化膿性角膜炎とコンタクトレンズと治療

化膿性角膜炎と治療

化膿性角膜炎:初期対応の要点
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誤りやすい入口

「単なる結膜炎」「ドライアイ」と自己判断されやすく、ステロイド点眼が先行すると所見が修飾されます。

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検査の優先順位

角膜擦過の塗抹検鏡+培養が基本で、原因菌同定と薬剤感受性が治療最適化に直結します。

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治療の時間軸

重症例は短時間で角膜融解・穿孔へ進むため、初期は頻回点眼を前提に設計します。

化膿性角膜炎の原因と症状

 

化膿性角膜炎は、角膜内に病原体が侵入・増殖し、好中球主体の炎症細胞浸潤が起こって角膜に化膿性病変(浸潤・膿瘍・潰瘍など)を来す状態として理解すると、臨床像を整理しやすいです。

原因病原体は細菌が中心ですが、真菌・ウイルス・アカントアメーバなども含む「感染性角膜炎」の一部として鑑別する必要があり、原因微生物は発症誘因によって変わります。

本邦の感染性角膜炎は「細菌が最も多く、次いでウイルス、真菌、アカントアメーバ」とされ、問診で誘因を取ること自体が鑑別の一段階になります。

症状は、軽症では異物感、重症では眼痛が前面に出やすく、充血、視力障害、流涙眼脂が併発しやすい点を押さえます。

経過の速さにもヒントがあり、「痛みが比較的軽く緩徐なら真菌性を疑う」「進行が早ければ緑膿菌やレンサ球菌の可能性が高い」という整理は救急対応で役立ちます。

加えて、ステロイド点眼中は充血が目立たないことがあり、見た目の軽さだけで除外しない姿勢が重要です。

参考:感染性角膜炎の定義、発症誘因、原因微生物、診断・治療(塗抹・培養、初期治療薬の考え方)

日本眼感染症学会「感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)」PDF

化膿性角膜炎の診断と培養

化膿性角膜炎(臨床的には細菌性角膜炎を強く疑う状況を含む)では、確定診断の基本として角膜病巣を擦過し、塗抹検鏡と培養検査を行うことが重要です。

ガイドラインのクリニカルクエスチョン(CQ)でも、細菌性角膜炎の診断には「塗抹検鏡と培養検査を強く推奨する」と整理されています。

塗抹は迅速性に強みがあり、Gram染色でグラム陽性/陰性、球菌/桿菌の推定ができ、初期治療薬の選択の根拠を作れます。

培養は「原因微生物の同定」だけでなく「薬剤感受性試験」に進める点が強みで、結果が治療最適化と耐性菌対応に直結します。

ただし外眼部には常在菌があるため、培養で出た菌を機械的に起炎菌と断定せず、塗抹所見との一致、臨床所見との整合性、感受性と治療反応を総合判断する、という姿勢が安全です。

PCRは角膜ヘルペスなどで有用性が述べられていますが、細菌性角膜炎の最初の柱はあくまで塗抹+培養と考えるのが実務的です。

現場で見落としやすいポイントとして、角膜病変の深さの客観評価に前眼部OCTが有用になり得る一方、「感染性角膜炎に対する本検査の保険適用はない」と明記されており、運用面(施設・会計)も含めて導入目的を整理しておくと混乱が減ります。

また、検体採取は抗菌薬開始前が理想ですが、急速進行が疑われる場合は“検体→即治療”の同日実装が現実的で、結果待ちで治療開始を遅らせない判断が必要になります。

化膿性角膜炎の治療と抗菌薬

細菌性角膜炎の治療方針は「起炎菌に有効な抗菌薬を選択して使用することが必須」であり、そのために起炎菌同定を急ぐ、という構造で理解できます。

ただし現実には同定できないこともあるため、患者背景・発症誘因・角膜所見から起炎菌を推測して初期治療を開始し、反応を見て調整する流れが示されています。

初期治療薬の考え方として、軽症は1剤、重症は作用機序の異なる2剤(フルオロキノロン系・セフェム系・アミノグリコシド系から組み合わせ)という設計が提示されています。

たとえば、グラム陰性桿菌(緑膿菌など)を疑う場合は「フルオロキノロン系+アミノグリコシド系」、グラム陽性球菌(黄色ブドウ球菌・肺炎球菌など)を疑う場合は「フルオロキノロン系+セフェム系」という組み立てが例示されています。

点眼回数は重症度とPAE(post-antibiotic effect)を考慮し、重症例や流涙が強い場合は30分~1時間ごとの頻回点眼が必要になり得る、とされています。

この「回数設計」は医師だけでなく、看護・薬剤・家族指導の難易度に直結するため、入院管理を含めた現実的プランに落とし込むことが視力予後に影響します。

副作用面では、頻回点眼はアレルギー性皮膚炎/眼瞼結膜炎や、薬剤毒性による角結膜上皮障害を増やし得るため、改善しないときに「薬が効かない」のか「薬剤毒性が上乗せ」なのかを切り分ける視点が重要です。

さらに、耐性菌は増加傾向で、特にフルオロキノロン系に対する感受性低下が問題になっているため、培養・感受性に基づく最適化がますます重要になります。

なお、細菌性角膜炎に対する副腎皮質ステロイド点眼は「併用しないことを提案する(弱く推奨)」とガイドラインサマリーに整理されており、瘢痕抑制目的での安易な併用は避けたいところです。

化膿性角膜炎とコンタクトレンズ

本邦では感染性角膜炎の発症誘因としてコンタクトレンズ(CL)装用が最多であり、20代ピークの一部はCL関連感染が大部分を占める、とされています。

重症CL関連角膜炎は、日常的にレンズケアを必要とするSCL(2週間頻回交換ソフトCLや従来型SCLなど)で多く、ケア不良によるレンズ汚染が重要なリスク因子と指摘されています。

CL関連は他の誘因より両眼性の頻度が高い点も注意点で、「片眼の痛み」を主訴に来ても反対眼のスクリーニングを省略しない運用が安全です。

CL関連で重症化が問題になる原因菌として、緑膿菌やアカントアメーバが挙げられており、初診時から“重症ルート”を想定した問診と検査を組み込む価値があります。

緑膿菌角膜炎は、輪状膿瘍を伴う潰瘍、周囲角膜のスリガラス状混濁、急速進行と穿孔リスクが特徴として説明され、SCL関連が多いとされています。

一方、アカントアメーバ角膜炎は緩徐進行で、初期は放射状角膜神経炎(radial keratoneuritis)や偽樹枝状病変など、角膜ヘルペスと紛らわしい所見を呈しうるため、CL歴と痛みの訴え方を合わせて疑う姿勢が重要です。

実務の“意外な落とし穴”として、CL関連で見過ごされやすいのが「患者がCL装用を申告しない/当日つけていない」ケースです。

問診では「種類」「使用期間」「使用方法」「誤使用の有無」を具体的に聞き、保存ケースやケア剤の運用(継ぎ足し、流水洗浄、省略、使用期限超過)まで踏み込むと、起炎菌推定と再発予防の両方に効きます。

化膿性角膜炎の独自視点:治療抵抗性と院内運用

検索上位の一般的解説では「抗菌薬点眼をする」で終わりがちですが、医療現場で治療抵抗性を生む要因は“薬剤選択”以外に潜みます。

ガイドラインでも、治療効果が乏しいときの観点として「治療方針の見直し」「混合感染」「患者のアドヒアランス」が明確に挙げられており、ここを院内運用に落とすことが結果を左右します。

特に頻回点眼が必要なフェーズでは、外来だけで完遂できないことがあり、点眼設計を「理想論」ではなく「実行可能性(誰が、いつ、何回)」で再設計する必要があります。

混合感染は、外傷例で細菌+真菌の混合があり得ること、また細菌性角膜炎の治療経過中に角膜ヘルペスを併発することがある、とされており、改善途中の急な増悪を“耐性”と決めつけない視点が大切です。

また、MRSA/MRSEなど耐性菌が関与する場合、医療用医薬品で軽快しないときに自家調整剤を検討する流れが書かれている一方、自家調整剤は毒性・調整・保存管理の問題があり「安易な使用を避ける」と注意喚起されています。

つまり、耐性疑いの重症例ほど「院内で自家調整が可能か」「倫理・説明・薬剤部フローが整っているか」が治療の現実解になります。

最後に再発予防という観点では、CL関連の患者には「治癒=終了」ではなく、再発を防ぐための行動変容(ケア手順の是正、保存ケース管理、誤使用の中止、症状が出たら即中止・受診)を、診療の一部として組み込むことが重要です。

角膜瘢痕や不正乱視などの後遺症で視機能が落ち得る点もガイドラインで触れられており、治療後の見え方(乱視・羞明)まで見通した説明が、医療安全と満足度の両面で効いてきます。


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