処理してしまい、眼瞼炎や輪部近傍の微細な浸潤・小結節を見逃すことです。

小児に多いとされる点も問診のヒントになり、家族が点眼継続や衛生管理を行えるか(再発予防の実行可能性)まで含めた介入設計が必要になります。

フリクテン性パンヌスの鑑別診断と検査

診断は特徴的な臨床所見によるとされ、基本は細隙灯での角膜・結膜観察が軸になります。

「パンヌス=血管新生」が前面に出ると、コンタクトレンズ関連の低酸素や、他の角膜炎後の血管新生などと混同しやすいため、輪部近傍のフリクテン(小結節)と眼瞼炎の併存をセットで評価するのが実践的です。

また結核の検査が適応になる場合があるとされ、リスクがある患者では原因検索を広げる姿勢が求められます。

メディカルノートでも、必要に応じて血液検査などで結核菌感染の有無を調べること、他疾患との鑑別のために眼分泌物を採取して培養検査を行うことがあると説明されています。

ここでの“意外な盲点”は、フリクテン性角結膜炎が「感染そのもの」ではなく「抗原に対する免疫反応」として起きる一方で、角膜潰瘍を足場に二次感染が起こり得る点です。

つまり、所見が増悪している局面では「免疫反応の制御(ステロイド)」と「感染の見逃し回避(抗菌薬の併用や培養)」を同時に考え、片方だけに寄り過ぎない判断が必要です。

フリクテン性パンヌスの治療薬と治療戦略

非結核性症例の治療は、局所コルチコステロイドと抗菌薬の併用投与とされ、治療により数時間で疼痛が軽減し、瘢痕化と視力低下を回避できると記載されています。

メディカルノートでも、治療にステロイド含有点眼が用いられ、角膜潰瘍から細菌感染が疑われる場合は抗菌薬入り点眼などを使用することがあると説明されています。

この「ステロイド+抗菌」のセット感は、フリクテン性パンヌス(=炎症が持続して血管侵入が進んでいる状態)を扱うときほど重要で、炎症を抑えつつ感染リスクの芽も摘む、という整理が現場でブレにくい戦略になります。

一方で、再発を繰り返す例では「点眼で一旦落ち着いた」ことがゴールではなく、なぜ抗原刺激が続くのかを潰す必要があります。

特に、患者の多くは眼瞼炎も有するとされるため、眼表面の炎症だけで完結させず、眼瞼縁の評価(痂皮、睫毛根部、マイボーム腺機能など)をルーチン化すると再燃を拾いやすくなります。

治療経過中に角膜混濁や血管新生が進行する場合は、視機能への影響(羞明・霧視の残存、矯正視力低下)を記録し、紹介や治療強化のタイミングを逃さない運用が安全です。

フリクテン性パンヌスと眼瞼炎:再発予防の独自視点

MSDマニュアルでは、脂漏性眼瞼炎を伴う場合に眼瞼のこすり洗い(清拭)が再発予防に役立つことがあると述べられています。

メディカルノートでも、脂漏性眼瞼炎があると発症しやすいため瞼の清潔を保つことが症状改善や再発予防につながる、と明記されています。

ここを「指導の一文」で終わらせず、医療者側の運用に落とすのが独自視点で、具体的には“再発予防の処方箋”を外来で標準化すると継続率が上がります。

例として、次のように患者説明をプロトコル化すると、忙しい外来でも品質が揃います(内容は施設方針に合わせて調整)。

✅再発予防の説明テンプレ(例)

・🧼「眼瞼炎があると再発しやすいタイプです」:病態の前提を共有する。

・🧴「清拭は治療の一部」:点眼と同列のアドヒアランス目標に置く。

・📅「2週間で治っても油断しない」:多くは2週間程度で回復する一方、再発で角膜混濁や血管新生が問題化し得る点を伝える。

・📝「再発サインの定義」:羞明、流涙、疼痛、異物感が戻ったら早めに受診するよう合意形成する。

さらに“意外と効く現場技”として、再発例では「前回と同じ痛み」か「今回はまぶしさが強い」など、患者の言葉をそのままカルテの比較軸にするだけで、角膜側への波及を早期に拾えることがあります。

パンヌスは視機能に直結するため、眼表面炎症の反復を「いつもの再発」として扱わず、眼瞼炎管理まで含めて“再発を起こさない設計”に切り替えるのが、結果的に角膜混濁・血管新生を減らす近道になります。

角膜・結膜の過敏反応の概要と治療(ステロイド+抗菌、眼瞼清拭の考え方)

MSDマニュアル プロフェッショナル版:フリクテン性角結膜炎

遅延型アレルギーとしての位置づけ、症状・検査・治療、再発で角膜混濁や新生血管が起こり得る点

メディカルノート:フリクテン性角結膜炎