粘液膿性結膜炎と鑑別と治療
粘液膿性結膜炎の症状と眼脂と充血
粘液膿性結膜炎は、臨床的には「粘液膿性の眼脂(ねばつく、黄緑〜黄色調)」と結膜充血、異物感が前面に出るパターンとして捉えると整理しやすいです。
細菌性結膜炎では眼脂が粘液膿性になりやすいことが示されており、眼瞼結膜の充血・眼脂・異物感が要点として挙げられています。
一方で「充血」だけで軽く見ない方がよく、結膜充血と毛様充血は深さ・分布が異なるため、輪部優位の毛様充血があれば角膜炎やぶどう膜炎なども念頭に置いて追加評価が必要です。
現場で使いやすい観察の順番を、症状→所見→リスクで固定しておくとブレが減ります。
- 眼脂:黄〜黄緑で粘調(粘液膿性)か、水様か、線維素っぽいか。
- 充血:表層中心(結膜充血)か、輪部中心(毛様充血)か。
- 片眼/両眼、発症の速さ、周囲の流行、同居家族の症状。
- 眼痛・羞明・視力低下:あれば「結膜炎だけ」で終わらせない。
粘液膿性結膜炎の鑑別と濾胞とリンパ節
鑑別の核は、(1) 痒み・乳頭増殖の有無でアレルギー性かどうかをまず分け、(2) 眼脂の性状と濾胞の有無、耳前/顎下リンパ節腫脹で感染性の内訳を詰める、という流れです。
膿性眼脂で濾胞形成がなくリンパ節腫脹を欠く場合は細菌性結膜炎を最も強く疑う、という整理は、外来の初期判断にそのまま使えます。
濾胞があり膿性眼脂を伴う場合はクラミジア結膜炎が疑わしい、という指摘も同ガイドライン内に明記されており、問診(年齢層、片眼性、慢性経過など)と合わせて検討します。
「粘液膿性だから細菌性」と即断してよい場面は多い一方、紛らわしい落とし穴もあります。
- 春季カタル等では膿性様に見えることがあるが、巨大乳頭が手がかりになるとされています。
参考)感染性結膜炎 – 20. 眼の病気 – MSDマニュアル家庭…
- アデノウイルス抗原検査は感度が70〜80%程度で、陰性でも流行性角結膜炎を完全否定できないため、周囲の流行や所見を外さないことが重要です。
- 片眼で始まり数日で対眼に波及する経過は流行性角結膜炎でも起こり得るため、「片眼=細菌性」と短絡しない方が安全です。
参考リンク(鑑別アルゴリズム:眼脂・濾胞・リンパ節での整理が詳しい)
粘液膿性結膜炎の治療と抗菌点眼と培養
細菌性結膜炎では、原因菌の検索結果に基づいた抗菌点眼薬により速やかに改善する、と病院解説でも述べられています。
また、必要に応じて眼脂を培養し菌の同定・薬剤感受性試験を行うことがある、とされており、反復例・重症例・免疫不全背景・施設内アウトブレイクが疑わしい状況では検体提出を検討する根拠になります。
現場の意思決定としては「通常経過(数日で改善傾向)」か「想定外(悪化/遷延/角膜所見)」かで分岐させ、後者は原因菌同定と眼科連携を早めるのが合理的です。
実務に落とし込むなら、次の観点が安全側です。
- 抗菌点眼開始後も眼脂が増える、眼痛が強い、羞明が出る、視力が下がる:結膜炎以外(角膜炎など)も想定して早期再診。
- 高齢者・小児・免疫低下:感染が拡大しやすく、セルフケア指導(手洗い、タオル共用回避)を強める。
- 施設(病棟/外来)では、点眼ボトルの患者間共有を避け、接触面の清拭と手指衛生を徹底する。
参考リンク(細菌性結膜炎と流行性角結膜炎の違い、検査の限界、治療と感染対策がまとまっている)
関西医科大学附属病院:細菌性結膜炎・流行性角結膜炎(はやり目)
粘液膿性結膜炎とコンタクトレンズと緑膿菌
コンタクトレンズ装用者では、結膜炎に見えても角膜感染症(細菌性角膜炎)が隠れるリスクが上がるため、粘液膿性の眼脂だけで完結させず「角膜由来の痛み・羞明・視力変化」を必ず拾う設計が有用です。
緑膿菌はコンタクトレンズ装用者の細菌性角膜炎の重要な原因菌とされ、汚染レンズや不適切なケアが感染につながり得る点が強調されています。
特にレンズケースを水回りに放置するとケース内に緑膿菌が混入しやすく、汚染されたレンズ装用が感染の引き金になり得る、という具体例は指導に使いやすい情報です。
医療従事者向けに、患者指導フレーズへ落とし込むとこうなります。
- 「目やにが多い日はレンズは中止、まず眼の状態を優先」
- 「1dayは“1日”で必ず廃棄、延長使用は感染リスク」
参考)https://www.acuvue.com/ja-jp/memamori/eye-health/292/
- 「レンズケースは水回り放置を避け、ケア用品は都度交換」
粘液膿性結膜炎の独自視点:眼脂の色の言語化と問診
粘液膿性という医学用語は患者には伝わりにくく、問診で「黄色」「黄緑」「ねばねば」「糸を引く」「水っぽい」をセットで聞くと、眼脂の性状が再現性高く取れます。
鑑別ガイドラインでも眼脂の性状が感染性/アレルギー性の分岐点として扱われており、言語化の工夫は診断精度の底上げに直結します。
さらに、アデノウイルス抗原検査は陰性でも完全否定できないため、「周囲で流行しているか」「家族内でうつっているか」を同時に確認する問診テンプレを用意しておくと、検査結果への過信を防げます。
院内・施設内での“運用”として意外に効くのは、カルテ記載の定型化です。
こうしたテンプレは「診断名」よりも「所見の再現性」を上げるための工夫で、担当者が変わっても説明と判断がつながりやすくなります。